週末は、おくのほそ道。 (双葉文庫 お 41-02)

著者 :
  • 双葉社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575527087

作品紹介・あらすじ

高校教員の美穂は30歳。仕事に追われ疲労困憊の日々、恋人との関係もうまくいっていない。そんなある日、高校時代に「俳句甲子園」に出場し奮闘した友人・空と再会した美穂は、昔から憧れていた松尾芭蕉の「おくのほそ道」を旅しようと提案する。週末ごとに、白河、松島、平泉…と芭蕉達が辿った風光明媚な地を女ふたりで旅しながら、日常を離れ心を休めていく美穂。そして旅に同行してくれた空には、この旅の中で「会いたい人」がいるようで――。古典から現代への歴史を辿りながら、生きる立場の違う人間の再生を描いた物語。

感想・レビュー・書評

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  • 書店に平積されていた文庫本、知らない作家さんでしたが何気にタイトルみてジャケ買いしてしまいました。
    週末に奥の細道を追体験しようと名所旧跡を旅する話なんですけど、私も30代の時にふと思いたって「更科紀行」とか「笈の小文」のルートを辿ったことあるので無茶共感してしまいました。芭蕉のBLについては「笈の小文」が秀でてると思うのですが、「奥の細道」は芭蕉の紀行文になるのかな。白河の関以北は当時もあまり知られてない最果て感あったし追体験したく思ってたんです。今ならばフォト撮ったりして手軽にSNSにUPしたりできるわけですが、江戸時代では、俳句の中に風景や心情を封じ込めることがフォトの役割をしてた気がしてて、芭蕉の句はカメラで写す以上に特徴や心情がデフォルメして映えさせる力があったようで実際よりも凄みをもって脳裏に刻まれるんですよね。そんな感じでみると奥の細道は江戸時代のガイドブックだったんじゃないかって思いながら眺めてました。
    高校時代の友人だった美穂と空、14年ぶりに偶然SNSで繋がって一緒に旅をするなんて素敵な設定でしたが、高校教師をしている美穂とバイト店員の空、生活レベルが違うこととか忘れがちで相手に無理させちゃったり、ちぐはぐしながらも、奥の細道の旅は途中飛ばしちゃったところもあるけど。大垣まで辿り着いてここからが始まりなんだと、淀んでいた日常にも浄化作用があったようでスッキリした読後感に包まれました。

  • 読み終わって『遥かに届くきみの聲』の作者さんであることに気付く。

    中学時代の友人二人が、週末を利用して、おくのほそ道の軌跡を辿る物語。

    バランスの難しい作品で、最初はおくのほそ道パートの楽しさがあるのだが、二人それぞれに持つ悩みの比重が大きいばかりに、クライマックスに向かうにつれて、自分の人生を切り拓いていくことというテーマに芭蕉が引きずられている感じもする。

  • 面白かった〜。
    松尾芭蕉が辿った道を学生時代の友人と一緒に巡る旅。
    自分も松尾芭蕉が訪れた場所に何ヶ所か行ったことがあり、少し興味があったので
    手に取りました。
    時折出てくる俳句が、どういう情景で詠まれたものなのか解説的な文も出てくるので
    すごいよかった。
    国語の授業でやるけど、全然覚えてなくて
    日本人なのに知らないこともたくさんだなと思いながら…
    途中から、主人公2人の関係性にフォーカスされてくるのだけど、
    くどくなくて大人の友情って感じが
    よかった。
    本の厚さも読みやすくて読後感が
    あったかい気持ちにしてくれます。

  • 高校時代の友達だった美穂と空、14年ぶりに偶然SNSで出会い、
    美穂が昔から憧れていた松尾芭蕉の「おくのほそ道」を一緒に旅をするという
    一度は誰もがしてみたい理想な物語だと読み進めていましたが、
    高校教師をしている美穂とバイト店員の空というお互いの生活レベルや環境などが違うことが徐々に分かりはじめ、
    二人の旅が思いがけない方向へと進んでいく物語だったのでかなり意外性のある内容でした。

    美穂は高校教師として働き、恋人もいて空から見れば
    憧れな生活をしていると思われているけれど、
    実際の所は教師として疲労困憊している所もあったり、
    恋人といてもぎくしゃくとして本来の自分を出せていなかったりと
    かなり心身共にいっぱいいっぱいな状況があらゆるところで見られています。
    常に周りと意識して自分らしさを出せなていないなと思いました。

    そんな美穂を見ながら、本当の自分を出すことが出来ずにいた空も
    また今まで知っていた過去とは違っていていわるゆる普通の道とは違った
    人生を送りながらも懸命に生きていたことが分かっていきます。
    それをいくら友達だったからといっても美穂にも事実を
    告げるには時間を要することは仕方のなかったことなのだとこの場合は思いました。

    けれど旅をしながら徐々にお互いの心に寄り添っていくうちに、
    本当のことをお互いに告げられていき、お互いの人生の道を切り開いていった後は爽快さがありました。
    時間が経過しても、それぞれの歩いていた道が違っていても、
    また元の学生時代のようにお互いの気持ちを察しながら
    また人生を歩いていく様子にはとても元気づけられて、
    良い読後感になりました。

    とかく女友達の友情は成立しないと言われがちですが、
    この作品を読んだらそんなことはなく、むしろ女友達も
    しっかり友情を育むことが出来ると言えると思いました。

    作品中に出てくる松尾芭蕉の俳句や奥の細道での名物や
    グルメがふんだんに出てくるので、
    同じような旅をしてみたいなという思いになりました。

    旅行気分を味わいながら、立場の違う人生の再生を味わえた作品でした。

  • 高校の同級生とSNSで14年ぶりの偶然の再会を果たし、週末だけの奥の細道二人旅が始まる。

    ストーリーは大体想像通りに進行するけど、何となく爽やかさが残る読後感。色々なものを手離しても前を向ける生き方が清々しいと思う。

  • 最終地点は大垣でした。

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著者プロフィール

1978年、新潟県生まれ。作家、成蹊大学文学部准教授。専攻は日本近代文学。小説に『遥かに届くきみの聲』(双葉社)、『小説 牡丹灯籠』(二見書房)、著書に『言語と思想の言説――近代文学成立期における山田美妙とその周辺』(笠間書院)、『中高生のための本の読み方――読書案内・ブックトーク・PISA型読解』(ひつじ書房)、共編著に『ライトノベル・フロントライン』全3巻、『小説の生存戦略――ライトノベル・メディア・ジェンダー』(いずれも青弓社)など。

「2023年 『落語と小説の近代 文学で「人情」を描く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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