- Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569769820
感想・レビュー・書評
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久しぶりに荒山作品を手に取った。
柳生剣士や朝鮮忍術は出てこないかと疑りつつ読み進めたが、なんとしっかりとした歴史物。しかも、歴史離れと歴史そのままではないが、資料に書かれていない部分を描いた王道の作品。
強いて言うのなら元寇を棄兵とした小説にテイストは似ているかな。
それぞれの思惑の中で、必死に抗おうとする王子たちの姿は確かに美しい。500余ページを一気に読んでしまった。
東アジアの歴史を考える上で日本と朝鮮半島は分けて考えるべきではないと改めて認識させられた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
葛城皇子(中大兄皇子)と中臣鎌子が行った白村江の役。一般的には秀吉の朝鮮攻めと同様に失敗例とされているが、そこには思慮遠望が隠されていた。
物語は白村江の役から二十一年前の百済の皇太子が亡命するシーンから始まる。通り一遍の知識しか無かったので、どこまでが史実かが分からないが非常に興味深く読んだ。日本国内では蘇我入鹿の暗殺なども描かれ、今は乙巳の変と呼ばれる出来事などを歴史を思い出した。
少々長いが楽しめた。 -
史実はそう多く残されていないので、数少ない史実の間を著者の想像で書き足しているのだろうが、面白い物語になっている。600年代って相当な未開の時代のように思われるが、飛行機や自動車は無いにせよ、人間社会のあり様についてはさして今と変わらないのだろう。国際色豊かな時代でもあったようだ。半島や中国との交流も盛んで、今ほど社会も固まっていなかったこの時代の空気感はどんな感じだったのだろうか。逆にもっと社会は固定化していたのかな。最初は蘇我入鹿が主人公かと思ったら途中から居なくなるし。最後は残念な結末ではあるが、主人公とみなされる彼が生き残って大事を成し遂げたので有ればそれは素晴らしい事だ。
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新聞に載ってた広告を見て気になり購入。
個人的に馴染みが薄かった古代の日本が舞台だったが、壮大なスケールで描いており、かなりアツくなりながらページをめくった。
登場人物は皆キャラ立ってるが、完全に金春秋に感情移入して読んでいた。笑 -
圧倒的に面白い。あまり読むことの少ない古代の物語がいきいきと描かれている。葛城皇子のサイコパスぶりが恐ろしい。
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「白村江の戦い」については太平洋戦争以外で、日本が外国に負けた唯一の戦いという事しか知らなかった。またこの時代の朝鮮半島情勢についても知識が無かったので興味深く読めた。
多少のフィクションの部分も話しの流れとして違和感はなかった。それぞれの人物の思惑が入り乱れて物語の面白さが増し、何人かの人物に肩入れをしながら読んだ。 -
歴史の用語として聞いたことは在っても、然程詳しく知るでもない「白村江の戦い」を背景とした作品だ。
「白村江の戦い」というものは、日本での対外政策の変遷、朝鮮半島の国々の相互関係、中国大陸の帝国の動向と様々な要素が絡み合い、関係した人々の様々な思惑が交錯した中で惹起したということになるのであろうか。そういうことに関して、倭国(日本)の要人や、結果的に倭国へ亡命していた百済の王子、百済の人々、新羅の要人というような幾人かの視点人物を設定して大胆な大河ドラマを展開している。
所謂<大化の改新>で誅殺される蘇我入鹿が序盤では大きな存在感を見せるが、途中からは葛城皇子(中大兄皇子)が大きな存在感を見せ、その軍師という感じの中臣鎌子が暗躍している。朝鮮半島の動きとしては、新羅の金春秋が大きな存在感を見せる。
朝鮮半島は百済、新羅、高句麗が鼎立していたが、百済は唐と結んだ新羅に滅ぼされてしまう。その百済の復興を目指したというのが「白村江の戦い」ということになる。作中世界は“古代”ということになるが…何か“現代”であっても在り得るかもしれないような、謀略が渦巻く世界である。
そうした“謀略”の世界に巻き込まれて行くこととなってしまう百済の王子が、王室の内紛で命を落としてしまいそうになった所から倭国へ逃れる形になり、蘇我入鹿が「将来の親衛隊」を育てようとしていた寄宿学校的な場所で育って行く様子というのが作中に在るのだが、そういう辺りも面白い。
こういうような「東アジア世界に在った古代の日本」というようなことを強く意識したような作中世界が展開する小説…個人的には、類例に余り思い当たらないが、一寸興味深かった…