一古書肆の思い出 3 (平凡社ライブラリー そ 2-3)

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (510ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582762631

作品紹介・あらすじ

時は敗戦直後の大混乱期、にわかに没落した貴族、資産を喪失した富豪階級、生活の資に窮した学者たちは秘蔵の宝籍・稀書を投げ売った。価格を大きく下落させた古文化財が暴流する市場の様を描いた、著者面目躍如の記。

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  • 戦後の混乱期、名家や有力コレクターの所蔵品が市場に溢れた頃。掘出し物を語る著者の興奮や、買いまくる奮闘ぶりは一種痛快。一方で売る側の事情を考えれば哀れさもある。預金封鎖や農地改革、公職追放などにより零落していく旧所蔵者。三条西、九条、冷泉、松平。まさに乱世。
    買い手としての中山正善の名前はこの時代にも頻出。官僚や企業家でなく特殊な立場である故、戦前戦後を通じて有力な蒐集家でありつづけることができたのだろう。
    ・昭和20年12月の古書即売会。
    ・昭和22年。長澤規矩也の紹介により、予算が余っていた(!)帝国図書館へ文明本節用集を売る。(p108)
    ・同年、若林春和堂正治氏の提案で京都での市会開催。
    ・昭和22年当時、商品不足に悩む百貨店と古書業界は蜜月の関係だった(p309)
    ・勝海舟文庫売り立て。デパートの即売会で売るはずが、分散させず海軍で持つべきだという麓定孝の懇願により便宜を図って売却。のちに国会図書館に入ったという。[ https://rnavi.ndl.go.jp/kensei/entry/katsukaishuu.php ]
    ・昭和23年時点での有力な得意客として名の上がるフランク・ホーレー氏。[ http://www.ndl.go.jp/zoshoin/zousyo/23_furan.html ]

    マクロな視点からは、個人コレクションの売り立ては散逸であると同時に、資料が新天地を見つけるチャンスでもある。この時期に旧蔵者から市場を経て有力コレクターの手に入った古典籍は、その数十年後コレクターの死に伴い寄贈の形で大学や図書館などの公的機関に移った。では近年の情勢で公的機関がコレクションを維持できなくなった場合、その行き場はどうなるだろう。

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