牧野富太郎 なぜ花は匂うか (STANDARD BOOKS)

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 533
感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582531558

感想・レビュー・書評

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  • 日本における植物学の大家・牧野富太郎さんの随筆集。
    表紙をめくると梨木香歩さんの紹介文があり、ここを読むだけで牧野さんの生涯をさらりと学べるという贅沢さ。
    しかもこれ、新書サイズでハードカバーという造りで、おまけに表紙絵は牧野さんご本人によるジョウロウホトトギスの絵である。
    精密かつ正確な線画にしばしうっとり・・あかん、クラクラしてくる。

    ブク友さんのレビューを読んだ時から、私の「みどりの指」は激しく疼きだした(笑)。
    牧野先生、今すぐに参りますわ!と、頑張って入手してあっという間の二度読み・三度読み。
    幸せな時間だった。紹介してくださったブク友さん、ありがとう。

    「花は黙っています。それだのに花はなぜあんなに綺麗なのでしょう?
     なぜあんなに快く匂っているのでしょう?」
    この素敵な出だし。「好き」を極めると文系も理系もはるかに飛び越えてしまうものなのね。
    どの章も懇切丁寧に植物の説明をしているにも関わらず、しばしば脱線はするし、それも愛嬌たっぷりで、いのちの不思議さの前に佇む子どものような純真さを残している。そしてその巧みな表現力。更に、たびたび差し挟まれる植物の絵の正確さ・美しさ。もうため息ものである。

    小学校中退という驚くような学歴なのに、その後はすべてがオーダーメイドの純粋学問。
    やむにやまれぬ植物への好奇心があったから、ついには植物学博士にまでなったというのが本書を読むと良くわかる。
    その過程ではさぞかしご苦労もおありかと思いきや「若き日の思い出」という章で、自分の学問に対してあまり苦労はしたことはないと語っている。

    『今日まで何十年にわたる長い年月の間学問を続けてきて、ついに今日に及んだのであるが、
    平素その学問を特に勉強したようにも感じていないのは不思議である。』

    ここが、とてもとても分かるんである。好きなことについて学ぶってそういうことだもの。
    靴がドロドロになろうが、袖を枝に引っ掛けて破ろうが虫に刺されようが、知らない花を見つけると傍に行って観察せずにはいられない。だって、私もそうだもの。
    それはもう、花が自分を待っていてくれるように思えて、ワクワクしてたまらないのだ。
    腹ばいになって「やあ、逢えたね!」と話しかけることだって、私には日常だ。

    奥付に「もっと牧野富太郎さんを知りたい人のためのブックガイド」が載っている。
    そしてオーラスに、「STANDARD BOOKS 刊行に際して」という平凡社さんの挨拶文が載っていて、ここもまた良い。

    スミレの語源になった「墨つぼ(本の中では墨入れと表記してる)」は、私もその昔骨董市で手に入れた。
    いつの時代のどんな大工さんが使ったものか、墨の後が残ったそれは、今も大事に飾ってある。
    ブク友さんも言ってらしたけど、植物好きな方に特におすすめです。

    • 地球っこさん
      nejidonさん、こんにちは。
      植物や牧野先生への愛に溢れた素敵なレビュー、とても楽しく拝見させていただきました。
      自分が拙い文章で紹...
      nejidonさん、こんにちは。
      植物や牧野先生への愛に溢れた素敵なレビュー、とても楽しく拝見させていただきました。
      自分が拙い文章で紹介させてもらった本が、nejidonさんの心に残る一冊になる、そしてまた植物好きの誰かさんに伝わっていく……そんな橋渡しのキッカケを作れたことが、こんなにも嬉しいことだなんて気づくことができました。ありがとうございます(*^^*)
      2018/03/08
    • nejidonさん
      地球っこさん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます。
      良い本を紹介していただいて、本当に楽しく読めました!感謝でいっぱいです...
      地球っこさん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます。
      良い本を紹介していただいて、本当に楽しく読めました!感謝でいっぱいです!
      日ごろは図鑑ばかり眺めているので、とても新鮮な気持ちで読みましたよ。
      レビューの中身は地球っこさんとかぶらないように気を付けましたがこれでOKかしら?
      言われる通り、ここからまた、どなたかお好きな方に繋がると嬉しいですよね。
      私も、こちらで載せたレビューから「読みましたよ」と言われると飛び上がりそうなほど嬉しいです・笑
      ブクログの力を感じさせられた、今回の出来事でした。
      また素敵な作品に出会いましたら、ぜひ教えてくださいね♪
      2018/03/09
  • 『私は植物の愛人としてこの世に生まれてきたように感じます。』
    この一文に全てが詰まっていると思いませんか。

