ホテル・ピーベリー

著者 :
  • 双葉社
3.21
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  • (50)
  • (7)
本棚登録 : 876
感想 : 170
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575237481

作品紹介・あらすじ

不祥事で若くして教師の職を追われ、抜け殻のようになっていた木崎淳平は、友人のすすめでハワイ島にやってきた。宿泊先は友人と同じ「ホテル・ピーベリー」。なぜか"滞在できるのは一度きり。リピーターはなし"というルールがあるという。日本人がオーナーで、妻の和美が、実質仕切っているらしい。同じ便で来た若い女性も、先客の男性3人もみな、日本人の旅行者だった。ある日、キラウェア火山を見に行った後に発熱した淳平は、和美と接近する。世界の気候区のうち、存在しないのは2つだけというこの表情豊かな島で、まるで熱がいつまでも醒めないかのごとく、現実とも思えない事態が立て続けに起こる。特異すぎる非日常。愛情、苦しみ、喜び、嫉妬-人間味豊かな、活力ある感情を淳平はふたたび取り戻していくが…。著者渾身の傑作ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  •  ハワイ島のヒロという町にあるホテル・ピーベリー。この客室6つの小さなホテルは日本人のオーナー夫妻だけで切り盛りするため、リーズナブルな料金で長期滞在が可能だ。
     ただしこのホテルには、リピーターは受け付けないという不思議なルールがある。

     生涯で1度しか泊まれないホテル。
     この、観光地から離れた小さな町の小さなリゾートホテルで起こる不可解な出来事を描く、ヒューマンサスペンス。

     なお物語は、主人公の木崎淳平の視点で語られる。
             ◇
     飛行機からタラップに出たぼくは戸惑った。
     だだっ広い滑走路とフェンスのほかは何もない。見えるのは遥か遠くまで続く、建物ひとつない大地と重く垂れ込めた雲だけだ。
     ゲートをくぐり荷物を受け取って、ヒロ空港を出た。入国手続はホノルルで済ませているので、ここまで10分ほどだ。

     ホテルからの迎えを待っていると、白いバンがスッと目の前で停まり、 40歳ぐらいの女性が窓から顔を出す。
    「木崎くん?」
    「あ、はい、そうです」
     後部座席に乗り込んで出発を待っていると、若い女性が大きなスーツケースを転がしてやってきた。
    「桑島さん?」
    「ホテル・ピーベリーの方ですか? よかった」
     そう言って乗り込もうとした彼女は先客のぼくを見てハッとする。マイナーな小さなホテルなので、客は自分だけだと思っていたらしい。金髪頭のぼくを見て警戒したのか、桑島と呼ばれた女性はぼくの横を避け前のシートに体を滑り込ませた。

     運転席から、木崎淳平と桑島七生という2人の名を確認した女性は瀬尾和美と名乗り、何もないのがここのいいところだと言って車を発進させた。(第1章) 全7章。

         * * * * *

     最初からモヤモヤした空気が漂う展開でした。それは登場人物に何か得体のしれない部分があるように感じられるから。

     なんと言っても主人公の木崎淳平が気持ち悪い。

     淳平が5ヶ月前に辞すことになった小学校教師の職。その理由が……。

     サキがクラスで浮いてしまうぐらいの大人っぽさを持つ美少女であっても生徒は生徒。好きだと言われて舞い上がるのはともかく、将来の約束をするのは軽率に過ぎるし、修学旅行でサキのスナップを異常なほど撮りまくるのはなあ……。

     この一件が露見し、淳平は退職を余儀なくされたばかりかサキにまで気味悪がられて距離を置かれてしまうのですが、同情する気になりませんでした。

     また、和美と関係を持ってしまうのもいただけない。相手が人妻だからとかひと回り年上だからとかいう理由よりも、スレンダーな和美を見て欲情する淳平の意識下にサキがいるところがやはり怖い。

     さらに淳平が謎解きをして見せる終盤。
     警察に出頭すると言う和美に対し、淳平は好意的な言動をとるのですが、その裏に和美への執着のようなものを感じて、やはり気持ち悪かったです。

     その他のモヤモヤについては、ホテルの謎ルールにしてもホテルオーナー ( 和美の夫 ) が無愛想すぎる理由にしても、宿泊客2人の不穏な発言と不審死にしても、すべて伏線なので納得できるものでしたが、個人的にはスッキリしないミステリーだったと思います。

  • ぼく・木崎淳平は、小学校教諭を辞めて、傷心を癒す為、ハワイ島を訪れた。

    日本人夫婦が経営する「ホテル・ピーベリー」は、民宿風の古びた佇まいで、客室は、数部屋しかなく、長期滞在者がほとんどで、一度利用した人は、二度と利用できない、リピーター不可のホテルであった。

