- Amazon.co.jp ・本 (16ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582207170
作品紹介・あらすじ
「だるまちゃん」シリーズで知られる絵本作家の原点となった紙芝居作品から、長きにわたる創作活動を一堂に紹介する回顧展の公式図録。未発表のスケッチや草稿など多数収録。
感想・レビュー・書評
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かこさとしさんの本を読まずに大人になる子って、この国にいるんだろうか。
生涯に600点以上もの作品を出したという方だ。
私が生まれたときはすでに「だるまちゃん」のシリーズが出ていた。
友だちの「てんぐちゃん」の持ち物に憧れるだるまちゃん。
おねだりされるたびに、ありったけのモノを用意して願いを叶えようとするお父さんだが、だるまちゃんは結局自分で作り出してしまう。
何でも欲しがるだるまちゃんのプチ悪ぶりと、お父さんが出すいっぱいのモノが大好きで、何度も何度も読んだ。
展覧会の公式図録として制作された本書。
あらためて読んでみると、かこさんの高い描画力に驚かされる。
特に人物画に顕著で、身近な人たちに輝くものを見つけるとそれを絵にして残したいという強い思いがあったのだろう。水彩の筆致が、まるで油絵と見まごうほどの力強さで訴えてくる。
ところが絵本では内容によって絵を描き分け、時にはわざと下手に描くこともしたという。
絵がうますぎると、子どもたちはそちらに目が行ってしまう。
絵と文がしっかりと合わさってバランスがとれていること。
科学絵本が多いかこさんの作品では、特に細心の注意がはらわれた。
絵は自己表現などではなく、子どもたちにお話を伝えるためのもの。
たゆまぬ研究と研鑽の結果、ひとつひとつの本が生まれていたのだ。
子どもたちの本のために捧げた創作の原点。
それは、戦争による傷跡だったという。
これからを生きる子どもたちには、世の中をきちんと見つめ、賢く健やかに育ってほしい。そのための手伝いをしたい。19歳のかこさんの決意は、生涯を支えることになる。
高いデッサン力を土台に、学びと遊びが見事にマッチした作品たちはここから生まれた。
18年の5月に亡くなられた時、その月のお話会で「だるまちゃん」の一冊を選んだ。
あと一冊は金字塔ともいえる「からすのぱんやさん」。
殆どの子たちにとって「思い出の一冊」なのか、大きな歓声があがった。
長いお話にも関わらずその日は特によく聞いてくれて、帰るとき走り寄ってきて「ありがとうございました!」と言われたときは胸がいっぱいになった。
かこさん、ありがとう。たくさんの素敵なお話を描いてくれて。
心が疲れたときに読む一冊に、かこさんの「うつくしい絵」がある。
子ども向けの美術本は売れないと、行く先々の出版社で断られたといういわくつきの本だ。
芸術家たちの魂に共鳴したかこさんの、これもまた心打たれる一冊。
未読の方はぜひ手に取ってみてください。 -
自叙伝、もしくは本人のエッセイ的なものかと思ってたが、実際はかこさとしの世界という展覧会の図録本。少し内容が薄くなってしまうのは図録本あるあるだよなー。けど逆にその情報量の少なさが読みやすく、カラスのパン屋さんやだるまちゃんしか知らない自分にもわかりやすくかこさとしさんの人生や著書を体系化して学ぶことができた。晩年にカラスのパン屋さんの続編が出てること知らなかったな…。
以前やなせたかしさんの本を読んだ時にも思ったことだが、この時代の児童文学や絵本の巨人達の志には頭が上がらない。 -
2022.03.29 #2022-010
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九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1331092 -
「かこさとしの世界展」の公式図録が本として出版されたもの。かこさんの生い立ちから絵本作家としての活動がまとまっている。
敗戦後、自分がいかに生きるべきかを考えた末、次代を担う子どもたちのためになることをしたいとセツルメント運動にかかわり、そこから紙芝居や玩具づくりをとおし、子どもたちの目線・気持ちを体得していったかこさん。だから、絵本も自分の表現の場としてあるのではなく、子どもたちのためにということを第一に考え作っていたのだという。絵のうまさに目を奪われないようあえて下手に描くようなこともあったのだとか。自分を抑え、相手のことを第一に考えることができる人って、かつてはけっこういたような気がする。かこさんのそうした姿勢が書中に収められている下絵とかからもよくわかる。構成にかなりの時間をかけていたそうで、それも子どもたちにどう受け止められるか、どうやったら楽しみながら興味をもってもらえるかを真摯に考えていた証。
書中で『からすのパンやさん』『どろぼうがっこう』『おたまじゃくしの101ちゃん』『かわ』といった数々の作品のページを引いて紹介されているけど、それが小さいのがちょっと残念。そして『にんじんばたけのパピプペポ』に全然触れられていなかったのが残念。
『だるまちゃんとうさぎちゃん』のページが転載されていたんだけど、そこで描かれているケーキが、小さい頃おいしそうだなと思っていたことを思い出した。何十年もたっているというのに覚えているもんだなあ。そのくらい印象的だったってことか。 -
読んで良かった
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ふむ
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セツルメントという、今で言うと子ども食堂のような活動があったことを知った。科学絵本はかなりハードルが高かったと思う。絵に関心が行き過ぎないように、絵のレベルを下げて描いた、ということに驚いた。
「絵は自己表現などではなく、子どもたちにお話を伝えるためのもの。」かこさんの絵は確実に子供にお話を伝えてくれましたよね。
この本読んでみたいです!
コメントありがとうございます!
ふふふ、同志発見!という気分です(*'▽')
かこさんの描く...
コメントありがとうございます!
ふふふ、同志発見!という気分です(*'▽')
かこさんの描く絵は隅々まで眺める楽しさがありますよね。
子どもというものを、本当によく観察していたのだと思います。
「自己表現ではない」という言葉、私もとても感動しました。
自己表現以外の何物でもない作家さん、画家さんもいっぱいいるからです。
reader93さんもぜひ手に取ってご覧になれますように。
コロナ禍が一向に終息せず気が抜けませんが、どうぞお元気でお過ごしくださいね。