- Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
- / ISBN・EAN: 9784588325076
作品紹介・あらすじ
『おくのほそ道』研究の第一級史料であるにもかかわらず、正面から取り上げられることの少なかった「曽良旅日記」を克明に読み解き、定説にとらわれることなく、移動距離を計算し直し、曽良が記した不定時法の時間を現行時間に直し、番所制度の実態、地方俳人の動向を明らかにして、文学作品として書かれ再構成された『おくのほそ道』からは知ることのできない芭蕉の旅の真実の姿に迫る。
感想・レビュー・書評
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文学
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『奥の細道解釈事典』を読んで、曾良の旅日記を読んでみたくなった。芭蕉の『奥の細道』は、旅の忠実な記述ではなく、文学作品としての完成を念頭にかなり手が加えられている。本書は、その旅の実態を細かく記録した曾良の旅日記に出てくる人物、背景を事細かに述べる。本書で特に詳しいのは、関所である。江戸時代は旅をするには、いくつもの関所を越えなくてはならなかった。そしてそれには通行手形を各所でもらうのだが、これがけっこうたいへんらしい。しかも、通行手形は発行日が書かれている。芭蕉たちの旅は、歌枕やその土地土地の俳人たちとの交友があるから、ふつうの人のような旅程にはならない。だから、それで問い詰められ不愉快な思いをすることもあったらしい。また、芭蕉たちは旅費も用意はしているが、その土地の俳句を嗜む富豪たちの家にやっかいになることも多い。それがいつも歓迎されるばかりでないから不快なこともある。また、芭蕉たちが、ここで世話になったと書くと、のちに訪ねて行った人が断られ不快な思いをすることもある。そんなことがいろいろ出てくる。専門書ではあるけれど、専門外の人間が読んでもけっこう面白い。ぼくは寝る前に少しずつ味わいながら読んだ。