韓非子の知恵: 現代に活かす帝王学 (PHP文庫 か 32-1)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569574387

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  • 55編からなる韓非子の入門書

    古代の理想を求めることなく、現在の現実を直視する。
    儒家の説く例ではなく、人間を外面から規制する”法”と、そのための実践的な方法論である”術”を重視する。

    韓非の師匠は、荀子。その思想の底流にあるものは、人間は弱いものであり、利益や名誉のために、保身のために、平気で悪を犯すと考えた。つまり、性悪説を出発点としている。

    気になった点は、以下です。

    ・君子の逆鱗にふれないで、核心をつく説得こそが、君子を説く方法の極みである。
    ・昔はよかった式の尚古思想ではなく、物事を歴史的、実証的にとらえなければならないとの立場を貫く。
    ・韓非は、君主にむかって、人を信じてはいけないと説く。后妃も、太子すらも信じてはいけないと説く。
    ・他人はいっさい信じられないこと、そして、信じることのできるものは、冷徹な論理を貫く”法”であること。法による支配の原理を考察し、過去の法による支配を説いた人の考えを集大成した。
    ・始皇帝は、韓非の考えに共鳴し、”人間不信の哲学:法の支配”を実践した。

    ・荀子の弟子であった、李斯と韓非はライバルであった。始皇帝に韓非を知らしめたのも、李斯であったが、結果として李斯に、自死に追い込まれることとなる。

    ・法学思想の流れの最初に位置するのは、管仲:管子である。管子とは、斉の桓公を助け出し、最初の覇者とならしめた賢者である、孔子の弟子子夏、荀子、韓非と続いていく。
    ・孟子は性善説を唱え、荀子は性悪説をとなえた。

    ・韓非は、法と術の他に、勢を重視した。

    ・人を説得するためのコツとして、相手の誇りとする点を飾りたて、恥じている部分は、おおいかくしてやることを知るにある。

    ・君主に説きつけることのむずかしさは、相手の心理を読んで話を進めるという、技術的なむずかしさがある一方、死を賭してかからなければならぬほどの厳しさを伴うものであることもいう。

    ・賢明な君主が、その臣下を制御するための手段は、刑と徳である。

    ・臣下を統率するための7術
     ①参観の術:多くの人から見聴きし、真実を観察すること
     ②必罰の術:刑罰を正しく実行すること
     ③賞誉の術:基準にしたがい正しく信賞を行うこと
     ④一聴の術:君子みずから臣下の言行と一致・不一致を確かめること
     ⑤詭使の術:臣下に本心をあらわにみせないこと
     ⑥狭智の術:知らぬふりをして尋ねれば、知らぬこと事までわかってくること
     ⑦倒言の術:思っていることの反対のことをいったり、したりすることで、疑っている人物をためすこと

    ・韓非は過去にはこだわらない。時代が変われば物事はかわってくる。物事が変われば、それに対応する手段も変わる。

    ・韓非は、国を治め強くする手段を、外交に求めることはできないという。ひたすら、国内の整備の力を注ぎ、国力の強化につとめよと説く。合従連衡よりも内政を優先すべきである。

    ・人を信じれば制せらる。君主は、妻や子を重用すれば奸臣が彼らを利用するのでよくないといっている。ようは、自分以外に信じるものはないといっている。

    ・ものに兆しがあれば、ぐずぐずとしていてはいけない

    ・法家思想を重要視した、始皇帝は滅び、儒家が国教としてもてはやされたのは、皮肉だ。歴代王朝は、法家の一部を取り入れて律令の一部としている。これを、外儒内法 という。いわゆる、外向きには、儒教を、内なる考えは、韓非子でとの考えで、歴代の王朝の基本となっている。

    ・日本でも、聖徳太子の17条憲法にも、法家の考えが取り入れられている。江戸中期に荻生徂徠が韓非子を研究している。

    ・現代において韓非子は、法実証主義、人間性の根本に触れる考察、組織経営の理論や実践を見直し、現実を過去に反映し、何ものかを学びとろうとする人々の模索の結果である。

    目次

    まえがき
    第1章 よみがえる韓非思想
    第2章 韓非の生涯とその時代
    第3章 花ひらく”諸子百家”の思想
    第4章 「韓非子」を読む
    第5章 読み継がれる「韓非子」
    あとがき

    ISBN:9784569574387
    出版社:PHP研究所
    判型:文庫
    ページ数:272ページ
    定価:552円(本体)
    発行年月日:2000年08月
    発売日:2000年08月01日
    国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QDHC
    国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:QDX

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著者プロフィール

1929年、東京市生まれ。京都大学文学部史学科東洋史学専攻卒業、同大学大学院(旧制)退学。聖心女子大学助教授、京都女子大学教授、同大学学長(1993~97年)を経て、1998年、定年退職、京都女子大学名誉教授。博士(文学)。新村出記念財団理事、日仏東洋学会理事、三国志学会会長などを勤める。2017年2月、逝去。著書に、『後漢政治史研究』(同朋舎出版)、『諸葛孔明』(人物往来社。のち『諸葛孔明――三国時代を演出した天才軍師――』PHP文庫)、『三国志の世界――孔明と仲達――』(清水書院)、『史記 人間学を読む』(学陽書房。のち『「史記」の人物列伝』人物文庫)、『韓非子の知恵』(講談社現代新書。のち『「韓非子」の知恵――現代に活かす帝王学――』PHP文庫)、『三国時代の戦乱』(新人物往来社)、『孔子――「論語」の人間学――』(学陽書房)など多数あり。

「2019年 『「三国志」の知恵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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