14歳からのリアル防衛論

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569776538

作品紹介・あらすじ

自衛隊は強いのか、弱いのか?北朝鮮は脅威なのか?日米同盟とは?中国は敵なのか?ニュースでの"もやもや"がすっきり見えてくる!日本の現実(リアル)な防衛と問題点。

感想・レビュー・書評

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  • ウクライナの戦争はどう終わるのか知りたいと思い、「戦争はいかに終結したか」という本を読んでみた。
    で、今更だが、戦争というのは普通、敵と味方が対等に戦って、どっちかがどっちかをぶちのめして降伏させるか、でなければ一方的に攻め込んで相手にギブアップさせるか、そのどっちかで終わる例が多い。その点ウクライナは自分の領土を守ろうとしているだけで、モスクワに攻め込む気はない。武器を供与しているNATOがそれは許さないし、だいたい無理だ。つまりロシアが割に合わない、と考えるか、ウクライナが手を上げるか、あるいはプーチン政権がどうかならない限りこの戦争は終わらない。
    と、ここまで考えて、あれ?日本は?と思ったのだ。もしいま、北朝鮮なりロシアなりが攻めてきたらどうなる? 日本は憲法で戦争はしない、と定めている。「自衛」はできる。どこまでが自衛なのかははっきりしないが、少なくとも敵国を攻撃して降伏させるという選択肢はない。どっちが先に手を出したかはともかく、それは「戦争」だから。つまり攻め込んできた相手が諦めるまで防衛するしかない、という点ではウクライナと同じことになるのでは?

    本書は「防衛論」とあるように、著者個人の考えを述べたものだが、説得力がある。著者の主張ははっきりしていて、
    1.自衛隊はそもそも他国に攻め込む能力を持っていない
    2.日本の防衛力は自衛隊の戦力と日米安全保障条約に基づくアメリカ軍の戦力のセットである。
    3.日米安全保障条約は「片務」ではなく、アメリカに遠慮は不要。アメリカにもメリットがあるから条約が継続しているのだ。それを理解していない人が多すぎる。
    4.日米同盟は対等なのだから、言いたいことがあれば言え。
    ということだ。1についてはもう少し詳しく説明してほしいと思うが、そういう視点で自衛隊を考えたことはなかった。
    いざというとき、他国であるアメリカがどこまでやってくれるかわからない、という言い分は理解できる。トランプみたいなのがまた出てくれば、同盟関係そのものが不安定になることだってありえるかもしれない。とはいえ、人の手を借りずに自分の身は自分で守る、と決めるなら、一般的に考えて日本には普通の「軍隊」が必要、ということになってしまう。アメリカや周辺国がそれをどう見るか。兵力だって全然足りない。防衛費だって膨れ上がるだろう。

    ぼくら戦争を知らない第一世代は、親や、親の親から太平洋戦争でどんなにひどい目にあったかさんざん聞かされて育ってきた(攻め込んだのは大日本帝国なのだから、「ひどい目にあった」という言い方が世界に通用するとは思えないが)。そのせいもあって、戦争は悪=戦力は悪、と短絡的にとらえてきた。
    「隣の国が一方的に攻めてくる」というあり得ない事態が、21世紀になっても起きるのだ、ということをロシアが証明した。他国が日本に攻め込んできたとき、理想論はともかく、日本はどうするのか。どうすべきなのか。著者の主張に賛同するかはともかく、一読の価値はある。

  • 14歳からを対象にしているとしたら、もう少し補足があった方がいいのでは、という箇所もちらほらあったが、自分が感じていた日本の防衛論に関する疑問点が解消できたし、もっと政府・政治を変えていく必要を強く感じた。

    アンログロサクソンのメンタリティーを日本政府が理解・意識してないというのはその通りなのでは?読んでいて日本政府の空回りが悲しくなるほどだった。

    謝罪外交を終焉させるために、従軍慰安婦への謝罪を決着させるべきというのも大いに賛成。
    「日本は唯一の被爆国でもあるし、特別な国であるべき。防衛力整備を通じた平和国家宣言をすべき。」というのも、読んでいて改憲論者・保守論者双方の立ち位置を整理できた。

    日本の核武装すべき論の弱さも見えたし、国民皆兵制(まだ完全に賛同ではないが)のメリットもよく分かった。

    是非多くの方に読んでもらい、意味のある議論、変革への行動に結びつけたい。

  • 安全保障の教科書第1版としては及第点では?(引っかかったところは無数にある)
    http://www.amazon.co.jp/review/R39VSVM68NKHT0/ref=cm_cr_rdp_perm

  • 対象年齢もあるのでわかりやすく簡単に書いているんだが新しい気付きも多かった。
    日本国憲法の前文から日本には積極的に世界の平和構築に関与すべきってこと。自衛隊にはパワープロジェクション能力はないが持とうとすれば巨額のコストがかかること(米軍とやってくのが経済的)。米国にとっての日本の戦略的根拠地としての価値の高さとか実は比較的対等に近い同盟関係であること。
    その他北朝鮮やチャイナが脅威として過大評価されてることに触れてから日本の安全保障のあり方を論じるんだけど共感。日本が日米同盟をリードして平和化するとか憲法などの改正や諸外国との信頼関係の醸成とか。そして日本が「普通の国」にならないこと。日本は冷静さを失わずに積極的かつ現実的な政策で世界の平和に寄与せにゃならんと思った。

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著者プロフィール

軍事アナリスト。1945年12月、熊本県生まれ。陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校修了。同志社大学神学部中退。地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。外交・安全保障・危機管理(防災、テロ対策、重要インフラ防護など)の分野で政府の政策立案に関わり、国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査、隊友会本部理事などを歴任。小渕内閣では情報収集衛星とドクター・ヘリ実現に中心的役割を果たした。2012年4月から、静岡県立大学特任教授として静岡県の危機管理体制の改善に取り組んでいる。著書に『「アマゾンおケイ」の肖像』(集英社インターナショナル)、『フテンマ戦記』(文藝春秋)、『アメリカ式 銃撃テロ対策ハンドブック』(近代消防社)、『日米同盟のリアリズム』(文春新書)、『危機管理の死角 狙われる企業、安全な企業』(東洋経済新報社)、『日本人が知らない集団的自衛権』(文春新書)、『中国の戦争力』(中央公論新社)ほか多数。

「2022年 『メディアが報じない戦争のリアル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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