- Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582531527
感想・レビュー・書評
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平凡社STANDARD BOOKS、現在刊行されている顔ぶれも、すてきな装丁も気になっていたシリーズです。
特に美しい装丁が目を惹いた、天文随筆家・野尻抱影の巻を読んでみました。
"星の文人"と呼ばれた抱影の文章は、星への愛着とロマンにあふれています。
こんな風に星を眺めたことのない私にも、星を愛する人の喜びをおすそ分けしていただいたような気持ちになりました。
季節の移ろいを星に見る生活がもたらす、精神の豊かさが感じられます。
この本に収められた多くの随筆が終戦の年に書かれているということを、ともすると忘れそうになります。
そんな中で次の言葉がとても印象的でした。
「だから、たまには天地が転倒して人間が逆立ちし、今にも星空へ墜落しようとする錯覚ぐらい時々感じていい。それだけでも、人間を謙虚にする足しにはなるだろう」
悠久の星空に魅せられた文人の、時空を見透かすような広い眼差しが感じられたのでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
このSTANDARD BOOKSシリーズは、科学と文学、双方を横断する知性を持つ科学者・作家の珠玉の随筆集です。科学者の随筆がマイブームになってるので、このシリーズを見つけて心踊っています。装丁も素敵ですし、紙の質感も心地良いです。わたしが思うに科学者の随筆は、ロマンチックなのです。無機質な科学がキラキラした月の映える泉に沈んでいくようです。
今回は星の文人、野尻抱影です。
まず、冥王星の名付け親さんだったとは。冥王星という和名、漢字と響きが心騒ぐようで、すごい名前だなぁと思います。とにかく、星が大好きなのが伝わってきます。時々クスリと笑えるところもあります。そして優しい。望遠鏡ではじめて惑星や星を見た人がどんな反応を示すかワクワクしている少年のような心も持ってます。また抱影さんはオリオン座が大好きなようです。オリオンが季節を巡り久しぶりに夜空に現れたときは、懐かしい友人にあったように喜んでます。
『私が死んだら行く星は、・・・やはりオリオンときめていこうか?』
この一文には、やられてしまいました。これからわたし、オリオン座を眺めるたびに抱影さんを思い出すことでしょう。 -
装丁の美しさに惹かれて手に取った一冊。
冥王星の和訳命名者で、天文随筆家である野尻抱影さんの作品。
1930年から1946年頃にかけて書かれた随筆を集めたもので、明治生まれとは思えないくらい、現代人の私でも、とても読みやすかった。
星に対する知識も豊富で、読み物としても素晴らしかった。野尻抱影さんの星に対する親愛の情が、ひしひしと伝わってきた。
今のイスラエル辺り、古代カルデアの人々が眺めた星空と、明治生まれの野尻抱影さんが眺めた星空。そして今を生きる私たちが眺める星空は、そんなに大差はない。
そして遥か悠久の時を経て、昔からやってきた光が、今の私たちが見ている、星の輝きであることは、周知の事実である。
それを考えると、小さなことでくよくよするなんてな、と思わせてくれる1冊だった。 -
190927*読了
野尻抱影さんの文章を読んでみたいと思い続け、やっと念願叶いました。
ここまで星を愛せるってすごい。空に輝く一つ一つの星を慈しむ気持ちがひしひしと伝わってきました。
野尻さんのおっしゃる通り、何百万光年の星の輝きは、今見ている星の光なのに、その光自体は何百万年も前のものって、当たり前なんだけど感慨深い。そんな昔の光を自分が見ていると思うと、なんとも言えない気持ちになります。
自分たちが生まれて死に、どんな苦しみや喜びを味わっている時も、星は変わらずそこにある。その雄大さに胸打たれます。
季節によって見られる星が違うので、星によって秋が来た、冬が来たと実感したり、半年ぶりにその星を見ることができて、久しぶり、と思ったり。あーロマンチック。
野尻さんの生きていらっしゃった頃よりも、この日本ではさらに星が見にくくなってしまったけれど、今日はのんびり夜空を見上げて、星座を結んでみようかなと思います。 -
1977年(昭和52年)没の天文随筆家による短編50遍あまり。書かれた時代は戦前から戦後にかけて。甲府で先生をやっていた時代の思い出話から、東京郊外で暮らす家の庭から見る星の話など。
星の話なので基本的には夜の話。ただし季節は四季すべて。当時の東京市の夜空がまだ暗かったことが想像できる。
冬のグラウンドでボールを探しながらみた空にオリオン座がでかく出ていたときの冷たい空気を思い出した。 -
寺田寅彦とどちらにするか迷って装丁で決めた。(野尻本はたくさん持ってるにも関わらず)
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文章が、とても普通。読みやすいというか、普通なのだ。
良い意味でなのだけど、驚くほどに普通。
そして、明治生まれとは、とても思えない。
でも、内容は、全く普通ではない。
文学を元にした教養の広さ、そこから派生する星への考察。
そのギャップが何とも不思議な空気感を醸し出している。
何より、星に対する愛情が満ちあふれている。
本当に、好きなんだなあ。
科学としてではない、星の楽しみを感じる。
なんとなく、夜空を見上げたくなる一冊だ。 -
【大西浩次先生】
平凡社から、昨年12月より「知のスタンダード」となる「STANDARD BOOKS」シリーズの刊行が始まった。寺田寅彦、岡潔、中谷宇吉郎、朝永振一郎・・・近代日本を支えた指折りの科学者たちの随筆が紹介される。このスタートの中になぜか科学者ではない「野尻抱影」がいる。彼は、戦前戦後の時代の星の文化人として有名であった。この文化人が当時の天文学をどのように捉えていたか、叙情豊かな文章の中で展開される。また、無常な時代の中で、星空の悠久さを、時には尊び、時には腹立たしく思いながらも、星を愛さずにはいられない彼の姿が見受けられる。学問的な内容は古くなっているが、彼の感性は今でも共感できる。なお、この解説はあの宇宙物理学者の「池内了」である。いつもは知的な彼の文章が、非常に叙情的になっているのもまた面白い。この本を初め、これから刊行されるシリーズをぜひ手にとって頂きたい。 -
【選書者コメント】空をゆっくり見上げてみたくなる随筆集。和名で語られる星空の図譜。地上とは全く無縁に、空の星はまわっていく。ちなみに著者は冥王星の名付け親です。
【請求記号】4400:366