双極II型障害という病 -改訂版うつ病新時代-

著者 :
  • 勉誠出版
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本棚登録 : 136
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784585240051

作品紹介・あらすじ

ポストメランコリー型時代の気分障害の本質。今日の気分障害の臨床は、若年事例や治療抵抗性事例の増加、過量服薬、リストカット、病名依存など、さまざまな困難を抱え込んでいる。そのような現代の気分障害を象徴する「双極2型障害」に焦点を合わせ、回復への里程標とする。

感想・レビュー・書評

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  • P239「一般の読者が、本書を手にとって、いくらか難しいと感じたら、精神科医も少しはものを考えているのだと安心していただきたい。」なかなかに難しかったけれど、とても面白かった。星6つ。
    P239続き「また、「わからないこと」の意義についても、一考していただければと思う。わかること、わかろうとすること、それに加えて、わからないことをわからないままにリスペクトすることは、精神科医の使命のようなものである。また、臨床にかぎらず、ものごとを展開させるのは、「わからないこと」なのである」心に染みました。

  • 大雑把にまとめると、双極Ⅱ型障害(いわゆる新型うつ病もここに含まれる)の精神病理学を追究している精神科医が、具体的に症例を示しながら、一般の臨床家に向けて患者をどう理解し治療していけばいいのかを解説した本。しかしそれに留まらず、メランコリー型うつ病や躁うつ病(現在は双極Ⅰ型障害)との比較や歴史的背景も詳細で、最後には精神疾患は時代を映しそして先取りするということが素直に納得できた。一方で、患者の症例提示や内面の考察は平易に書かれており、初版が多くの患者の家族や本人から好評を得たというのもうなずける。
    ところで、この本を手に取ったのは自分がまさに患者であるからであり、症例を読んでいる間しょっちゅう「あるあるw」と声に出しそうになった。読み終わって、治療の目標地点をどうイメージすればいいのかが以前より少し分かり、そして今の自分が受けてきた治療がその時々で主治医が悩みながら出した最善の策だったと改めて思い、これからもこの病とつきあい続け、そしてこの性格をうまく活用していきたいと、前向きになることができた。

  • これほど身に染みて読んだ本はない。前からうすうす単極性のうつ病ではないことを感じていた。ときどき気まぐれに躁状態があったからだ。だからといって、双極I型というほど明確な、大げさなエピソードはなかったからだ。

    本文ではストンと落ちると書いているが、私の言葉で言えば、深い深い落とし穴に落ちて、負傷して前にも後ろにも動けない感じが何度かあった。

    ・最も重要なことは生活リズムの確立。※これが難しい。特に睡眠。
    ・基本は同調性=環界と共振・共鳴する原理。※他人が師になっている。
    ・閉塞・停滞の忌避※どうしようもない衝動としてある。
    ・「悩みをもちかけられる」
    ・自分は自分、他人は他人ということを学ぶ
    ・気分障害の臨床では、この尊重が重要。
    ・他者配慮は肯定されてしかるべき。
    ・そもそも患者の行動化は、患者が自らの生き方に取り込めなかった「悪」の部分である。
    ・罪悪感の一方、自分を周囲は受け入れてくれるだろうと思っている。
    ・躁-鬱の極性は消滅する。
    ・大きな物語が機能しない。
    ・DSM IIIの登場したあたりから米国では精神科を志望する医師が減少している。

  • 自分が当事者がどうかは全くわからないが、この数年間苦しんできたことは確かで、とても温かい目線で、伴走してもらっているような感覚にもなり救われた気がしました。
    症例や理論の中で心当たりがあるものもあり、それに関わるリスクを知っておけることや逆に特性が悪いことばかりではないという内容に思わず涙することもあった。
    時折、本を開いて温かみに触れてみたい。

  • 「うつ病新時代」の改訂版。

    前版出版後、他社より同一書名が出版されたことによって書名を変更したそうだ。4章 治療の指針 6章 混合状態 を改稿したようだ。 前版に比べて、内容が濃くなった印象といろいろな事例が増えた印象はあったが、基本的な中身は前版と変わらないように感じた。

    双極性障害Ⅱ型の人がすぐに理解できて役立つというよりも、Ⅱ型特有の心の変化や態度に現れにくい複雑さを解明しようとしている面があり、その意味では、やや理解の難度が高い本だと思った。

