- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569848563
作品紹介・あらすじ
●威圧的、話を聞かない、権力に従順――自覚症状ナシ!
●男女問わず日本全国に蔓延する「おっさん思考」の正体とは?
●5人の識者と語り合う「男社会の価値観」の行方
「おっさんは、私だった」。かつてアナウンサーとして活躍し、現在はエッセイストとして活動する著者は、ある経験を契機に、これまで忌み嫌っていた「おっさん的な感性」――独善的で想像力に欠け、ハラスメントや差別に無自覚である性質――が自分の中にも深く刻まれていることに気づく。
この“おっさん性”は、男女問わず多くの人々に深く染みついているのではないか――。本書はそんな日本社会に染みついた“おっさん性”について考察した、著者と5人の識者との対話集である。
ハラスメント、同調圧力――男も女も生きづらさを抱え、心を殺さねば生き延びられない“おっさん社会”から脱却するためのヒントがここにある。
感想・レビュー・書評
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薄っぺらい批評家による感情論的対談本と思ってサラサラページを捲っていると、後半でグッと面白くなる。それは著者の小島慶子が自身の体験を語り、なぜ「おっさん論」にこだわるのかが明かされるから。人は、二次的な話より、一次的な原典を聞く方が感情が動く生き者だろう。生々しさにこそ教訓がある。
平野啓一郎との対談後、小島慶子が語った事。それは、個人的な話ではあるがと、自身が第一子を産んだ後、夫から性感染症をうつされた傷を負っているのだという話。不安障害となり、被害感情と同時に「私には復讐する権利があるのだ」と言う強い暴力衝動が沸き上がったのだと。それをエスカレートしないように制御する必要があった。許し、忘れようと努めた。一方、夫は自分がしたことについて思考停止で凌ごうと。夫は、不安を言語化せず、なかったことにするというやり方が身に付いてしまっているようだ。男とはこういうものだ、という繰り返し学習したことの結果だ。かく言う小島慶子自身も、自分が何を正しさとして学習してきたのかと悩む。小島によるジェンダー論の本質をついたようなエピソードだったと思った。
言語化が必要、言語化を絶対善とする思想は安易。しかし言語化にも良い点はあり、その源流には、社会学習による意識の洗脳状態を透かす事ができる。
こと夫婦間の性に関して言えば、これは相互支配や所有の問題ではないか。小島も結婚していなければ、夫の放埒ぶりに関心など抱かない。つまり、所有した夫に性の自由は許せない、という点が根本にあり、これはジェンダー論からはズレる。パートナーの性行動には厳しいが、その他大勢の男の行為には大して関心はない。夫婦の関係において、どうあって欲しいかという悩みは、小島以外にも共通する所もあるだろうが、女性の社会的地位とは異なる論点だ。
これをズバッと指摘したのが、上野千鶴子。小島の考えるおっさん性という俗語を否定し、それはおっさんがどうこうと言う問題ではなく、エリート女の宿痾だと。上野千鶴子は言う。私が相手を所有する権利もないし、相手が私を所有する権利もないって思っている人間だから。自分の体は自分のものだから、と。この観点が無ければ、ジェンダー論はマウント合戦のシーソーゲームを繰り返すだけ。男と女は永遠にバランスしない。
上野千鶴子の言葉が胸に刺さる。二個目のものは、東大入学式の祝辞だ。感銘を受けた。
ー そんな気休め言わないでよって思うかもしれないけれど、歳をとって自分の限界や弱さがわかってくると、せめて気休めぐらい言ってよって思うようになった。辛い時に、世間は君の才能が理解できないんだねって言ってくれた人がいて、素人だから言えるんだけど、無条件に信じてくれる男が世界に1人でもいるのってすごい幸せなこと。
ー あなたたちの頑張りをどうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれない人々を貶めるためにではなく、そういう人々を助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支えあって生きてください。
