徳川家康:境界の領主から天下人へ (中世から近世へ)

著者 :
  • 平凡社
3.83
  • (3)
  • (5)
  • (3)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 71
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582477313

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 家康以前の松平氏から、江戸幕府開府までをたどった本。国境の小さな国衆の存在だったものが、桶狭間で今川義元が討たれ、信長との同盟国となる。そして秀吉政権での地位向上、関ヶ原後には豊臣体制の解体、征夷大将軍に任官し江戸幕府へとつながる。近年の研究から新たな発見があり、今までの解釈とは違う歴史が見えてきます。秀吉政権の末期がいかに脆く、閉塞感のあったもであったのかということも思い知らされます。

  • 徳川家康の生涯に起こった数々の事件を2017年時点での最新の説を元に綴った一冊。
    江戸時代以降に描かれた通説となっていた家康神話(?)ではなく、事件当時の一次資料やそれに基づいた新説・新解釈をベースにそれぞれの事件を丁寧に説明している。
    通説で描かれた家康のイメージとはだいぶ違って、いかに彼が国衆、後に戦国大名として、時の権力に寄り添いながら徐々に権力を手にしていったかがよくわかる。

  • 徳川家康は、天下人になるべくしてなったのではなく、一個の大名として捉え直している。

  • 天下をとった家康――そのために従来、家康は天下を取るべくして取ったとする像が語られてきたが、実際にはどうだったのか。松平家はどのような経過を経て家康につながっていくのか。織豊政権にはどのような性格があり、その中で家康はどのような立場に立たされ、どのような方針をとったのか。近年の研究成果に基づき、従来の視点、俗説を排して「境界の領主」という視点から家康の実像に迫る。そこには数多の国衆、戦国大名、「境界の領主」たちと変わらない家康像が浮かび上がる。「歴史」を見る上でも示唆を与えてくれる良書。

  •  歴史学研究者の手による徳川家康の評伝は、本書刊行の少し前に笠谷和比古『徳川家康』(ミネルヴァ書房、2017年)が公刊されいるが、先行の同書は松平氏・徳川氏の由緒問題や豊臣賜姓問題、あるいは中近世移行期の農政や外交などの考証・解釈に疑問が多く、不満の多い内容であった。対して本書は、近年学界で隆盛の「境目」論による首尾一貫した視座、江戸時代以降に形成された家康神格化イメージに対する徹底した史料批判を元に、はるかに精緻で説得力のある叙述を展開している(ただし中・近世史間で議論・対立のある問題では完全に中世史サイドなので、近世史研究者側から当然批判はあろう)。惜しむらくは、対象時期が実質的に関ヶ原合戦・江戸開幕で終わっている点で、いずれ増補を期待したい。

  • 本書は、いまに至る研究の成果をふまえて、江戸開幕までの家康がたどった歩みを、彼が置かれていた実際の状況から見ていき、「松平・徳川中心史観」を排して、実像に迫ろうとするものである。(2017年刊)
    ・はじめにー家康像を見直す
    ・第一章 松平氏の時代ー三河国衆としての動き
    ・第二章 家康の再出発ー戦国大名徳川氏の誕生
    ・第三章 織田・武田両氏との狭間でー同盟・敵対と内紛の時代
    ・第四章 天正壬午の乱とその後ー信長死後の五ヵ国統治
    ・第五章 羽柴家康ー豊臣政権下の徳川氏
    ・第六章 江戸開幕への過程ー天下一統の行方
    ・終 章 家康の実像とその時代
    ・おわりに

    家康の75年の生涯を260ページあまりに収めようとすると、どうしても駆け足となってしまうのはやむを得ないところであるが、ところどころ従来の説が見直されている。
    近年の研究成果によると、家康が織田家の人質になったのは、広忠が信秀への降伏に追い込まれたためだというp41。背景にあるのは三河をめぐる織田と今川の争いであるが、なかなかに興味深い。
    信康事件についても、背景には、家康を中心とした対武田氏主戦派が進める路線に対する、家中からの反発があったとするp87。我々は、織田が勝ち武田が滅ぶという結果を知っているが、長引くいくさと、勢力範囲の減少に危機感を覚えた勢力が信康を巻き込んだという見方は、歴史をみるにあたって先入観を排することの重要さを感じさせてくれる。
    5カ国支配についても、各国ごとに、前代の統治手法を活かし、地域支配を進めており一様ではないことがわかるp124。
    家康は、秀吉への臣従に際し、縁戚関係を求めたp150とあるが、根拠はなんであろうか気になるところである。
    また、豊臣政権下での羽柴家康については「松平・徳川中心史観」を排し、等身大で描こうとしている。従来語られる神君家康のエピソードは、話としては面白いのだが、著者の論じる方が、実像に近い気がした。
    本書は、近年の研究の成果を踏まえた家康像を知るために、読むべき1冊と言えよう。

  • 東2法経図・開架 289.1A/To36s//K

  • 新シリーズ。

全11件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1973年生まれ。
東洋大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。
現在、東洋大学非常勤講師。
著書に『戦国・織豊期大名徳川氏の領国支配』(岩田書院)、『徳川家康――境界の領主から天下人へ』(平凡社)、『織田信長――戦国時代の「正義」を貫く』(平凡社)、『清須会議――秀吉天下取りへの調略戦』(戎光祥出版)、編著書に『図説 豊臣秀吉』(戎光祥出版)、『図説 明智光秀』(戎光祥出版)など多数。

「2022年 『図説 徳川家康と家臣団 平和の礎を築いた稀代の〝天下人〟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柴裕之の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×