フラワ-・ベイビ- (評論社の児童図書館・文学の部屋)

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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784566013582

作品紹介・あらすじ

フラワー・ベイビー(小麦粉ぶくろの赤ちゃん)を育てるだって!三週間めんどうをみて、毎日、育児日記をつける…。こんな、とんでもない「理科」のプロジェクトを押しつけられた落ちこぼれの「四‐C」クラスは、ブーイングの嵐。けれど、サイモンはちがった。サイモンは、フラワー・ベイビーの世話をしながら、父親のことを考える。自分が生まれてたったの六週間で家を出ていってしまった父親のことを。カーネギー賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 学校の課題で、小麦粉を詰めた袋を赤ちゃんに見立て、世話をすることになった少年たち。主人公には父親がいない。父親の責任の重さに耐えかね、妻子を捨てて失踪してしまったからだ。小麦粉袋の赤ちゃん(フラワー・ベイビー)を育てながら、主人公は父親について考える。
    結末は意外で、賛否が分かれるかもしれない。でも、この作品のすばらしいところは、父親を悪者にしすぎることなく、主人公の解放を描いているところだ。人生は厳しいから、失敗してしまう人もいる。自分もいつか失敗するかもしれない。でも、完璧でなくても、人生はすばらしいし、あなたには生きる価値がある。20年以上前に子ども向けにこの本を書いたアン・ファインはすごい。

  • 『フラワー・ベイビー』というタイトルを見て、花のように愛らしい赤ちゃんの話かと思ったら、違った。
    フラワーはフラワーでも、小麦粉の方だった。
    3キロの小麦粉の袋を赤ちゃんに見立てて、3週間面倒を見なければならない。

    1.フラワー・ベイビーはいつも清潔にしておき、これを濡らしてはならない
    2.フラワーベイビーの体重を週二回測定すること
    3.フラワー・ベイビーは、昼夜に関わらず、いつ、いかなる時でも一人にしておいてはいけない
    4.毎日育児日記をつける
    5.フラワー・ベイビーがよく世話をされているか(周囲の人たちに)監視されることになる

    三週間世話されたフラワー・ベイビーと育児日記は、主人公・サイモンのクラス(落ちこぼれクラス)の、サイエンス・フェアの出し物になるのだ。
    他のクラスは化学や物理の実験をして、その結果を華々しく披露するけれど、集中力も忍耐力もなく、読み書きもおぼつかないサイモンのクラスは、誰でもできそうな簡単な出し物が用意されていた。
    それがフラワー・ベイビー。

    赤ちゃんを世話するように小麦粉の袋を世話しろって言われても、「なにそれ?」「意味わかんない」とばかり、文句タラタラなクラスメート。
    けれどやってみるとこれが大変に面倒だ。
    ミルクはいらない、おむつを替えなくてもいい、夜泣きもしない。
    そんなフラワー・ベイビーの面倒を見ることの何がたいへんなのか、と読みながら育児経験者は思う。

    しかし、自分のことすら満足にできない10歳の子どもたちが、自分の好きなことしかしたくない子どもたちが、自分じゃないものの面倒を見るというのは、精神的に結構重荷になるのだね。
    3キロの袋を抱えて毎日通学するのも大変。
    ほったらかしにしているのがばれても大変。
    普通にしているだけで袋は汚れる、破れる(!)、ガムやキャンデーがくっつく、自由が阻害される!

    それを乗り越えて、親が自分たちを育ててくれた苦労を思い感謝する…なんて話には全然ならなくて、金をもらってベビーシッターをする子が出てくるかと思えば、預けっぱなしの無責任な子どももいる。
    無事最終日を迎えた暁には大喜びで自由を謳歌し、子どもなんて金輪際ほしくないと思う子どもたち。
    おやおやおや。
    ま、10歳の男の子なんてそんなもんか。

    そんな中、サイモンは考え続けた。
    生後6週間の自分と母を捨てて家を出ていった父親のことを。
    子どもを育てるってことは、どれだけ自分の時間を犠牲にしなければならないのか。
    気持ち晴れ晴れと出ていったかもしれない父。
    それは要領のいい生き方なのかもしれない。

    けれどサイモンは理解した。
    今は子どもなんて育てたいと思わない。
    でもいつか、自分に子どもができた時は、器用に子育てはできないかもしれないけれど、気長に子どもを育てることはできるんじゃないか。
    父親にはできなかったそれを、自分はできると思う。
    サイモンはようやく父親に捨てられた自分を憐れむことをやめることができた。

    甘々な話ではないです。
    成績順のクラス決めは、担任の先生の力関係に関わっていて、サイモンのクラスの先生自体があまり頼りにならない。
    親も絶対じゃない。
    子どもも先行きが案じられる。
    でもしたたかに生きていくんであろう子どもたちの姿が冷徹なまでにシリアスに描かれていて、この辺が実にイギリスなんだろうなあ。

  • きょう読み始めてきょう読了。こちらはイギリスのYA。
    小麦粉袋の赤ちゃん、という発想がおもしろい。話運びにちょっとやらせ感を感じなくもないけれど、カートライト先生の適当感で相殺された印象。でも、そんなにすんなりフラワー・ベイビーに執着するようになるかなぁ、という疑問はやっぱり残るかな。
    つまりどういうオチだったのかしら、と少々消化不良。いつか再読したい感じ。

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  • フラワーは花(Flower)じゃなくて小麦粉(Flour)。
    やんちゃな男の子たちが「赤ちゃん」=小麦粉の袋の面倒をみるように言いつけられる。
    馬鹿げたことをやらされているんだけど。だけど変化が面白い。

  • 男子校に通う悪ガキたちが理科の課題で小麦粉袋の赤ちゃんを育てることになります。毎日育児日誌をつけて一人にしちゃダメ、汚したり濡らしたりてもダメ、体重が変化してもダメという条件付き。ベビーシッターサービスを始めるツワモノも出てきて大騒ぎです。主人公のサイモンはやがて本当にこのフラワーベイビーを可愛がるようになります。父性が芽生える子、キレる子、お節介おばさんの存在、家を出て行った父親の気持ちに気付く子、反応はそれぞれですがみんな何かを学んでいきます。優しい先生の存在もステキです。子供向けの本ですが大人も読んで欲しい本です。

  • おもしろいけど、思ったより淡々としていた。
    うーん、うまくいえないな。
    すこし、肩透かしな感じ。期待が大きすぎた?

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