E.モラン自伝: わが雑食的知の冒険 (叢書・ウニベルシタス 626)

  • 法政大学出版局
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  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784588006265

作品紹介・あらすじ

ヨーロッパ戦後史の激動の政治・思想世界を,異端者として強靭に行動してきたモランの波瀾に満ちた知的冒険の歩み。〈心のデーモン〉が求める如くの著作史的自伝。

感想・レビュー・書評

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  • 私はもはや自分を他人との参照によって定義付けようとは思わず、自分の主導観念の中に自分の姿を認めようと思うようになった。私はどのようにして、なぜ、自分が信じる門ものを信じるのか、どのようにしてなぜ自分が考えるように考えるのか、、要するに自分が考えることをまさに根源のところで再検討する必要性を徐々に強く感じるようになった。内省ー回顧。

    ホールトン『科学と反科学』に衝撃を受けていた。彼はテーマなる名の下に科学者たちの研究と思考を駆り立てる脅迫観念を指摘。あらゆる人間が自分のテーマ(主題系)を持っている。それはどこからやってくるのか、なぜ我々の内部でかくも強力なのか。

    いくつものテーマが出現し、そのおのおのが一個の章を要求した。そのつど私はそれらの本源にまで遡り、それらがどのようにして形成され、私を形成し性質を変え私を変えたかを考察してみようと思った。

    そのつど、音楽作品のように他のテーマが章のテーマに干渉しにやってきた。そのつど、終わりが始まりに立ち戻るという円環が生じた。

    私の知的生活は私の人生と切り離しできない。私は人生の荒波から我が身を守ってくれる塔から外を見て書くのではなく、私を人生と実社会の中に巻き込む渦巻きの外にいて書く。

    生きていくにはあまりにも鋭敏な感受性を持っていた鬼籍に入った人たち。

    ロマンロランのジャンクリフトフ、
    ロジェマルタンデュガール「ジャンバロワ』
    「我々が真理を真剣に受け止めて自分の良心に従う決心をするとき幾分かは良心とは反対の立場に立たずにいることは非常に難しい。
    トルストイの「復活」

    しかし一番啓示を受けたのはドストエフスキー

    モンテーニュへの愛とルソーへの愛の中に自分の対立する二極を見いだす。

    マルクス主義はあらゆる人類の歴史を階級闘争と生産力の発展によって説明しようとする還元主義的理論ではなく自然科学と人文科学を互いに結びつける真の多次元的な学問。古代史プログラムに盛り込まれたキリスト教の初期時代に虜になった。いかにしてユダヤ教の一小分派、当時存在していた無数の救済宗教の中の一アウトサイダーが2世紀に渡る潜伏期間ののち数多くの異端を乗り越えてローマ帝国内部で輝かしい勝利を収め、公式宗教となったか。そこに自分の知るいかなる理論も説明できない問題が存在することを感じた。

    どの教師も私のものの見方や知識を組み入れてくれるような世界観を提示してくれなかったが、フランス革命研究のルフェーヴルからふたつの鍵概念を受け取り、最終的にそれらを私の思考様式の中に組み込んだ。
    1つは革命勢力(三部会)が突如として逆方向の革命プロセスを引きつけてしまった。
    ー行動の結果はその主導者の意図を逸脱する、という考えが頭の中から離れなくなり、私が行動の生態学という名の下に「理論化」した。

    歴史修正主義。あらゆる過去の歴史は現在の経験の遡行作用(流れを上流に遡る)を被っているということを発見した。これが歴史に対して独特の明暗を与えている。---純粋な観察者は存在しない。だから観察者/理解者は自分自身を観察し、その観察から自分を理解しなければいけない、と考えるように。(観察者である自分自身の理解と記述)

    ソ連は野蛮な後退においてもそこから自分の活力を引き出しているのだから、自己のうちに人類の希望を内包している?
    これを正当化するためにヘーゲルが必要。
    死の危険の受容は、思考は明確にかつ勇敢に立ち向かわなければならない、とするヘーゲル哲学によって受け入れられた。

    実に重苦しかった戦争、敗戦、占領、レジスタンスという4年間は私の真の意味での学校。根本的問題に対する答えを探し求める書物という学校、我々を荒れ狂う旋風の中に押し込む歴史的悲劇という学校、理解しよう、方向を知ろう、決心をしよう、なすべきことをなそうと試みる学校、生と死の学校。

    人間学の領地に放たれるという偶然がなければただの教養人としてとどまっただろう。これは土着民族を扱う非歴史的、非生物的人類学ではなく、その内部に経済学、心理学、歴史学と特に神話学と生物学の次元を含む総合的学問のことである。
    『ドイツ零年』、人文地理学、先史学、民族誌学、児童心理学、精神分析学、宗教史、神話学、思想史、哲学
    『人間と死』CNSRでは2年間一日中を国会図書館で過ごし、当時未知だった領域(死は生物学的にも社会学的にも人類学的にも扱われていなかった)、と極めて多様な分野(死の生物学から来世に対する神話上、宗教上の信仰)に踏み出す。

    あらゆる生物と同じように死すべきものである人間の生物学的現実、そして至る所で死の向こうに生命を作りだす神話と想像の世界の人間的現実。

    死を糧に生き、生命のために死ぬ。(ヘラクレイトス)生きることへの絶望といきたいという意欲の絶えざる矛盾。虚無主義と希望の間。

    全体性は常に未完成で分断され、分割され。不完全である。(アドルノ)

    秩序ー無秩序ー相互作用ー組織化というこれ以上分割できないテトグラム。
    ホワイトヘッド

    形式論理においては矛盾は失敗の印であるが、認識の進化の中にあってはそれは勝利へウ買う進歩の第一歩をしるすものだ」

    ヘクレイトスの根本矛盾ー結合と分離の結合、一致と対立の結合ー

    今読むとモランの文章も稚拙に見えてくる。。。なぜだろう。そしてこの先、どこに行けばいいんだろう。

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著者プロフィール

【著】エドガール・モラン
Edgar Morin/1921年、フランス生まれの思想家。ユダヤ人家庭に生まれ、第二次世界大戦では対独レジスタンスとして活動した。戦後は執筆活動に入り、パリ国立科学研究所主任研究員などを務める。著書に『オルレアンのうわさ 女性誘拐のうわさとその神話作用』(杉山光信訳、みすず書房)、『方法1~5』(大津真作訳、法政大学出版局)、『祖国地球』(菊地昌実訳、法政大学出版局)などがあり、多数が邦訳されている。近作に、『百歳の哲学者が語る人生のこと』(澤田直訳、河出書房新社)、『知識・無知・ミステリー』(杉村昌昭訳、法政大学出版局)など。

「2023年 『戦争から戦争へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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