    牧野富太郎は、なぜ世の中の人々は植物に対して興味を持とうとしないのか、こんなに素晴らしい楽しみはないのに~と、とてもご不満なご様子。ほら見てみなさいよ、例えばこのスミレ。花にはいちばん下に小さい緑色の萼片が五つあって、次に五枚の花弁があって、この花弁は上に二枚、横側に……そうそうスミレって名前は……ってな感じでお話は延々と続いていきます。
    その細やかな観察眼は彼の描く植物画にも現れていて、画の正確さや繊細さには感嘆します。
    もうね、女性の髪の毛一本一本から、爪の形、睫毛の本数に至るまで全てに愛情を注ぎ、その傍にいることに幸福を感じている愛人という感じでしょうか。この女性の一番美しい姿を見つけられるのは自分しかいないでしょうってね。

    富太郎にはきっと魅力があったのでしょう。
    奥さんは道楽息子を一人抱えているようだと言いながら、十三人の子どもと貧乏生活を送ったようです。富太郎を支え続けた奥さんは強しです。

    富太郎さん。植物の愛人とか植物と心中とか言っちゃってるけれど、あなたが研究に没頭出来たのは、奥さんのおかげでもあるのは間違いないと思いますよ。奥さんに感謝してくださいな 笑

    • 5552さん
      地球っこさん、こんばんは

      朝、次のNHKの朝ドラは牧野富太郎さんがモデル、というネットニュースを見ました。
      朝からテンション上がりま...
      地球っこさん、こんばんは

      朝、次のNHKの朝ドラは牧野富太郎さんがモデル、というネットニュースを見ました。
      朝からテンション上がりました↑
      富太郎ってジャニーズにいてもおかしくないような童顔イケメンだと思います。
      神木隆之介くんが演じるなんて、ぴったり♪

      周りに牧野富太郎を知っている人がいないんです。泣
      地球っこさんのこちらのレビューで初めて知った牧野さん。
      著作は未だに読めてませんが、お顔が素敵だな…と。
      ミーハーですみません。

      2022/02/02
    • 地球っこさん
      5552さん、こんばんはー。

      えー!
      それはびっくりしました。
      牧野富太郎が朝ドラになって、おまけに神木くんとは。
      神木くんぴったりですよ...
      5552さん、こんばんはー。

      えー!
      それはびっくりしました。
      牧野富太郎が朝ドラになって、おまけに神木くんとは。
      神木くんぴったりですよ♡♡♡

      わたしもすっかり牧野富太郎とはご無沙汰でしたが、自分の感想を読みなおして、富太郎って、なんともほっとけない魅力があったんでしょうね。
      奥さん役はどなたなんでしょう。
      来春、楽しみにしてます!

      と、コメント欄にnejidonさんのお名前を見つけました。
      nejidonさんとの初めてのコメントのやりとりも、この本だったんだなぁ。
      きっとnejidonさんも朝ドラ楽しみにしておられるでしょうね。
      2022/02/02
    • 5552さん
      そうですね。きっと。
      できればnejidonともこの喜びを共有したいですね。
      そうですね。きっと。
      できればnejidonともこの喜びを共有したいですね。
      2022/02/02
  • 牧野富太郎が想像以上にぶっ飛んだ人で、意外で面白かった。

  • これはたぶん、「こんな昔にこんなにも一所懸命に植物を研究した人がいるんだな」と思いながら読まなくちゃいけない……のだけど、私はそういう想像が苦手で……
    あとカナや漢字は読みやすいように現代風に直してあるのだけど、文体は昔のままなのでちょっととっつきづらい感じ……私のような初心者には厳しいです……

  • このひと、植物にベタ惚れじゃないか!
    一点を見続けてひたすら進む姿。
    惹かれちゃう。

  • ちょっと失礼な言い方をすると植物ヲタクの暴走エッセイ(笑)
    牧野先生は、本当に植物が好きだったんですね
    甲南大学の田中先生の本を読んだ時も思ったけど
    愛情あふれた文章を読んでいるとこちらも笑顔になっちゃいます

  • ほとんど草花一色の内容
    身近な植物が多いから頭に浮かべながら読めておもしろい

  • 紙面から著者の草花に対する情熱が伝わってくる良書。気軽に読める随筆の体裁だが旧字や古い言い回しなど読みにくい部分もある。

  • 随所に草花を擬人化していて、好きが溢れていた。
    ここまで迷いなく好きを貫けるってうらやましい。普段見慣れている花たちの不思議が知れて面白かった。

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著者プロフィール

1862年(文久2年)土佐国佐川村(現、高知県高岡郡佐川町)の裕福な商家と酒造業を営む家に生まれる。三歳で父を、五歳で母を失い、祖母に育てられる。幼少時から植物に強い関心を示し、小学校を2年で中退、好きな植物採取に熱中する。19歳の時、初めて上京し博覧会を見る一方、書籍や顕微鏡を購入する。22歳の時(明治17年)に再び上京し、帝国大学理科大学(現、東京大学理学部)植物学教室に出入りし、文献・資料等の使用を許可される。自ら創刊に関わった「植物学雑誌」に新種ヤマトグサを発表し、日本人として初めて新種に学名をつける。94年間の生涯で収集した標本は40万枚に及び、新種を初め1500種以上の植物に命名し、「日本植物分類学の父」と呼ばれる。

「2023年 『オリジナル普及版 牧野日本植物圖説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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