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とげとげ。さん『夫ですが会社辞めました』の次に読んだのは
全くの偶然です。
41歳で一家の大黒柱となった小島慶子さんが気になり
彼女の本はほとんど読んでいる私。
彼女が文筆家として成功しているのは無職夫のおかげでもあると思っているのです。
未だエア離婚中だそうです。
もちろん彼女の話も面白かったし
清田隆之さん(文筆業)
多賀太さん(関西大学教授)
熊谷晋一郎さん(小児科医)
平野啓一郎さん(小説家)
上野千鶴子さん(社会学者)
のお話もとても良かったです。
でもこのタイトルはなんでしょう。
ここで言う「おっさん」とは
「おっさん性」「おっさん的」「おっさん化」などにあるように、女性にもあったりアップデートされているものなんです。
当然この本の中には何度も出てきます。
でももっと的を得た綺麗な単語があるのではないでしょうか。
この言葉が優れたこの本の質を下げていると思いました。
小島慶子さんの名前が無ければ読みませんでした。
逆に彼女の名前にはひかれなくても
このタイトルで読んでみようと思う人は多いのかしら? -
タイトルも内容も衝撃的。
だけど、性別に拘らず誰もが抱える生きづらさをリアルに描いている。
と同時に、著者の問題提起と強い課題感が伝わってくる。
弱さを需要し、弱者が弱者のまま尊重されること、日本社会とは程遠い価値観。
そうしたステレオタイプに、様々な角度から切り込む一冊。
自分の中にも様々な偏見が潜んでいて、子供の時から刷り込まれた価値観を見つめるきっかけになった。 -
とても興味深い内容でした。
おっさん社会というワードは強烈だけど、日本に根付いている保守的な病理(家父長制、男尊女卑等)のことなんだね。日本社会がこのおっさんOSの上でオペレートされていて、男性はもちろん女性の中にもこの感覚はあって。無意識の刷り込みってあるよなぁ。
女性にとってこの社会はどうしてこうも生きづらいのか。読んでいくと腑に落ちることがたくさんありました。男尊女卑的なことは許せないけど、その根源に男性のしんどさがあるのでは?というのはなるほどです。どんなに理不尽な仕事でも働き続け、生活費を稼ぎ続けなければならないというプレッシャー、足枷を生涯背負うしんどさ。弱音を吐けないと思っているのでストレスが溜まって、それが女性に向いてしまう人もいる…。
気づきは色々あって興味深かったけど、ではどうすればいいんだろう…という解決策には至らず。ひとりひとりが気づいて考えてみるところからかな。道はまだ遠い。それでも昔よりはだいぶ感覚も変わってきてるし、少しずつ日本社会も良くなってきていると信じたいよ。
小島慶子さんの問題意識と書くことの覚悟を感じさせた一冊。 -
全く共感できず。ここ数年で多様性のあり方ががらりと変わっているからかな。
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著者の小島慶子さんは元TBSアナウンサー、今はフリーで活動中ですが、その小島さんと5人の識者の方々(清田隆之さん・多賀太さん・熊谷晋一郎さん・平野啓一郎さん・上野千鶴子さん)との対談集です。
テーマは、現世に蔓延る“おっさん性”。
正直なところ、小島さんが提起している議論になかなか没入できませんでしたが、「男性社会の価値観」が生起させる不合理なことがらをはじめとした様々な“おっさん社会”をテーマにしたやりとりには、単なる「男性社会批判」に止まらない面白い論点やコメントが記されていました。 -
なんか難しい内容
もっと砕けた話を期待したが、
期待外れでした。
内容が理解できなかった。 -
"おっさん社会が生きづらい"と言う立場で読んでみたけど、実は自分が"おっさん的"であることがわかった。だから今まで解決策が見つけられずにいたんだと。
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面白かったです。
特に最初の清田隆之さんとの対談が。
目の前の事実から目を背ける"おっさん性"についての考察が興味深かった。
上野千鶴子先生と平野啓一郎さんとの対談もとても良かったです。
小島慶子さんの夫についてのエピソードはかなり赤裸々で「大丈夫?」と思ってしまいました。