少年探偵江戸川乱歩全集〈42〉蜘蛛男

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591001516

感想・レビュー・書評

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  • 可憐な蝶を糸にかけて愉しむ蜘蛛の男が一人


     現在出回っているポプラ社第三期のシリーズには、入っていない作品ですよね。最近では教育上の配慮が細かいから、こういうアヤシげな作風では少年少女に見せられないのかもしれない。R-15?(でも、読んだ小説をどんな風に受け取るかは自主性にまかせたら? とも思うけど……)

     二十面相的な道楽とは違う、今度は趣味の犯罪。趣味といっても趣味特技の趣味ではなくて性癖、ある意味でのヘンタイ趣味です★
    「蜘蛛男」で「青ひげ」でもある連続殺人犯は、何人もの候補の中から選抜した美人・里見芳枝という女性を浴槽で殺害。死体を切断すると、石膏像に見せかけて人様に披露します。さらに、芳枝によく似た姉・絹枝も毒牙にかけ、水族館の水槽に……!! よくよく水につけるのと人目に曝すのがお好きみたいで。

     被害者の選び方(好みは「唇のめくれた美人」。…それって美しいのか?)や殺害方法、亡骸の辱め方等、犯人は徹底しておのれの異常な趣味をまっとうしてしまいます。描写も変に熱がこもって、蒸し蒸ししてます★
     江戸川乱歩がフェティシズムの作家だという印象はありましたが、この作品ではもっと倒錯しているのです。

     中途半端なことをせず、通俗的な嫌らしさに徹した作品、その徹底ぶりによって人気を勝ち得た、乱歩の代表作……。『蜘蛛男』単体で読んだ時には、ただただ圧倒され、読み入ってしまいました。

     乱歩作品を何作か読んだあとでは、むき出しの魅力と弱点に、複雑な思いもあります。エドガー・アラン・ポーから名を受けて江戸川乱歩となり、初期にはミステリも「小説」であろうとする美しい未練をたたえていた作家が、ポーから遠く隔たった世界に来てしまったな~、と★
     通俗的ななまぐささに徹したB級作品で本領を発揮してしまったこと、それを読者も望んでいたこと。この現実を受け入れなければならなかった乱歩は、自分の持ち味をどう思ったのでしょうか?

  • (1999.12.12読了)(1999.09.10購入)
    (「BOOK」データベースより)
    美術商・稲垣平造と名のる毒蜘蛛のような怪紳士の正体は?女事務員募集の3行案内にひかれて稲垣のもとを訪れた里見芳枝は、その日から消息を絶った!稲垣のために殺された芳枝の死体は胴・足とバラバラに石膏細工の中にとじこめられてしまった!芳枝と瓜二つの姉・絹枝も稲垣の毒手にかかり、江の島の水族館の水槽内にその死体は浮かべられた!「青ひげ」このおそるべき凶悪犯人の目的は何?不敵な挑戦状を受けて颯爽と立ちあがったのは義足の犯罪学者・畔柳友助博士とその助手・野崎三郎青年であった!

    ☆江戸川乱歩さんの本(既読)
    「少年探偵26 二十面相の呪い」江戸川乱歩著、ポプラ社、1970.10.20
    「少年探偵27 黄金仮面」江戸川乱歩著、ポプラ社、1970.08.
    「少年探偵30 大暗室」江戸川乱歩著、ポプラ社、1970.10.
    「少年探偵33 黒い魔女」江戸川乱歩著、ポプラ社、1970.11.
    「少年探偵38 白い羽根の謎」江戸川乱歩著、ポプラ社、1972.05.05
    「少年探偵44 人間豹」江戸川乱歩著、ポプラ社、1973.11.
    「少年探偵45 時計塔の秘密」江戸川乱歩著、ポプラ社、1970.08.
    「少年探偵46 三角館の恐怖」江戸川乱歩著、ポプラ社、1973.11.15

  • 1958年発表

  • (メモ:中等部1年のときに読了。)

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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