- Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582531756
作品紹介・あらすじ
戦前、突如文壇から姿を消した小説家は、戦後、サボテンの栽培研究で知られるようになる。サボテンを通じて彼が示した「荒涼の美学」「寂寥の哲学」や独自の科学観を精選。
感想・レビュー・書評
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とにかくサボテンについて書いてある
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この作家のことは何も知らなかった。たまたま訪ねた図書館の郷土の図書のコーナーで見つけたのだ。なんでも小説家として華々しくデビューしたが文壇との相性が悪かったようで、シャボテン愛好家としてのエッセイを書くようになっていったらしい。
本書は平凡社がエッセイの名作を再編集してシリーズ化したもので、龍膽寺雄のエッセイの1編をそのまま書名にしたものである。シャボテンを愛好する者がいかにのめり込んでいくのかを示してくれる。
シャボテンの園芸的な知識を披露するかとみえて、実はそれにまつわる人々のことを逆に照射する文章が多い。シャボテンを愛好する人は能動的精力的な人が多いのは、この植物が逆に最悪の環境に耐えて隠者のような生態を持っているからだという。
さまざまなエピソードが紹介される中で、やはり書名になっている話の中に出てくる戦争中にもシャボテン愛好家として生きた話は興味深かった。焼夷弾に焼かれたシャボテンを引き取りながらも、そこに未来を見ようとしていたのである。
エッセイの書き方にはいろいろあると思うが、この本はひとえにシャボテン愛に寄せながら、さまざまに展開していくのが面白い。 -
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全く知らない著者。
園芸界では有名なのだろうか。
確かに、並々ならぬシャボテン愛を、端々に感じた。
戦争中の話は特にそうで、こんな人もいたんだという驚きとともに、皆が皆、暗澹と窮々と生きていたいただけではないことに、不謹慎ながら、なんだか笑えるし、ほっとした。
科学的な内容であっても、どこかしらに広がっていく感じの文章は、始めは馴染めなかったが、最後の方では平気になっていた。なるほど小説家らしいというべきか。