- Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569837666
作品紹介・あらすじ
歴史を動かすファクターとして「物流」はきわめて重要ながら、なぜか語られる機会は少ない。漢の興隆やイギリスの覇権の本質に迫る。
感想・レビュー・書評
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人間の営みである物流が、人間自身に及ぼしてきた影響を解説している一冊。
物流とは物の流れだけでなく、人や情報、科学技術や文化も運びます。
しかしそれらは素敵なものですが副産物に他ならず、根底には経済という原動力があります。
フェニキア人の地中海貿易からソ連崩壊までを扱い、人類の黎明と衰退に対する物流の影響力を理解できました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これを紐解いた理由は二つ。ひとつは、現在読んでいる全51巻の「大水滸伝シリーズ」がクライマックスを迎えているのだが、南宋時代に梁山泊の若者は、物流で中華を支配して、「民の国」をつくろうとしていた。それと、実際の歴史との整合性を確かめるため。もう一つは、弥生時代末に、どこまで物流をつくることが出来るか、調べておきたいためである。
結果、どちらとも十分な情報を得ることはできなかった。もともとは、著者の専門がヨーロッパ史である関係で、東アジアの物流はあまり紙数が割かれてはいない。中世から近代にかけての歴史に重きを置いているためである。また、それを勘案しても、貨幣の歴史や、物産の意味付けなど、更に疑問が出てくる記述も多かった。
以下、私が勉強になった、気になった処のみメモする。
・フェニキア人の地中海貿易のルートは、BC800年には確立。アルファベットの元になる文字。レバノン杉で海運業へ。ティルスに集まった商品は、銀・金・錫・鉛・奴隷・青銅商品・馬・軍馬・ラバ・象牙・黒檀・小麦・きび・蜜・油・乳・香・ぶどう酒・羊毛・布地・羊・山羊。
・漢の武帝時代(BC141-87)に、東アジアはヨーロッパに先駆けて経済発展した。基礎は始皇帝時代(BC247-210)に。鉄製農具・武器。青銅貨幣。度量衡・文字・貨幣の統一。中央集権体制。国土の拡大、朝鮮に楽浪郡以下四郡設置、直轄地に。桑弘羊による改革(鉄と塩の専売、均輸法で国から物品購入と輸出する官吏を出す、平準法により物価の安定、商工業の財産税の増税、中央による貨幣鋳造)これによって、特権商人はいなくなり、多くの商人が物流に関わる。
・宋代の中国の経済成長率は、歴史上極めて高かった。国内では資源開発と技術革新、特産品が増えて交換取引か増える。
2018年3月読了 -
物流。読んで字の如く、モノの流れ。
情報化社会の今尚、モノが途絶えることはない。
むしろボタン一つで需要を表すことが可能になった今、そのスピードに対してどのように供給するかがニュースにさえなっている。
第一章フェニキア人から始まって、第二章で東アジアの経済発展を挙げる。
秦の始皇帝の時代に通貨の統一、そして文字の統一が為されたことで、余分なコストをかけることなくモノの行き来が可能になったわけだ。
なるほど。知っていたことを違う角度から見た気がして、すごいな。
そしてイスラーム、ヴァイキングと話が及んでいき、中国・地中海が衰退する中で、北海沿岸諸国が台頭するようになる。
世界史の授業で、東インド会社と言えば茶とアヘン!くらいの点的な知識だったのだけど、イギリス・オランダにおける東インド会社ってすごいシステムだったんですね。
商人を外敵から保護したり、輸入品独占したり、個人的な貿易オッケーだったり。
でも、独占するということは価格設定が可能になるわけで、そうすると同じモノをより安価に仕入れるルートが必要になる。
いわゆる密輸なのだが、イギリスに茶の密輸を可能にしたのはなんとスウェーデンだった。
こうして正規=高価ルートだけでなく、裏ルートからお茶を手に入れることが可能になったからこそ、イギリスの茶文化が市民にまで浸透したのだとさ。
同じように、迫害されて国という拠り所を持たないユダヤ人なんかも、独自の情報ルートが生まれ、貿易での利益を手にすることになったとか。
最後はそうしたルートの確立を行わなかった社会主義の衰退までを論じて、この本は終わる。
テーマはものすごく面白いものの、説明口調なので盛り上がりには欠けるかも。
けれど、歴史的に力を持つ国とそうでない国の分かれ目はどこにあったのか、ということを一つの視点として見直してみるのは楽しかった! -
交通網が発達していなかった古代から二十世紀頃までの世界を俯瞰し、国・地域の趨勢や経済の発展に物流がどのような役割を果たしたのかを解説してくれている本。タイトルに「物流」とあるが物流業界の話ではなく、あくまで世界史の観点でまとめた本。
ローマ帝国が台頭する前に地中海貿易で繁栄したフェニキア人の章からまず引き込まれる。交易品のやりとりから始まった物流はやがて、エネルギー源や文化、政治、宗教、情報、人さらには資本を動かす重要な要となって、国家のパワーの源泉となり、今のグローバル社会を形作ってきたことが17の章に分かれて解説されている。各章はトピックごとにコンパクトにまとめられており、とっつきやすく読みやすい。
航海法を制定していち早く海運の覇権を握ったイギリスの先見の明や、コーヒーや茶の密輸で儲けたスウェーデンやフランス、国家なき民であるアルメニア人やセファルディムたちの目に見えない商業ネットワークなど、世界史の裏側で起きていた断片をつなぎ合わせるかのような本で、興味が尽きなかった。 -
一度読んだだけでは理解するのが難しい本でした。
数値的データが多くて、漢数字で書かれてるのが読みづらかったけど国家を超えた民族の活躍があり、物流が発展したことが興味深いなと思いました! -
【目次】(「BOOK」データベースより)
フェニキア人はなぜ地中海貿易で繁栄したのか/なぜ、東アジアはヨーロッパに先駆けて経済発展したのか/イスラーム王朝はいかにして国力を蓄積したのか/ヴァイキングはなぜハンザ同盟に敗れたか/なぜ中国は朝貢貿易により衰退したのか/地中海はなぜ衰退し、バルト海・北海沿岸諸国が台頭したのか/喜望峰ルートは、アジアと欧州の関係をどう変えたか/東インド会社は何をおこなったのか/オランダはなぜ世界で最初のヘゲモニー国家になれたのか/パクス・ブリタニカはなぜ実現したのか/国家なき民は世界史をどう変えたのか1-アルメニア人/国家なき民は世界史をどう変えたのか2-セファルディム/イギリスの「茶の文化」はいかにしてつくられたのか/なぜイギリスで世界最初の工業化(産業革命)が生じたのか/アメリカの「海上のフロンティア」とは/一九世紀、なぜ西欧とアジアの経済力に大差がついたのか/社会主義はなぜ衰退したのか -
文章の癖が強くて読みづらい
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面白い、とか面白くない、以前にもっと世界史を勉強しないと理解出来ないな……という部分が多い本でした。私の知識不足が問題でしたね。
解らないなりにも、ヴェネチアの森林伐採による資源不足の事や、教科書で名前くらいしか知らなかった東インド会社の事、スウェーデンの茶の輸出入の事は興味深かったです。 -
歴史学者が解説する、物流を切り口に世界史を読み解く本。世界史=覇権を握った国々の歴史であり、国力の源泉は経済力なので、視点を変えて物流目線で歴史を眺めるのも興味深いのです。
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