土の科学: いのちを育むパワーの秘密 (PHPサイエンス・ワールド新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569779614

作品紹介・あらすじ

草木が生えている土を手のひらにとり、触ってみよう。軟らかい感触としっとり感。土は、その中に空気や水を含むから、生命を育む。土のパワーの秘密にさまざまな角度から迫り、世界のさまざまな土を紹介。地球は「土の惑星」、地表面を土がヴェールのようにおおう。水から陸へ上がってきた生物が関与し、長い時間をかけて、いのちを育む土をつくってきた。ところがいま、土が急速に消える事態が進行している。

感想・レビュー・書評

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  • ちょっと難しかった、、、
    でも人間生きていく上での土の重要性はわかった!

  • 所在:展示架
    資料ID:11000750
    請求記号:613.5||Ky8||024

  • 人類の爆発的な発展〜人口増〜を支えてきたのはなんといっても農業である。農業は当然のことながら土に依存し、大まかにいえばその中に含まれる窒素とリンに依存している。これらを肥料として使用することにより、食糧生産量は急増した。
    窒素に関してはアンモニアを科学的に合成する技術によって生産過剰になっている。
    しかし植物の成長に欠かせないリン酸は自然界の中で生成される速度が非常に遅いため、これを掘り尽くすことが人口増に歯止めをかけるかもしれないと著者は言う。当然そこには飢餓が起こるだろう。温暖化、放射能、有毒な化学物質、水不足、表土流出など、人類の生存を脅かす要素は数あるけれど、リン酸の枯渇という新しい要素が加わった。

    ただ単に人類は増えすぎたのではないか。しかし意図的に減らす事は容易ではない。人類は安全に減っていく術を探るしかないのではないだろうか...。

  • 土の成り立ちや役割、水田と畑の土、土壌流出・砂漠化・塩害などの問題、土壌中の生物とその役割、肥料の歴史と功罪、農政といった幅広いテーマをカバーしている。

    ・地球全体の平均で、土壌1m2あたり1日1gの炭素を二酸化炭素として排出している。
    ・無機イオンや鉱物と結びついた高分子の酸である腐植は、団粒構造が発達して保水力や通気性がよい。中央ヨーロッパからシベリア、中国北部、合衆国北部のプレイリーからカナダのステップ、アルゼンチンのパンパスなどの温帯北部に分布するチェルノゼムで見られ、すぐれた農業地帯となっている。
    ・火山から噴き出した溶岩が風化し、有機物がたまり、森林を支えるのに必要な表土ができるまでに千年以上かかる。
    ・リン酸は鉄やアルミニウムと結合して溶けにくくなっている。pHが上がるとリン酸が溶け出しやすくなる。
    ・日本の畑の土は、関東以北と九州に多い火山灰由来の黒ボクが半分を占め、東海以西に見られる赤黄色土が2割近くになる。
    ・黒ボクは腐植含有量が高いため、赤黄色土は鉱質のため、いずれも強い酸性の土。カリウム、カルシウム、マグネシウムが少なく、有害なアルミニウムイオンが多い。
    ・塩害によって放棄される灌漑農地は毎年百万haで、過去300年間の合計は1億haに上る。
    ・窒素を固定する微生物には、根粒菌のほか、好気性で畑の土にいるアゾトバクター、嫌気性で水田の土にいるクロストリディウム(シアノバクテリア)がある。ハンノキ、ヤシャブシは放線菌のフランキアとの共生によって、ソテツは藍藻との共生によって窒素固定を行う。
    ・日本では、自給肥料以外の購入肥料として、江戸時代からの乾燥イワシや乾燥ニシン(ほしか)、明治以降の大豆かすが使われていた。明治初年から過リン酸石灰が輸入されはじめ、明治21年から国内生産が始まった。
    ・採掘可能なリン鉱石は、90年で枯渇すると予測されている。
    ・窒素固定に世界の全エネルギーの1%が消費されているといわれる。アンモニア合成には水素が必須であり、天然ガスを原料としている。
    ・肥料や農薬の多用による地下水の汚染や残留農薬、単作による土壌浸食などの問題から、アメリカでは1985年の農業法で低投入持続的農業(LISA)に転換した。ヨーロッパでは、1985年に粗放化奨励策や休耕奨励策、1992年には直接所得補償(でカップリング)や農山村保全のための補助金が導入された。日本でも、1992年に環境保全型農業を推進する政策が導入された。

  • いわなくとも、やっていることは実に巨大。


    土、土壌がどうやって生まれ、どんな特徴があり、私たちの生活に関係しているか、そして、土から見える環境問題まで、広くわかりやすく説明してくれてます。

    僕も著者の、あらゆる教育の出発点として、土、そこから育まれる動植物、そしてそれを食べていのちがあることを、土や自然の中で遊ぶことで知ってもらうこと、という考えに同じです。

  • わかりやすい。そして面白い。土のネクストソサエティを記した良書である。

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著者プロフィール

1931年生まれ.1954年京都大学農学部農芸化学科卒業.同大学院博士課程修了.1960年京都大学農学部助手,京都大学東南アジア研究センター助教授,教授を経て1978年より京都大学農学部教授(土壌学講座担任),同学部長.1995年滋賀県立大学環境科学部教授,2001年退官.京都大学名誉教授,滋賀県立大学名誉教授.

この間日本土壌肥料学会会長,日本学術会議会員,国際イネ研究所理事などを歴任.

水田土壌学,熱帯土壌学を専門とし,日本土壌肥料学会賞(1975),日本熱帯農業学会賞(1978),日本農学賞,読売農学賞(1985).を受賞.



主な著書

PaddySoilsinTropicalAsia,TheirMaterialNatureandFertility(ハワイ大学出版部)

東南アジアの低湿地(農林統計協会)

最新土壌学(朝倉書店)

農業と環境(富民協会)

食料生産と環境(化学同人)

熱帯土壌学(名古屋大学出版会)

PaddySoilScience(京都大学学術出版会)

「2005年 『土とは何だろうか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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