憲法主義 条文には書かれていない本質

  • PHP研究所
4.09
  • (31)
  • (53)
  • (17)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 441
感想 : 45
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569819136

作品紹介・あらすじ

憲法を暗記しているアイドルと、気鋭の憲法学者による、1億人のための憲法学講義。投票の自由とは? 有名人にプライバシーはある?

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • AKB48のメンバーである内山奈月さんと九州大学准教授である南野森氏による憲法についての講義をまとめた一冊。
    非常に読みやすく、アイドルである内山さんの見識の深さに感嘆するとともにアイドルと准教授の企画本という領域を超えた深い議論が交わされており本当に勉強になる箇所が多くある一冊であると感じました。

    日本国憲法について憲法の名宛人が誰であるかや日本での法律の作成方法など学生時代に学習したことよりもさらに踏み込んだ内容について深く知ることができました。
    そして、本書で学んだことで印象に残っているところは81条の違憲審査制が明記されている重要性と法律と憲法の力関係は知識として知れました。

    南野氏のわかりやすい解説や各章の最後の内山さんのまとめが論点を押さえられており素晴らしく、アメリカでの失敗や様々な憲法を模範として作られた日本国憲法が独裁と民主主義の間の絶妙なバランスで成り立っていることやなぜ70年ものあいだ改正されなかったのかということが本書から学ぶことも出来ました。

    本書から学んだことを活かして、憲法をはじめとする法律についてもっと学んでいこうと感じると共に、法律学の入り口に立つとき是非とも手に取って欲しい一冊だと感じました。

  • 憲法の本質とは、「法の支配」を具現化し、国民を脅かす力を持ちうる国家という存在を抑制する砦となる存在である、ということを「憲法学」というよりも、条文を媒介にして、社会との結びつきの中で体得させていく、という難題に挑んだ講義の記録である。
    タイトルは、AKB48グループのファンにとってみれば、AKB48の名曲「純情主義」とかかっているようにも見えるし、憲法学に造詣が深ければ明治時代の意訳である「立憲主義」にかかっていると思い浮かぶのかもしれない(浅学な私には到底ムリだが…)。
    そんなこの講義録は、将来、日本の憲法学を背負って立つ可能性のある研究者が、元々が知性的である上に、一般的な高校教育からみれば独特な体系の公民の授業を修めたのではないか、と思える優秀な女性との対話が収めてある。
    章立てとしては「法の支配」の要素の4つのうち、最高法規性、基本的人権の尊重、違憲立法審査権、の3つに軸を置きつつ、間に、国民主権と国会についての説明をいれ、最後に、上半期に巷間を騒がせた改憲についてを語る、という構成を取る。
    特に、序論である最高法規性の説明については周到で丁寧な議論がされており、凡百の「憲法」の専門書より余程理解がしやすく、尚且つ深い議論の端緒が記されている素晴らしい書籍だと思う。

    そうした良書であることを踏まえて尚、少々の疑問を述べたい。

    結局、問題は人権の章だ。
    憲法においては、人権は、統治機構と二分する非常に重要な部分を占めるし、憲法の代表的な基本書である芦部信喜氏の「憲法」は、統治機構よりも人権について多く頁が割かれているのは周知の事実だ。
    しかし、南野先生は、憲法は国民に直接影響をもたらさない、という説明に留まり、実際、憲法の人権規定が個人を救う場面を丁寧に説明しない。
    憲法が直接国民に適用されることは否定されているが、そもそも法律は憲法に適合することが求められた上で運用されているため、憲法の理念は法律に反映されている、という説明や剣道実技拒否事件や三菱樹脂事件の判例などを説明すれば、彼女が、たとえば所属するグループにある、と言われる「恋愛禁止ルール」の是非について、「ルールが存在する」前提ではなく、そもそも「ルールが適切か」という所から考える深いレポートに導ける可能性があったのではないか。
    そして、憲法は法律では守れない、私達個人の権利を最終的に救済してくれる方法となりうる、と捉えてくれたのではないか、と思えてならない。
    そういう意味で、人権の議論が淡白になってしまった点は残念だ。

    しかし、それでも本書は非常に良書であることは疑いようがない。

    (本書に第4の権力という俗称は使われないが)マスコミが本来果たすべき役割を明らかにし、違憲立法審査権と三権分立、そして民主主義の欺瞞、といった部分にも光を当て、最終的に、護憲、改憲、というレッテルに傾いた枝葉末節の下らぬ市井の憲法議論を鮮やかに吹き飛ばす終盤は、春に刊行されるべきだった、という悔恨さえ抱かせるもの。

    最後に、慶應大学に入るから、といって「福翁伝」を読む、というほどの意欲的な少女による総括的レポートを引用したい。
    憲法の価値とは、「その憲法が『その国に根づいているか』、『安定しているか』、『運用されてきたか』ということ」から定められる、としている。
    この理解に、リーガルマインドなどという言葉とは無縁のはずの高校生が僅か2日で到達したことに、敬意を表しながら、拙文を締めたい。

  • 憲法学者とAKB48所属のアイドルとの対話形式で進む異色の憲法本。憲法学をかじったことのある人なら知ってるような内容ばかりだが、内容の水準は低くなく、憲法の基本をおさらいできる良書。
    立憲主義的な憲法における違憲審査制の重要性の指摘が印象に残った。確かに違憲審査制の担保がなければ、憲法が最高法規といっても名ばかりになってしまう。ただ、違憲審査制は民主主義の観点からは緊張をはらんだ制度であり、最高裁判事の国民審査が重要という指摘ももっともだと感じた。
    憲法9条をめぐる議論の整理もよくできている。特に、これまでの政府解釈の論理構造についてよくわかった。
    国民の義務を憲法にもっと書き込むべきという議論に対して、憲法は国家権力を対象にしたものであり、国民に義務を課すなら法律でやるべきという指摘があったが、実に明快に感じた。

  • 九大の憲法学者が憲法を丸暗記しているAKBアイドルに日本国憲法を講義していくのをまとめている一冊。
    昔、学校で憲法について勉強した記憶はあるけど、内容について詳しく理解していなかった。
    憲法改正の難しさ、三権分立の問題点等、非常に分かりやすく勉強になりました。

  • 対話形式で進む憲法入門。わかりやすいと言えば、その通り。流石に簡単すぎかな。

  • AKB にこんな凄い人がいるとは知りませんでした。
    講義の内容をそのまま収めた形は読みやすく、分かりやすかったです。各章末にあるレポートもよくまとまっています。

  • コメント

  • 名宛人の考え方,違憲審査制や違憲判決の意味,内閣法制局の役割,現在行われている憲法改正議論の論点.「又は」と「若しくは」の違いなど憲法に関する様々な話題を網羅.気安く読める.

  • 憲法は国民を縛らない。権力を縛るのだ。

  • 統治機構に大半のページ数が割かれている。日本の民主主義がどのように担保されているか(あるいはどこに綻びがあるか)シンプルに書かれており非常にわかりやすかった。

    憲法に関してはすでに何冊かの基本書を読み、ある程度理解しているつもりではあったが、単に知識の整理に役立っただけでなく、新しい知識を得ることもできた(違憲審査制が憲法に盛り込まれた経緯など)。

全45件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

アイドル

「2015年 『憲法主義 条文には書かれていない本質』 で使われていた紹介文から引用しています。」

内山奈月の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×