ジェンダーと歴史学 増補新版 (平凡社ライブラリー す 5-1)

  • 平凡社
3.71
  • (1)
  • (3)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 68
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (535ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582765168

作品紹介・あらすじ

ジェンダーは、女を歴史の周縁から中心へと転位させる批判的概念であった。しかし、その限界が見え始めたいま、あらためてジェンダーと歴史を再考する増補新版。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「ジェンダー」を初めて歴史学の批判的方法概念として提起し、周辺化されていた女性の歴史に光をあて、歴史記述に革命的転回を起こした歴史学の記念碑的名著の増補新版。
    ジェンダーは、女を歴史の周縁から中心へと転位させる批判的概念であった。
    しかし、その限界が見え始めたいま、あらためてジェンダーと歴史を再考する増補新版。

  • 確認先:品川区立大崎図書館

    ジェンダーと歴史社会学の関連性を考えるならば確実に避けられない一冊。と同時にスコット(と訳者の荻野)から別の質問を投げかけられているのではないかという自問自答への思索を始める糸口になるかもしれない。

    スコットが本書を執筆している時代、日本では女性の歴史(というか女性の日本史)を記述しようとする動きがあったのだが、結果から言えば半分進んだがある部分ではまったく停滞したまま時間だけが過ぎたということができるだろう。
    というのも、女性の歴史を可視化すべく当時の運動家がとった戦略は「男性の歴史」に女性の存在を組み込むという東アジアでいまだに権威性を持っている「史実」という虚構の価値観に挿し木をおこなうというものだったからだ。
    つまり、なぜ女性がいなかったのか、その時代の権力作用に女性が巻き添えになっただけでなく、自発的に(時に戦略的に)巻き込んでいったのかということへの検討や言語化を置き去りにしていったということになる。

    さて、スコットが言う「歴史学」というのは日本で研究されている歴史学だけではない。歴史の周辺に散らばるラピッシュだけでなく、理論の歴史化も含まれる。
    (歴史が「ファンタジー」とするならば)あたかも多くの人の欲望を喚起させてしまう鵺であり、それが巧妙に隠した「おんな」という付加価値をただ暴くだけでなく、それが社会に都合のいいように換胎脱骨を望んで行ったことも強かに見せていく――かつての「女性史」がたどった轍をもう一度踏んでいるかのような印象を。

    このバージョンが出てからまもなく10年。私たちは何を学び、そして何を学んだつもりになっているのだろうか。

  • 「ジェンダーとは肉体的差異に意味を付与する知なのである」。
    肉体的な性差をもとに社会的な性差が生まれたのではなく、
    社会的な性差がつねにすでに肉体的な差異の神話を、
    遡及的に生み出し維持してきた。構築してきた。といった論旨。
    ジェンダーと歴史学という別々の領域を結び付けたということで、
    本著はジェンダー学の教科書になっている。

    しかし読者が気づくのは、歴史学からジェンダーという分野が疎外されてきた事実そのものが、
    アカデミズムの世界のジェンダー的偏りを物語っているということだろう。
    1941年生まれのスコットの著作を、1945年生まれの荻野美穂が翻訳している。

全5件中 1 - 5件を表示

ジョーン・W.スコットの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×