今こそ知っておきたい「災害の日本史」 白鳳地震から東日本大震災まで (PHP文庫)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (636ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569760285

作品紹介・あらすじ

日本は古代からしばしば大災害に見舞われ、たくましく復興してきた。歴史を追って「災害と時代変化」の相関関係を浮き彫りにする好著。

感想・レビュー・書評

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  • 昔は関東大震災。今は3.11。
    それにしても記録で残っているだけでも相当な被害。歴史は主に政治史だがメインで語られないだけで災害が及ぼす影響は甚大である。

  • 天武天皇の御代・西暦684年の白鳳地震から東日本大震災まで、日本を襲った自然災害とそれに対する社会の反応をまとめた本。
    それにしても、「日本は地震国」だと重々知っている私たちが思う以上に、この国には本当に地震が多い。特に昭和19年12月と翌20年1月の2度、当時の軍需産業の中心地だった名古屋が壊滅的な被害を受けたのだとか、敗戦間もない21年12月、追い打ちをかけるように大地震が襲ったのだとかいうことは、当時は報道管制が敷かれていたというが、「自由」の世になって久しい今も、どれだけの人が知っているだろうか。
    私たちは、現在進行形で煮えたぎる地獄の釜の上で暮らしているのだ。日頃目をそむけている、その事実をつきつけられた。

    だからといって他に行く場所があるでなし、「ならば」どうすればよいのか? という点に、願わくはもう少し紙幅を割いてほしかった。一般人に対する啓蒙は、明日への教訓なしには成り立ちえないものなのだから。

    最後に蛇足。歴史小説を読まない私は清水義範氏のパスティーシュでしか知らないのだが、このように、
    「文章を途中で区切って一部をカッコ書き」
    する手法を「司馬遼太郎的」と呼ぶのが正しいのなら、著者の司馬フォロワーぶりがやや鼻についた。

    文章や内容にはもの言いたいところもあるが、超一級の素材を買って、1つオマケしての星4つ。
    本書に淡々と列記された事実は、冗談抜きに全国民必修のものである。

    2014/1/13〜1/18読了

  • 読み応えがあり、面白かった。災害そのものより、その後の買い占めによる飢餓とか、物価の高騰、水不足で災害が大きくなってしまう。いざとなったら、助け合うのではなくて、人間の醜さが出るんだなあと思って印象に残った。あと、人間は忘れる生き物。どんな災害にあっても、忘れてしまうものなんだなあ。心の隙とか、まさか自分にはふりかからない、といった根拠のない自信が、命を落とすきっかけにになってしまう。思い込みは怖い。あと、情報がいかに大事か、も分かった。情報があると、落ち着いたり、安心できたり、冷静になれたりするものなんだなあ。

  • 最近、歴史の本を読むことが多いのですが、読んでいて気付くのは、
    災害に関する記述が頻繁に出てくることです。地震、噴火、大風
    (台風)はもとより、つむじ風(竜巻)なんて言葉もよく出てきま
    す。どうやら竜巻も、今に始まったことではないようです。

    災害は、その時々の社会に大きな影響を与え、時には、歴史の歯車
    を大きく動かしてきました。日本の歴史を語る上で、災害は無視で
    きない存在です。

    なのに、私達は、災害の歴史にあまりに無知です。これだけの地震
    大国、火山大国なのに、学校で「災害史」を教えられることはあり
    ません。東北の震災以後、過去の災害に光が当るようになりました
    が、いまだ私達は、災害に対して、あまりにも未熟な知識しか持っ
    ていません。

    では、これまで、どこでどんな災害が起きてきたのでしょう。そし
    て、災害が起きた頃の社会はどんな様子で、災害は当時の社会や人
    々の暮しにどんな影響を与えてきたのでしょうか。

    そういうことを知りたくなって手に取ったのが本書です。「白鳳地
    震から東日本大震災まで」と副題にあるとおり、遡れる限りの過去
    から現代までの災害の歴史を一冊にまとめたものです。大規模な災
    害が時系列で並べられ、それぞれが【災害の状況】【時代の概況】
    【災害の影響とその後の社会】という項目に従って整理・解説され
    ているので、災害と社会との関係もイメージしやすく、便利です。

    本書を一読して思ったのは、あまりにも知らない大災害が多い、と
    いうことでした。昭和に入ってからの災害ですら知らないものがあ
    り、いかに自分が注意を払ってこなかったのかと、慄然としました。

    歴史は繰り返す、ということも改めて思いました。地震も噴火も、
    一度あったところには、必ずまたやってきます。しかも、それは、
    よく言われるように周期性を伴っています。特定の場所に、特定の
    周期で必ずやってくるのです。逆に言えば、過去の歴史を調べるこ
    とで、次に来る時期が予想できる、ということです。