    時間がゆっくり流れるような、島の生活に、徐々に馴染んで行くぼく。

    しかし、ホテルのプールで、宿泊客が溺死。バイク事故死。と続けて不可解な事件が発生する。

    一旦、日本に帰って、謎を解いた、木崎が、四月後に再びハワイ島を訪れるが、失業したままか。仕事はどうしたんだろうか。

  • 主人公には共感できないけど、ミステリー仕立ての展開が興味深い作品。
    やんごとない不始末の所為で小学校の教師を辞めざるを得なかった木崎淳平は傷心を抱えて友人の杉下から勧められていたハワイ島の小さな小さなホテルに3ヵ月リミットで滞在することにした。
    このホテルの不文律はリピート宿泊御法度で、部屋数も6部屋しか無い。
    寂しくて静かな環境と互いに没干渉のペース、そしてホテルの奥さんの気どらない親切なサービスが心地よい。しかし同宿者が続けて亡くなる事故?が起きるあたりから雲行きが怪しくなってくる。ここらから優柔不断で自己中で困ったクンの木崎が期せずして名探偵と化すくだりは面白い♪さらりと読めます。

  • 主人公の木崎淳平は教師の職を辞しその後何をするでもなく毎日をなげやりに過ごしていた…そんな姿を心配した友人が、ハワイ島の「ホテル・ピーベリー」を紹介してくれた。このホテルに滞在できるのは一度のみ、リピーターは受け付けない…そんなルールがあると聞くが、木崎淳平はこのホテルに滞在してみることにした。オーナーの妻である和美が仕切るホテルは居心地もよく、日常から解き放たれた木崎淳平はホテルでの生活に馴染んでいくのだが…同じ宿泊客2人が不審死を遂げる…。
    読んでみて「ときどき旅に出るカフェ」とは全く違う読後感を持ちました。すらすら読めて、またはハワイの良いところ満載の作品でそういうところはすごくよかったです!終盤で「ホテル・ピーベリー」の謎が解き明かされますが、この後の木崎淳平がどんな生き方をするのかも気になりました。

  • 主人公・木崎の性格があまりにも自分勝手&ネガティブで読んでてイライラ…

    ホテルオーナーの和美もよく分からない。
    木崎と関係を持ったのは、この物語の真相と何か関わりがあるのかと思ってたけど、あまり関係なさそうだし。。

    和美はこのホテルに来た若い男性の中で気に入った人に目をつけて、木崎のように体の関係を迫っていたのだろうか???
    一体、なんでこんなたぶらかすような事をしたのか謎過ぎた。

    青柳もなかなかいい登場の仕方で、良い存在感だったのになんだか呆気なく死んでしまって、謎の人物かと思いきや普通に両親来るし、もったいないキャラだった。

    確かに、このホテルの真相は少し驚いたけど、うーん、もうちょい不気味さが欲しかったかなぁ…

    ハワイの素晴らしさはすごく伝わった!

  • 3.9
    途中まではかなり面白かった。
    後半、軽くドロっとした感じが出てきて、重くなってきた、その割に最後はあっさりで、え?これで終わり??という感じが否めなかった。

  • 主人公、引き返した割には結末がゆるい。すべてが異国ムードのせいなのか?殺人などなかったかのような人達。

  • ハワイ島
    穏やかな気候と思いきや、星空を見るにはしっかりと防寒が必要なのにビックリ!

    ピーベリーは美味しく飲んだことがあるけど、確かに小さくて丸くて、そういうわけだったんだ!

    癒やしの旅から一転、
    まさかの事件が・・・・
    凄いミステリーだった!

  • ホテル・ピーベリー
    近藤史恵

    ✁┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    半分くらい読むまで事件が起きなかったので、ミステリーということを忘れてた。

    途中から後半にかけてなーんか気持ち悪かった。主人公の性癖というか、10歳の子を好きになったところよりも、和美への気持ちの方が嫌悪感があった。「女性として魅力を感じない」と心に思いながらも関係を持ったり、それを居心地がいいと関係は続いて、その旦那さんの店にも平気で顔を出せる面の厚さ。もう店には来るなと言われた時の被害者ぶってる感じがゾワッとなった。
    結局、色々バレたらまずい意味での店には来るなだったけど、こいつ生理的に無理って思った。

    リピーターを受け付けない宿って不思議だなぁって思ったけど、誰かの子供がいい思い出を胸に自分で旅行することもあるだろうし、懐かしさから訪ねることもないともいえない。だからいつか誰かしらにバレたとは思う。
    っていうか、近所付き合いとかないんだろうか…

    友人の杉下は彼がどうして仕事を辞めたのか知ってたのかな。それ知ってて、友人続けてくれてるなら良い奴だな。

    ハワイには行ったことがないけど情景が思い浮かべられて、観光に行きたくなった。

    2022/09/25読了(図書館)

  • 長すぎる夏休みに蝕まれていたのは結局誰?
    疲れた頭で入れ替わりを理解するのがしんどかった。ミスリードに思いっきりついて行きそうになったし。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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