無条件降伏は戦争をどう変えたか

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569640419

作品紹介・あらすじ

第二次世界大戦最中の一九四三年、カサブランカ会談において、アメリカ大統領ルーズベルトは日独伊に「無条件降伏」を突きつけた。いかなる妥協も許さないその要求は、連合国首脳をも驚かせ、枢軸国側は必死の抵抗を試みた。結果として戦争は長期化し、双方に多大な犠牲をもたらした。なぜアメリカは無条件降伏に固執したのか?前代未聞の過酷な要求は、どのような契機で生まれ、従来の戦争観をいかに変えたのか?戦争に対するアメリカの潜在意識をあらためて問いなおす意欲作。

感想・レビュー・書評

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  • 「軍人は一つ前の戦争に備える」と言うが、「平和運動も一つ前の戦争に備える」と言えよう。今の日本で平和教育の題材といえばもっぱら太平洋戦争だ。

    しかし、第二次世界大戦-太平洋戦争はかなり特殊な戦争だったことは忘れてはいけない。この戦争を端的に表す言葉は「総力戦」と「無条件降伏」。

    特に、過去に例がなかった枢軸側への無条件降伏要求は、あの戦争を過度に悲惨なものにした。本書はそこに焦点を当てて書かれている。

    平和運動が目指すべきはこれから先の戦争の防止である。この場合、「総力戦」も「無条件降伏」も繰り返される可能性はかなり低いのではないか。

    アメリカや欧州各国の先進国の軍事攻撃は、いまやハイテクの限りを尽くして、自軍だけでなく、敵国の非戦闘員の死者もできるだけ出さないよう努力している。このとき、かつての戦略爆撃のようなイメージで市民の犠牲がどうこうと訴えて説得力はいかほどのものか。

    先の戦争から学ばなければいけないことは多いが、同時に、今後の戦争を抑止するためには、過去の戦争の何が特殊かを知るとともに、現代の戦争の特徴も正しく把握する必要があるだろう。

    第二次世界大戦の特殊性を知るのに、この本は読みやすくてよく適していると思う。

  • 無条件降伏の背景に、ローズベルトの人種差別思想があるのか。世の中まだまだ知らないことが多いと痛感した。

  • 第二次大戦の帰趨未だ明らかでなかった1943年1月のカサブランカ会談で,Franklin Delano Roosevelt が突然に持ち出して来た「無条件降伏」という前代未聞の概念が,その後の戦況,社会情勢をどう変えたか…というテーマの,まぁ序説.
    なぜ序説かというと,表題にあるような「どう変えたか」について著者は必ずしも明確な見解を提示しているわけではないからで,終章の「もし無条件降伏要求がなかったら」の「もし」にも答は明らかにされていない.「無条件降伏という法外に苛烈な要求のため,枢軸国側は停戦交渉外交の道を閉ざされ,必要以上に過酷な結果を招いた」というような仮説が立てられているが,それも事実関係の検証は不充分のまま終わる.一方ではヒトラー暗殺計画などの直接関連性の薄い事柄の説明に割に大きくスペースを割いていたりもして記述配分の均衡を失しているのは否めない.
    …というように各所にツメの甘さはあるものの,タイトル通り「無条件降伏は戦争をどう変えたか」というテーマを示しただけでも充分に卓抜な着眼点の手柄だと思うので,全く読んで損した気はしなかった.

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著者プロフィール

1955年、東京都に生まれる。1986年、上智大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。現在、名古屋市立大学大学院人間文化研究科教授、博士(文学)。著書、『日本古代社会と仏教』(吉川弘文館、1995年)、『古代仏教をよみなおす』(吉川弘文館、2006年)、『仏教伝来の研究』(吉川弘文館、2012年)、『『日本書紀』の呪縛』(集英社新書、2016年)、『日本宗教史を問い直す』(共編、吉川弘文館、2020年)他

「2021年 『神仏融合の東アジア史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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