    そして、災害には連動性がある、ということも改めて教えられまし
    た。ひとたびどこかが揺ると、当分列島は揺れ続けるし、噴火も起
    きる。それはもう国土の成り立ち上、致し方ないようです。

    おまけに、どうやら、社会が激動している時期に、災害は起きやす
    いようです。幕末の日本はよく揺れましたし、敗戦前後もよく揺れ
    ました。社会と国土が共振しやすい、不思議な国に私達は生きてい
    るのです。

    こうやって改めて災害の歴史を眺め渡してみると、ちゃんと災害の
    教育が行なわれ、災害の歴史が常識になっていれば…、と思わざる
    を得ません。少なくとも、50基以上の原発をつくろうなんて話には
    ならなかったでしょうし、バブルの絶頂期、お金が有り余っていた
    頃に、もっと防災に対して投資をしていたことでしょう。

    そう考えると、災害に対する無知は、犯罪に等しい、とも思えてく
    るのです。自分の家族や仕事を守る意味でも、この列島の災害の歴
    史について知っておくことは、絶対的に必要なことだと思います。

    災害の日本史、是非、読んでみて下さい。

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    ▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)

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    「すべての天災は、為政者の不徳による」
    という「天人感応説」がある。
    この時代、日本の歴代天皇は、その説を信奉していたはずだから、
    天武帝もまた、かなり重く深刻にこの地震と、地震のもたらした災
    害の事実をうけとめたろう。

    仁明天皇の代になると、陸奥、伊豆、出羽とあちこちの火山が噴火
    する。承和七(八四〇)年には、二つの地震があった。

    貞観五(八六三)年には「越中越後地震」が起きて、これまた多く
    の被害が出た。
    翌年には富士山と阿蘇山という、東西の霊峰が噴火する。その後も
    噴火はつづき、貞観十年には「播磨地震」がある。マグニチュード
    7.0以上で、近場の京都でもかなりの揺れがあったという。
    それからまもなく、「貞観地震」が起こるのである。

    「政争に破れた者はことごとく怨霊になり、地震や噴火、干ばつ、
    疫病なぞの災いを世にもたらす」
    そう思われるようになっていたのだ。

    江戸時代の元禄期や宝永期、安政期は、ごく短いあいだに巨大地震
    が重なった時期だ。平安時代の後期--十一世紀の終わりも、そのよ
    うな期間だった。しかも、「同じ南海プレートの海溝地震が、わず
    かな期間に連続する」
    という日本史上でも類例を見ない「揺れた時期」である。

    無念のうちに亡くなった平家一族は、怨霊になったとされて、都の
    人びとに恐れられた。
    京の町を直撃した文治地震はまさに、そういうときに起こったのだ
    から、「平家の怨霊のたたりだ」という声が出るのは、無理からぬ
    ことであった。

    古来、「治水こそが皇帝(治世者)の条件」
    とされていたように、「震災からの復興」は人びとの信頼を得るた
    めの必須条件であり、重要な事業だったのだと思う。

    この元禄の大地震が、
    「さらなる凶事をもたらすのではないか」
    と懸念した幕府は、いそぎ改元を朝廷に申し入れる。そして元禄十
    七(一七〇四)年三月十三日、「宝永」と改元される。災害に襲わ
    れないための、縁起の良い元号だった。にもかかわらず、事はそれ
    だけでは終わらなかった。

    「元禄関東大地震」こそは、繁栄をほこった、
    「江戸で最初の大消費時代」
    としての元禄文化の終わりを告げる地震だった。
    そして「宝永大地震」と「富士山宝永大噴火」によって、この消費
    文化は完全に命脈を絶たれることになる。

    宝永の震災以後、弘化元年にいたるまで、およそ百三十年余、領主
    たちは、この復旧事業に心血をそそぎつづけた。

    「天災が重なるときには、天才が輩出する」
    これは、ただの偶然であろうか。

    (明治三陸大津波への)救済費として四十五万円の支出が閣議決定
    された。これはしかし、
    「明治二十九年度の国家歳出二億三百万円の0.002%」
    にすぎない。当時建造中の軍艦「松島」の予算は、この三倍強の百
    四十万円であった。

    (第一次世界大戦の)戦後の不況がつづくなかで、関東大震災は起
    こったのである。
    日本経済にとっては、
    「震災手形の発行や、復興資材の輸入超過」
    といった問題が重くのしかかってきた。それにより、経済の閉塞感
    がいっそう深刻化し、
    「のちの昭和不況にいたる長い景気低迷期」
    にはいっていくことになる。

