夢の時: 野性と文明の境界 (叢書・ウニベルシタス 380)

  • 法政大学出版局
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  • Amazon.co.jp ・本 (667ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784588003806

作品紹介・あらすじ

魔女は本当に空を飛べたか? 文明が生み出したさまざまな概念を覆すべく,時空を超えて未開・異界に踏み込み,文明に馴致された存在としての自身を認識する試み。

感想・レビュー・書評

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  • 中世魔女、カスタネダ、アメコミ、その他いろいろの文化のトリップ体験をあくまで歴史学的に紹介してゆくのだが、図版はどれも「いぇーい!乗ってるぜぃ!」な雰囲気を伝えていて可笑しい。人間がやってることが大昔から変わらないんだなぁと割と頭を使わずに楽しめる。

  • めちゃくちゃ良かった。
    高度な分析的方法、形式的思考や類推によって文明化された現代人の驕りを突く快作。

    「飛ぶ」という言葉がそれぞれの「現実」によっていくらでも変容しうる、それが野生の世界。
    自分が自分であることを知るために、自分が自分ではない部分を知ることこそが重要。
    「私とは〇〇である」「普通そんなことはない」
    どれだけ人間が自らを理解しているのか。それを知るために「外の世界」に半歩を入れる。
    この感覚は忘れないようにしたい。

  • 「夢の時」とはさまざまなものの違いがなくなってしまう状況・時空間。「夢の時の中では、黒人などというものはなかった。そうではなくカンガルー、大トカゲ、鳥が黒人と同じ歩き方をしたのだ。」その後で、みんなまたカンガルー、大トカゲ、鳥になった」
    著者は元々ドイツやスイスの大学で民族学、文化史を教える大学教授。考古学、社会学、歴史学、文化人類学、言語学なども専門としている。本書を手に取るとかなり分厚いけど、三分の二は注と参考文献。そして訳者の解説が一切ないという珍しい構成。
    堅苦しい学術的な体裁の本の割に、実際読んでみると一般人にも読みやすい文体。
    話は中世の魔女の膏薬に始まり、空飛ぶ人々と幻覚を引き起こす薬草の話へと繋がっていく。
    カスタネダがわからなかった人は、一度この本を読んでみるべき。
    「我々の人格が固定した自分の境界を放棄する度合いが大きくなるにつれ、人格に含まれると考えられるものの範囲が拡大し、我々は何人かの人格が一つの肉体を共有する人間へと変化していく。いまや人格の境界は外界に属すと考えられていたものをも含むようになる。我々の人格の境界は、もはや写真に写っているような肉体の境界とは一致しなくなる。そのような人格の拡張は、確かに飛ぶ、というような言葉で言い換えることができるだろう。」

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