    ただし、この病気の本質はついていると思うので、素人でも読めるやや難しい内容を期待している人にとっては良い本だと思う。


    第一章 気分障害略史―メランコリーから双極Ⅱ型障害まで
    メランコリーの系譜
    躁うつ病からうつ病へ
    双極スペクトラム―回帰と新たなる展開

    第二章 軽躁というデーモン
    躁と軽躁
    軽躁の見極め方
    軽躁は悪いとばかりはかぎらない
    極性のフォルム

    第三章 臨床プロフィール
    事 例
    少し異質なうつ状態
    不安、そして焦燥
    Demoralization(士気低下)
    領域横断性

    第四章 治療の指針
    事 例
    治療の第一歩―抑うつをしっかり捉えること
    速い波と混合状態から脱け出すこと
    休息について
    治療の枠組み―当事者にやってもらいたいこと
    軽躁への対応―チームワークの大切さ
    薬物療法についての私見

    第五章 同調性の苦悩
    病前性格論の系譜
    双極Ⅱ型障害の心性
    精神療法のポイント
    病の中のレジリアンス

    第六章 混合状態―交錯する躁と鬱
    古典的な混合状態
    回復期の動揺
    混合状態の三角測量
    軽症化の逆説

    終 章 うつ病新時代
    メランコリー親和型性格の残照
    まつりのおわり
    双極Ⅱ型障害とポストモダン心性

    あとがき 改訂版あとがき

  • 7月新着
    東京大学医学図書館の所蔵情報
    http://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2003559079

  • 友達の家にあったので借りて読んだ
    神経症やパーソナリティディスオーダー
    メランコリィや
    ハレやケなどまで言及していて
    知っていれば読める

  • いやいやいや、それ発達障害ですから!というツッコミしかない。現代社会に適応できない不器用な心を切り刻んでいる印象がして、まともに読めなかった。

  • 自分が精神科にかかっているため、病気や薬については調べまくります。今まで色んな診断名を付けられそのたびにそれについての書籍を読んできました。

    昨年8月、主治医が嫌すぎて転院し、そこで今まで公的な病名が「うつ病」から「双極性障害」に代わりました。一度医師にⅠ型かⅡ型かを聞いたのですが、「今は薬でコントロールできているから、どちらかは判別つかない。」と言われてしまっているので、自分自身でも分かりません。でも、確実にⅠ型の友人の躁状態(隔離にお見舞いに行った)を見て、自分、まだかわいいもんだ。と思い、勝手にⅡ型かなぁ?と思っています。

    そんなわけで読んでみたのですが、うつ状態と診察されていた頃、抗躁剤と抗うつ剤の合わせ技で「これがあなたの薬の最終形態になるでしょう」と医師に言われたことがあります。現在の処方がまさしくそれに抗精神病薬を足したものになっているのです。ちなみに20代の頃です。

    公的な病名は自律神経失調症→うつ状態→摂食障害→境界性パーソナリティー障害→うつ病→双極性障害ときたものです。精神科とは10年以上のお付き合いです。

    双極Ⅱ型と間違えられやすい境界性パーソナリティー障害との違いも本書では書かれています。かなりこれはへぇー。と思いました。

    うつ病は発病年齢が40歳以降と遅く、独身、離婚率は低いとの事ですが、双極性障害は発症年齢がはやく、独身、離婚率が高く、アルコール中毒が多いとの事。

    離婚歴こそありませんが、独身で20代発症で、アルコールやめられません。


    この本では色んな症例が出てきて、一患者である自分にも比較的分かりやすいものでした。しかし、やっぱり学術書。専門用語もちらほらしていて、最初は「??」となってしまいました。まぁ、中盤位まで読むとついて行けるようになったのですが。

    時代の流れがうつ病から双極性障害になっているというのもとても興味深いものでした。

  • 改訂前に読んだことがあった気がする。混合状態の記述が大変参考になった。

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著者プロフィール

東京藝術大学名誉教授。精神科医。1955年東京都生まれ。1979年東京大学医学部卒業。東大分院神経科、帝京大学精神神経科学教室、東京藝術大学保健管理センターを経て現職。

「2023年 『発達障害の精神病理 IV-ADHD編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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