- Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
- / ISBN・EAN: 9784580821019
作品紹介・あらすじ
サムはうずくまって新聞記事をじっと見つめた。大きな活字の下に、男の子の写真がある。サムははっと息をのんだ。すごく小さいけれどこれはぼくじゃないか!三歳くらいのときの!なんで新聞なんかに出ているんだろう?サムは指で文字を追った。でもほとんど読めない。読めない理由は、サムには読み書きがうまくできないディスレクシアという学習障害があるからだ。それでもなんとか「行方不明」という文字がわかった。えっ!行方不明?ぼくが行方不明だということ?-。
感想・レビュー・書評
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主人公はディスクレシアの少年。屋根裏で見つけたとある新聞記事。なんとそこには幼い頃の自分が行方不明という記事が書かれていた……自分は何者なのかを探す。
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サムが屋根裏で見付けた新聞、そこには幼い頃のサムの写真が載っていた。識字障害のあるサムは、そこに書いてあることがほとんど読めない。しかし「行方不明」という言葉はわかった。自分が行方不明になっていた? サムは自分の過去を探るために、転校生のキャロラインに協力を求めるのだった。
断片的な記憶から過去を探るミステリ的趣向に、まず興味がそそられます。
夢に見る水の記憶、11に対する恐怖、白いキッチン、こわい女。自分は祖父と血が繋がっていないのか。本当のことを知ったら祖父との関係も壊れてしまうのか。
そして字の読み書きができないサムと、転校を繰り返すキャロラインの孤独と孤独の結びつき。
最初は記事を読んでもらうだけだった。すぐに別れが来るから友達は作らないつもりだった。でも掛け替えのない友達以上の感情が生まれようとしていた。
そのふたつの流れが交差し合いながら物語は進んでいきます。
そこにサムを見守る愛に満ちた大人の眼差しが加わります。
サムの全てを包み込んでくれる祖父の想い。サムのことを家族同然に扱ってくれる隣人。サムに新しい世界を与えてくれようとする先生。
字が読めないことでサムがつらい思いをしているのは知っているから、そのつらい思いを越えるものを与えてくれる大人たち。
自分を知るということは、自分の周りにいる人のことを知るということ。サムが過去の真実を知ったとき、大人たちの愛に満ちた眼差しを強く感じるのです。 -
サムは11歳、世界が今までとは違って見えてくる…。
思春期の漠然とした不安、ためらい、希望を、優しく美しく描いたお話。 -
主人公のサムはディスクレシアという学習障害を抱えている。彼には文字が糸がもじゃもじゃと絡まったようにしか見えない。読めるのはわずかな単語だけ。ある日、サムは自分の誕生日のプレゼントが隠されている場所を探していて、屋根裏部屋に入り古い新聞記事を見つける。そこには3歳くらいの自分の写真と行方不明という文字だけが読み取れた。いったい自分は誰なのか。一緒に暮らしている祖父は本当に血のつながった祖父なのか?新聞を読めないサムは転校生のキャロラインに協力してもらい、自分の謎を探そうとするが…。
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主人公がLD(学習障害)のある男の子、という設定ですが、この内容だとあえてそういう設定にしなくてもかけたんじゃないかなと思います。が、作者の意図としてLDというものを知ってほしかったのかな、という事を考えます。ペアになる女の子も、かなり変わっていると言ってよい格好で、なんで袖口にティシュなのかは意味が分かりませんでした。すぐ使うから?ざっと通して読んだので上手く理解できていないのかもしれませんが。ラストは良いな、と思いました。
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2013/05/30
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中級~上級:11歳サムは読字障害をもっている。自分の生い立ちを追いかけることから、親友という存在をみつけ前へと進みはじめる。
作者は、長年 教師という職業についていた。子どもとの関わりの中から後味のよい子どもに向けたメッセージを、児童文学にたくす。 -
サムの11歳の誕生日、祖父のマックが隠したはずのプレゼントを探していて、
屋根裏で見つけたものは、古い箱と、そこに挟まれていた新聞の記事。
その新聞には『行方不明』『サム・ベル』の文字と幼い頃の自分の
顔写真が載っていた。
自分はマックの本当の孫ではないのかもしれない、
という疑惑がサムの心をよぎった。
サムはディスクレシアという、文字を読めない学習障害を持っていたので、
新聞記事を詳しく読むことができなかった。
この記事を読んでくれそうで、秘密を守れそうな子を探していたサムは、
最近転校してきたキャロラインに目を付けた。
キャロラインはサムがディスクレシアと知っても、普段と態度を変えずに、
快く相談にのってくれた。
マックに気付かれないように、サムの過去を探る二人には、
友情が芽ばえはじめていた。
暗い話になるのかなと思いきや、サムの周りの大人たちが良い人ばかりで、
読後感がよかったです。 -
サムは両親を早くに亡くし、祖父のマックと暮らしてる。誕生日の前の日、サムはマックや仲の良い隣人たちが隠した自分へのプレゼントを見つけ出そうと、屋根裏部屋にこっそり上っていった。しかし、そこで見つけたのは3歳の時に自分が行方不明になった、という新聞記事だった…
過去を忘れていること、そしてディスクレシアという学習障害を持っていること、この二つにを元にサムのアイデンティティを再構築する物語。サムは謎に満ちた時分の過去を知りたいと思いつつ、その過去を知ることで今の時分の家族との絆、幸せな居場所を失うんではないか、と言う不安に苛まれます。一方、ディスクレシアがきっかけとなり、サムはキャロラインという女の子と親密になっていきます。キャロラインとともに過去の謎を解き、そして学校の課題である城作りを進めることでキャロラインとは親しくなるものの、同時に自分の家族という足場が崩れる不安も増していく。この狭間に読み手自身もはまりこみ、サムの心情に共鳴していきます。一方、キャロラインもまた一つの悲しみ、不安を抱えている。ここまで書くと不安に満ちた物語のように思えるかもしれませんが、…とここは書かずにおいた方がいいかな?