統帥権と帝国陸海軍の時代 (平凡社新書 308)

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582853087

作品紹介・あらすじ

帝国陸海軍は「統帥権の独立」という自らが優位なシステムを背景に破滅の道を進み、その果てに国家の崩壊をもたらした。山県有朋の策謀がからむ、統帥権の牙城・参謀本部の成立事情から昭和二十年の敗戦に至るまで、統帥権をキーワードに陸海軍の興亡をたどる。日本の近現代を考えるうえで避けて通れない"統帥権"という魔物に正面から斬り込む。

感想・レビュー・書評

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  • 統帥権なる概念がいかにして生まれ、独立し、日本を破滅へと追いやったのか。山縣有朋や日清日露での戦勝、肥大する官僚組織、日中、日米戦争と辿られて解説される。

  •  「明治」から「昭和」にいたる激動の歴史を「統帥権」という視点から捉えなおすことは、それなりの興味をもつが、その時期の長さと「国際・国内政治」や「軍事」という幅広い内容を包摂する以上、ちょっと無理があるように思えた。
     たしかに、明治憲法は「統帥権」という独特のシステムを抱合しており、それを「魔法の杖」といったのは司馬遼太郎だっただろうか。
     明治期に欧州より導入した政治システムに、日本的な味付けを加えた独特の制度が「統帥権」を含む「明治憲法」だったのだろう。
     本書は、その「統帥権」の視点から「明治・大正・昭和」を駆け足で語るのだが、日本においての「明治憲法」は、政治システムとして果たして適していたのだろうかと考えてしまった。
     「天皇」のもとで、「政府」「陸軍」「海軍」が並列する政治制度は、それぞれが天皇に直属し、国家目標を調整する政治システムが制度としては十分に機能していなかったことが、本書でよくわかる。
     さぞかし、「天皇」は気苦労が多かっただろうと思ってしまったが、本書は、歴史を追いかけるのが忙しく、政治システムへの考察が少ないのではないだろうか。
     著者は、第1級の歴史家といわれているが、明治から昭和戦前期の大陸政策をはじめとした国家戦略を「統帥権」だけの視点から評価するのは難しいのではないかと思った。

  • 「統帥権」の成り立ちと、それが乱用されて消滅するまでの歴史。

    難しすぎて頭痛がした。

  • かつて日本は軍隊が暴走して国が滅んだ。司馬遼太郎は統帥権が国を滅ぼしたと論じたが、著者はなぜ統帥権により国が滅びたのかを学術的に論じており参考になった。

  • [ 内容 ]
    帝国陸海軍は「統帥権の独立」という自らが優位なシステムを背景に破滅の道を進み、その果てに国家の崩壊をもたらした。
    山県有朋の策謀がからむ、統帥権の牙城・参謀本部の成立事情から昭和二十年の敗戦に至るまで、統帥権をキーワードに陸海軍の興亡をたどる。
    日本の近現代を考えるうえで避けて通れない“統帥権”という魔物に正面から斬り込む。

    [ 目次 ]
    第1章 統帥権がかつての日本を亡ぼしたのか
    第2章 坂の上の雲を望んで
    第3章 統帥権独立への道程
    第4章 怪物・山県有朋の影
    第5章 全盛期の参謀本部
    第6章 大正デモクラシーの渦中で
    第7章 軍拡と軍縮の波間を
    第8章 日中戦争から太平洋戦争へ

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    [ 参考となる書評 ]

  •  元・日本大学教授の現代史家・秦郁彦が「統帥権」の概略について書いた新書。

    【構成】
    第1章 統帥権がかつての日本を亡ぼしたのか
    第2章 坂の上の雲を望んで
    第3章 統帥権独立への道程
    第4章 怪物・山県有朋の影
    第5章 全盛期の参謀本部
    第6章 大正デモクラシーの渦中で
    第7章 軍拡と軍縮の波間を
    第8章 日中戦争から太平洋戦争へ

     日本近代史を考える上で避けては通れないのがこの「統帥権」の問題である。

     本書の前半期は明治期に「統帥権の独立」を制度化する前提となった陸軍参謀本部の独立をメインに扱い、そこにやや軽く軍部大臣の帷幄上奏、現役武官制について述べられている。後半は満州事変から太平洋戦争までの軍事行動の概観で特に注目すべき点はない。

     直感的な感想になってしまうが、どうも山県のくだりがしっくりこない。山県の強いパーソナリティが制度確立に大きな影響を及ぼしたことはわかるのだが、山県という個人によってその後70年に及ぶ参謀本部の性格が規定されたというのは、無理があるように思える。

     後半部分の戦争の経過描写などは割愛しても、もう少し軍政・軍令の分担状況や戦時下の政軍関係などを取り上げてもらいたかった。あとがきで著者も述べているように、
    「(統帥権の三位一体の運用について)いずれの分野も通史というより略史の程度に終わったのはいささか残念だ。」

  • 参謀本部がどのように出来上がっていったのか、そのことを知りたくて読んでみました。参謀本部と軍令部のことが書いてあり、色々な知識を得ることができました。

  • 「統帥権」の確立の過程、そして、それが軍部によりいかに悪用されて言ったかが書かれている。

    本書で述べられている一つの権力の確立過程は、決して戦前特有のモノではなく、現代日本においても十分あり得る話である。だからこそ、なおさら面白い。文章も非常に論理的で分かりやすく、勉強になる本である。

  • 2006.2読了

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著者プロフィール

1932年,山口県生まれ。東京大学法学部卒業。官僚として大蔵省、防衛庁などに勤務の後、拓殖大学教授、千葉大学教授、日本大学教授などを歴任。専門は日本近現代史、軍事史。法学博士。著書に、『日中戦争史』(河出書房新社)、『慰安婦と戦場の性』(新潮社)、『昭和史の軍人たち』(文春学藝ライブラリー)、『南京事件―虐殺の構造』(中公新書)、『昭和史の謎を追う』(文春文庫)、『盧溝橋事件の研究』(東京大学出版会)、『病気の日本近代史―幕末からコロナ禍まで』(小学館新書)、『官僚の研究―日本を創った不滅の集団』(講談社学術文庫)など多数。

「2023年 『明と暗のノモンハン戦史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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