だれのおとしもの? (PHPわたしのえほん)

著者 :
  • PHP研究所
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本棚登録 : 189
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569785950

作品紹介・あらすじ

雪が降った朝。まほちゃんは道端で手袋の落とし物を見つけます。その手袋のそばにあった足跡をたどって、落とし物を届けることに……。

感想・レビュー・書評

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  •  種村有希子さんは、前回読んだ「サンタクロースになるひ」で初めて知り、そこで感じられた、色鉛筆による素朴で優しい温かみと、ぼかした雰囲気との素敵な融合と、デザイン性の高い配色は同様であり、本書の場合、雪景色の白を基調とすることで、他の色を、より効果的に映えさせているように感じられたのが、とても印象深い。
     

     ある雪が降った朝「おとしもの、みーっけ!」と、そりを引いていた「まほちゃん」が拾い上げたのは、“ゆり”と名前がついた手袋で、大きさは、まほちゃんの手と同じくらい。

    「どんな こかなぁ。
    あしあとを たどったら、とどけられるかな」

     上記の、期待に胸ふくらませてワクワクする様子には、まだ見ぬ女の子との出会いを読み手にも想像させるが、この後の、ちょっとミステリアスな展開には、「えっ、どういうこと?」と、読み手は混乱しながらも、落とし物を拾いながら、ずんずん突き進んて行く、まほちゃんに引っ張られるように、一緒に物語の世界に入り込んで行く、導入部の上手さだと思う。

    しばらく いくと、
    「マフラー、みーっけ!」
    マフラーにも なまえが ありました。
    「ゆりちゃんったら、また おとしてる」

     しかし、落ちているマフラーはそれだけではなく、その先にもたくさん落ちており、まほちゃんも思わず「さむがりやなのかな?」と、素直な感想を言ったと思ったら、今度はその先にある公園にセーターが落ちており、それには「あつがりやなのかな?」と、彼女はおそらく脱ぎ捨てていったのだろうと想像したのだが、そのまるで大人が着るようなサイズには、「これも ほんとうに ゆりちゃんの?」と、まほちゃんも読み手同様、「?」状態に。

     そして、更に足跡を辿った先には、思わずポップな異世界観と呼びたくなるような、種村さん独特の色鉛筆ではない描き方で表現した、その家と家の間の狭い道に於ける、氷柱の大迫力と、落ちているものの華やかさとのギャップが、また新たな混乱を巻き起こしそうで、それを見つけたまほちゃんも、「ゆりちゃんって おひめさまだったりして!」と、本当に異世界に向かっているような、夢のある展開になってきた。

     しかし、その後、まほちゃんが足跡を辿りながら拾ったのは、ざっと挙げるだけでも、風船、空き缶、うさぎのぬいぐるみ、毛糸の帽子、飴、果物等々・・・と、謎は深まっていく一方で、まほちゃんも見たことのない林の中に入っていき、その静けさの中で突然、「ドサドサッ」と、枝から雪の落ちる音に少し不安になったりと、いろんな感情に振り回されながらも、その先に待っていたのは?


     本書の物語は、タイトルから推測されるように、ある程度決まったパターンになりがちなところを、その謎が謎を呼ぶ展開に、ちょっとした冒険感を味わえる面白さに加えて、絵本自体を横長のサイズにしているのが、ちょうど子どもの背丈に合っていながら、足跡を辿る道のりの、その先の先まで見通せる奥行き感や、まほちゃん主観の視点にしたときの景色のパノラマ感に、劇的な場面の距離感といった、それぞれの場面をより効果的に演出しており、そんな様々な工夫を凝らしている点に、まず素晴らしさを感じられた。

     また、子どもに向けた可愛いらしい遊び心として、表情のある木や、元は別の落とし物だったのが、人参を抱えたぬいぐるみと、一つになっていることに加えて、いろんな場面でさり気なく、まほちゃんを見守っている猫も見逃せないし、謎の真相についても、「なるほど!」と納得させられること間違いなしで、そこにあったのは、大人だから却って思いつかないのかもしれない、子どもの創造力の素晴らしさである。

     そして、そんな様々な工夫を凝らしながらも、本書で伝えたいメッセージの、そのシンプルさには、それが、如何にかけがえのない素敵なものであるかを、より強調させているようにも思われ、それは、表紙の題名が、赤と青で交互に書かれていることや、最初の見返しに描かれた一人分の足跡が、最後の見返しでは、足跡が横並びになっていることからも充分に想像出来る、『二つあるって素敵だね!』を実感させてくれる、その最初のきっかけとなるであろう、出会いの素晴らしさなんだと思う。

  • 絵が可愛らしいし、ページをめくるたびに、次のページが気になる絵本。森の奥へと向かうときは少し怖い感じもするけど、最後の出会いの絵はとても綺麗です。

  • ちょっとドキドキしながらページをめくっていったが、ラストはホッ♪

  • たくさんの落とし物が、雪だるまになる。
    女の子が可愛い。お話自体も可愛い。

  • 3歳3ヶ月の娘へ

  • 足あとをおいかけててくてくてくてく

  • ゆきが ふった あさ。まほちゃんは、てぶくろを ひろいました。「ゆり」となまえが ついています。あしあとを たどっていくと、マフラーも おちていました。それも ひとつでは ないのです!「これ ぜんぶ ゆりちゃんのかなあ」
    「そうか!」と納得のラストに大満足です。

  • まほちゃんが「ゆり」と書かれた手袋を拾う。
    ちょうど自分と同じくらいの大きさだ。
    そこで、足跡をたどって落とし物を届けようと進むと、どんどんといろいろなものを拾う。
    マフラーを何本も、大きなセーター…。
    森の奥で追いついて、二人で雪だるまを作る。
    ちぐはぐな落とし物は雪だるまに着せるためだったのだ。

    最初、くまとか動物たちの落とし物かと思った。

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著者プロフィール

種村有希子(たねむらゆきこ)
1983年、北海道釧路市生まれ。多摩美術大学美術学部絵画学科卒業。2011年、第4回グラフィック「1_WALL」ファイナリスト入選。2012年『きいのいえで』で第34回講談社絵本新人賞受賞。作品に『サンタクロースになるひ』、『だれのおとしもの?』、『かくれんぼ』、『ようちえんのおひめさま』、『きょう、おともだちができたの』、『あのこのたからもの』、挿絵に『まじょのむすめ ワンナ・ビ―』ほか。

「2020年 『まなちゃんはおおかみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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