[新訳]ローマ帝国衰亡史 (PHP文庫)

制作 : 中倉 玄喜 
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  • Amazon.co.jp ・本 (800ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569900636

作品紹介・あらすじ

ローマ帝国1500年の歩みを描いた名著を一冊にまとめたダイジェスト版。希代の歴史家が綴る文明盛衰の物語をわかりやすい新訳で読む。

感想・レビュー・書評

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  •  まさに修行のような読書でした笑。
     500ページに迫る大著。洞察にあふれる記述に驚きの声をあげることもある一方、ややもすればダラダラと続く人物描写が眠気を大いに誘う事もありました。毎日70ページとして1週間でスケジューリングするも果たせず、途中でリスケを敢行、結局読了まで12日程かかりました笑。

    <一番の売りは、その生き生きとした描写>
     本作の一番の特徴は何といっても人物描写のビビッドさだと思います。各皇帝の描写も良かったです。コンスタンティヌス帝とか。ただ、いかんせん人数が多く印象に残りづらい。そのなかで一番瞠目したのはユスティニアヌス帝の妃となったテオドラ。若くして父母を亡くし、体を売らされ人々に供され、アレクサンドリア(エジプト)まで流れ着くも再び美貌と知性を駆使しコンスタンティノープルまで舞い戻り、皇帝の妃に座り、政治までしてしまう。すごい。
     以前佐藤賢一氏のフランス史の本を読んだから非常に面白かったのですが、その本もまた、筆者があたかも宮殿の柱の陰からのぞき見しているかのような臨場感を持っていました。
     作者ギボンが今から200年以上前の人間であることを考えるとちょっと驚きました。昔の文章というと辛気臭いイメージがありましたが、全くそんなことはありません。恐らく訳者の力も大きいのでしょう。

    <ローマ衰退の理由>
     衰亡史というタイトルであるので、衰退に至る道についての記述も多い。いわゆる「パンとサーカス」(享楽化)や国境線が膨張しすぎた点とか(現代中国を彷彿とさせます)。個人的に発見だったのは、当時は蛮族と呼ばれたゲルマン人。ゲルマン大移動などは習いましたが、ローマ人は、傭兵として使っていた彼らを最後まで異物化・差別化したことで彼らの逆上を促したそうです(P.371)。なんか、外国人労働者を毛嫌いする日本人とすこしダブります。
     その他色々書いてありますが、論文のように因果を明示するスタイルではないので、ローマ衰亡の理由は端的には複合的理由と纏めておきます笑。個人的には衰亡なんて諸行無常・栄枯盛衰だろうと仏教的無常観が一番しっくりきますが。

     日本が今後どうなるのかという観点から読書をしたとき、衰退は避けられると猛々しく叫ぶ著作(『なぜ国家は衰退するのか』)や、覇権と取らずに細々とやっていく(『「覇権」で読み解けば世界史がわかる』)など積極的消極策ともいうべき案も見ました。国のかじ取りをする政治家や官僚はどのように考えているか気になります。

    <編訳よしあし>
     もう一つ加えておきますと、本作品は抄訳(編訳)でして、完全版ではありません。500頁弱の大著ですが。
     世界史業界ではギボンは超有名人だと思いますので、完全版を制覇したいというSっ気の強い御仁もいらっしゃるかと思います。Amazon調べたら、ちくま文庫で完訳が10巻セットで\15,290- なかなかのお値段とボリュームです。
     時間の限られたサラリーマンには本作(編訳版)で十分と私は思います。読んでみて思いましたが、抄訳でも本当に長くて、それなりに辛いのです。他方、訳者による解説・補足が章毎についており、これがローマ史の理解を大いに促します。これは良い点。
     一点ちょっと残念だったのは五賢帝。世界史ではさも重要かのごとく教わりますが相当さらっと終わってしまった。これが編訳の為なのか、原作がこうなのかは不明です。

    <おわりに>
     改めて本作を振り返りますと、歴史好きとしては非常に楽しめました。いわゆる政治史を追うだけだと歴史は大抵つまらないのですが、著者の力量でしょうか、皇帝や取り巻きが実に生き生きと描かれておりました。
     私のような歴史好きにはもちろんのこと、旅行好きの方も勉強してから言ったらゼッタイもっと旅行が楽しくなると思います。いまコロナですが、旅行ができるようになったらローマやイスタンブールにに絶対行きたいです笑。それと、本作は歴史業界のビッグネーム、そして大著ですので、読後に相応の達成感も味わえます。

  • 山川の世界史でも5〜6ページしか扱われないアウグストゥス以降、特に五賢帝〜西ローマ帝国滅亡までを中心に描かれた歴史の古典。ヘロドトスにこそ遠く及ばないものの、250年前の英国の歴史書が未だに日本語に訳されて読まれると言うのはものすごい。時間の暴力に耐えられるだけの内容が詰まっている。
    最近こそ時代解釈を中心に置いた研究が主流だが、本来歴史というものはこういう教訓を活かすことが目的だったはず。こうしてみると現代にも通じる部分がたくさんある。「およそ市民というものは、現実の危険から離れているときにはきわめて勇敢なものである。」この辺りは誠に耳が痛い。
    登場人物の名前が覚えにくいのが玉に瑕だが、内容は非常に機知に富み面白い。と同時に他の国の通史に全く触れずに歴史好きを名乗っていた自分が恥ずかしくなる。

  • ギボンの新訳。文庫サイズで言葉も平易なので大変読みやすかったです。

  • 放送大学

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