人口が減り、教育レベルが落ち、仕事がなくなる日本

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569817026

感想・レビュー・書評

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  • この本の帯にも書かれている様に、今(2014)の日本は、アベノミクスによる効果や東京オリンピックの誘致成功などで浮かれていると思います。

    民主党が政権を担当していた頃には多くあった日本悲観本が近頃はメッキリ少なくなっています。私も悲観本が多く出ていた頃には、自分に元気を出す意味でも、日本の経済・技術の素晴らしさを強調した本を読んでいましたが、ふと、同じような本ばかり読んでいる自分はこれでいいのか自問し始めました。

    そんな私にとって、久々に日本への警告を述べている本に出遭いました。何百兆円とも言われる預金が半分無くなっても日本では暴動は起きないと思いますが、仕事がなくなって失業率が50%になれば他国と同様に暴動が発生すると思います。

    「楽観論からは未来は切り開けない」とこの本の著者が強調するように、このまま好転するような行動を起こさなければ未来にどんな生活が待っているかをこの本は書いてくれています。

    先週の都知事選では、下馬評通り「外添氏」が当選しました。日本の経済を牽引している東京都知事の考え方は、日本の将来を形作る上で重要だと思います。大学教授、厚生労働大臣等の経験を活かして、まずは東京から若者が元気になるように変えていって欲しいものですね。

    以下は気になったポイントです。

    ・JR北海道の経営が成り立っているのは、民営化の際に国から提供された「経営安定化基金」を保有しているから、この運用益は国の特別会計が負担(税金)している(p21)

    ・首都圏の人口は2015年頃をピークに減少に向かい、東京都に限っても2020年をピークに減少する、65歳の人口比率は2010年の2割から3割へアップ(p26)

    ・中国は2015年から人口オーナス(生産年齢人口の減少)となる、韓国は2016年からだが、2020年には欧州、日本よりも減少速度が速くなる(p33)

    ・未来予測は、人口が増えるか減るか、次に、教育レベルが高いか低いかでほとんど確実に未来が描けると考える(p34)

    ・シンガポール、インドがなぜ経済成長したのか、彼らが英語を話すから(p45)

    ・限界集落とは、65歳以上の高齢者が総人口の過半数を占める状態であり、都会の中にも存在する(p59)

    ・外国人比率が低いのは東京だけでなく、韓国や中国の都市も同様。(p85)

    ・サンフランシスコ、ニューヨークは、IT産業の興隆などによりドーナツ現象は収まった、都心は再開発されて中間層、富裕層が戻ってきた、そして税収も増えた。デトロイトはそうならなかった(p90)

    ・GM破綻のときは、年金債務や医療費負担が一掃されたが、デトロイトは自治体であり、年金・医療費を受給する権利が法律で手厚く保護されているので、制度手直しに時間がかかる(p91)

    ・アメリカといえば確定拠出型年金と思いがちだが、それは民間の話、公務員はまだ確定給付型が残っている(p91)

    ・アメリカの公務員たちは、人員削減や給与カットは受け入れてきたが、確定給付型年金と健康保険だけは守り続けてきた。しかしこれからは崩れるのは時間の問題(p93)

    ・日本の場合、地方債を発行して市場から資金を調達できるのは、25都道府県と17政令都市のみ、これ以外は「銀行等引受債」といって、指定地銀や地方金融機関から借り入れて財政をまかなっている(p99)

    ・財政力指数が0.4以下だと、その自治体は危ない、ここに高齢化率が30%を超えたらなんらかの手を打つべき(p101)

    ・サムスン、マイクロンテクノロジーは、PC用DRAMを破壊的に安価に大量生産した、一方、主要顧客がメインフレームメーカであった日本の半導体メーカは、相変わらず25年保証のDRAMを作り続けた、これがコスト競争に負けた原因(p120)

    ・現在の輸出統計は、資本財が中心とされているが、自動車産業が稼いだ外需は、内需として広く国内に行き渡っている(p124)

    ・中国山東省では、クルマ統計に現われてこない新たなカテゴリーの電動車が相当走っている、最高速度が50キロ以下なので、低速EVと呼ばれている、ランニングコストはガソリンクルマの10分の1(p133)

    ・第2回ブラック企業大賞2013では、ワタミ・東北大学・餃子王将・東急ハンズ・西濃運輸・ステーキのくいしんぼ・ベネッセ・クロスカンパニーがノミネートされ、ワタミが8月に大賞をとった(p137)

    ・資本主義はオランダ生まれだが、発展させたのはイギリス、だから資本主義は英語でできている、そのシステムは他の言語で学ぶと違うものになる。日本語でいくらビジネスしても、それは本来の資本主義でない(p160)

    ・一般人に英語は必要ないと言っているのは、英語ができる人、それは他の人が英語をやりだしたら、自分たちの優位性・希少価値が崩れるから(p166)

    ・日本国債が最強と言われているのは、本当の貸し手である「国民」「企業」が返済を請求できないところにある(p192)

    ・アメリカの倒産は世界中に巨大な損害を与えるが、日本の倒産はほとんどの債務が国内なので、超円安になって調整されて、国内問題で終わる(p201)

    ・今後、私たちの所得はほぼ完全に捕捉される、2013年に「マイナンバー法」「特定秘密保護法」が成立したから、2016.1からの運用開始(p205)

    2014年2月16日作成

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著者プロフィール

1952年、神奈川県横浜市に生まれる。立教大学文学部を卒業後、光文社に入社。「光文社ペーパーバックス」を創刊し、編集長を務めた後、2010年からフリーランスになり、国際政治・経済・ビジネスの分野で取材・執筆活動を展開中。
著書には『出版大崩壊』『資産フライト』(以上、文春新書)、『本当は怖いソーシャルメディア』(小学館新書)、『「中国の夢」は100年たっても実現しない』(PHP研究所)、『円安亡国』(文春新書)、『地方創生の罠』(イースト新書)、『永久属国論』(さくら舎)、翻訳書に『ロシアン・ゴッドファーザー』(リム出版)などがある。

「2018年 『東京「近未来」年表』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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