    「敗戦への導火線」
    ともいうべきものになったのが、この三河地震と、先行した東南海
    地震である。
    一つには、直接的なダメージ。もう一つは、
    「迅速な復興もままならないほどの国力のなさ」
    を、多くの国民のまえに露呈してしまったことだろう。

    まさに、日本が生まれ変わろうとしていた矢先、現在でいう「南海
    トラフ」に沿った地域を巨大地震が襲った。すこしずつではあるが、
    明るさを取りもどしつつあった人びとの心に、ふたたび暗い影を落
    としたのである。(…)「戦争」という国を揺るがす大事を終えた
    直後、さらに大規模な災害にみまわれることになろうとは、いった
    い、だれが予測したであろうか。

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    ●[2]編集後記

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    早いもので、今年ももう残すところあと三ヶ月。半期が終わり、今
    年度の成果や業績が気になり始める時期になりましたね。

    9月生まれの井上は、先日、44歳になりました。もう44歳。そんな
    年になってしまったんだなあと感慨ひとしおです。

    東京オリンピックが決まり、色々な意味で、「2020年」は一つの
    区切りになりそうですね。前回の東京オリンピックのポスターを亀
    倉雄策さんがデザインしたのは49歳の時。今の自分とほぼ同じ頃に
    亀倉さんらその後の日本を代表するデザイナー達はオリンピックを
    目標にして頑張り、世に出て、羽ばたいていったのです。亀倉さん
    と比べるのもおこがましいですが、そういう年なんだという自覚を
    持って生きていかないとな、と改めて思います。

                  ☆☆☆

    無印良品の店舗で配布している小冊子「くらし中心」をご存知でし
    ょうか?この冊子の最新号Vol.11のテーマは「森にかえろう」です。
    井上は、今回、企画段階からお手伝いさせて頂き、最後に自分なり
    の森に対する思いを書かせて頂きました。ご笑覧頂ければ幸甚です。
    http://www.muji.net/lab/booklet/

  • 一番古いのは684年の白鳳地震から、東日本大震災まで記録が残っている日本の災害(地震、台風、噴火)を、その時代背景やどうやって復興したのかを含めて解説する600pを超える大書。
    終戦前後に名古屋近辺で大きな地震が連続して起きているとか、京都付近でも過去に大地震があったなんて、どれくらい知っているんだろう・・
    そしてそれが東南海地震であるということも。

  • 災害に関する本はこれまでにも数多く出版されています。とりわけ3.11は日本における災害について考え直すきっかけとなり,様々な観点から災害が論じられるようになりました。

    本書は,災害を日本の歴史という観点から詳細にまとめられたものです。その歴史も,古くは古代から災害と関連させて述べられており,網羅性が非常に高いです。昔の日本人は,地震や台風といった災害とどのように付き合ってきたのかがよくわかる大変興味深い1冊だと思います。

    600ページ以上にわたって詳細に書かれた本書を今読むことは,自然現象という避けられないものとどのように共存していくべきなのかを考える上で大変意義があると思われます。

    日本の歴史を学びながら災害の実態がわかる一石二鳥の本だと思いますので,ぜひ。

  • 次の世代に、どのようにしてメッセージを残すか?よく考えないと、、、

    PHP研究所のPR
    「『日本書紀』に詳細に記述された684年の白鳳地震から、2011年の東日本大震災まで、甚大は被害をもたらした地震・噴火・津波・台風は、長くて数十年、早ければ数年刻みで日本列島を襲ってきた。しかし日本人は、どのような厳しい状況を経ても必ず立ち直り、歴史の歯車を前に回してきた。

     ただしっかりと立ち直るかわりに、大きな問題点も抱え込みがちになる。「忘却」である。前回の教訓を次に生かすことなく、「人災」のようなかたちで被害を拡大してしまうのだ。すると社会や政治体制に大きな変革が起こり、歴史は大きく激動しながら展開を始めていく。

     「豊臣政権にとどめを刺した直下型の巨大地震」(慶長伏見地震・1596年)など、日本史上の主な災害を「災害の状況」「時代の概況」「災害の影響とその後の社会」の3項目で時代を追って解説した本書は、まさに歴史に学び「災害と人間」を考える上での好著といえる。640頁の渾身の書き下ろし。 」

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著者プロフィール

1947年、東京生まれ。慶應義塾大学卒業。2012年歴史時代作家クラブ賞、2021年『翔』で加賀乙彦推奨特別文学賞受賞。著書に『吉良の言い分』『真田信幸』『徳川家康』『光秀の言い分』『織田有楽斎』等。

「2022年 『家康と信康 父と子の絆』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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