- Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591119075
作品紹介・あらすじ
雪の夜、「昔あったとい」と昔話をしてくれたあの人。実子ではない「私」をいつも温かく抱きしめてくれた亡き母の思い出(加能作次郎『母』)。親戚の娘をいきなり預けられた貧しい夫婦。強引なやり方に反発しながらも、いつしかその娘が愛しくなっていく(耕治人『東北の女』)。ハガキ一枚を頼りに上京してきた娘「初」は押しかけた家で雇ってもらうが、その家の男の子はひどく意地悪で…。孤独な少年を守ろうとする娘の潔い愛が胸を打つ、由起しげ子の『女中ッ子』。雪のように清らかで、温かい物語。
感想・レビュー・書評
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冬の山形に小学生一人で行くのは、危険ですぞ。
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このようなアンソロジーででもなければ読まないであろう作家ばかり
『母』 加能作次郎
自伝的な作品であるよう。
「昔あったとい。」「聴いたわね。」
『東北の女』 耕治人
雪→東北→暗い、みたいな感じ。貧乏と親戚づきあいと。家族・親族単位の貧乏は今の時代にはなかなか出てこないテーマだろうな
『女中っ子』 由起しげ子
こちらは一転して明るくおかしい。この作品も映画化されたり流行作家だったみたい -
3人とも初めて知った作家。東北〜北陸を舞台にした物語。中でも『女中っ子』は「毒親」なんて言う言葉が生まれる前の昭和の親子関係を描いていて心に残る。
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雪と方言はなんとしっくりとくる取り合わせなのか、と三作品を読んで感じました。
昭和初期あたりの日本の貧しさ、素朴さが伝わってきました。 -
「母」
継子と継母の、埋められない溝。
誰が悪いわけではない。
「血」というものは、不思議だ。
昔話でもよくある。
かぐや姫だって、皆に大切にされたのに、結局は月に帰ってしまうのだ。
産みの親の力は、大きい。
善人同士であたたかい心を持っていても、客観的には取るに足らないささやかなことで、変に遠慮をしてしまう。
少し悲しい。
「東北の女」
いやー、実に厚かましい!!
ふといなぁ。
そんなに太くなれるくらい、切羽詰まっていたのだろうけれど、自分の娘を押し付けに行く、なんて、ちょっと現代では感覚が違うなぁ。
昔は養子とかが普通に行われていたのだろうけれど。
もう大人になりかけている幸子は、どんな気持ちで叔父のアパートへやってきたのか。
彼女の様子から、それは並々ならぬ決意があったろう、と想像できる。
最後の、実家に帰省した際の幸子のくつろいだ様子が、今までの姿と対照的にうまく描かれている。
「女中っ子」
これも押しかけるお話だ。
勝見への愛情があたたかい。
梅子夫人は女くさい(女らしい)わがままぶりだ。
常に自分の気に入ったようにしたい、誰か悪者を作っておきたい、そんな人だ。
勝見と梅子の関係が改善すると、勝見と初との間が離れてしまう。
いたしかたない、と思う。
しかし、勝見ぼっちゃん、初が去ったこと・その理由を知ったら、彼の小さく温かい心は痛むことだろう。
それでも、彼にとっては、当然母の存在のほうが大きいに決まっているのだけれど。 -
<閲覧スタッフより>
雪をモチーフにした「母」、「東北の女」、「女中ッ子」の短編三作を収めた作品集。三作とも地方の貧しい風景が垣間見られますが、しんしんと降る雪は人の温かさを際立たせています。この温かい物語を読んでほっこりしませんか?
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所在記号:908.3||ヒヤ||25
資料番号:20097251
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乳房の間の汗の匂い、干し魚の焼ける匂い、犬の寝床になっていたウールのオーヴァーの獣臭い匂い。 でも、雪のように清潔な小説たち。東北の雪景色にしばし想いを馳せる。 冬の夜、外には雪が音もなくしんしんと降り積もっている。 「昔、あったとい。」繰り返される母の昔話し。 「聴いたわね。」と応答する子どもたち。 雪に閉じ込められた今日の日に読むことができた幸せ。
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あったとい きいたわね
おれきっとおめご台所を片付けっぺと思ってたて
学校に来るなよ、女中ッ子ってみんな僕のこと云うから -
雪の降る日に一章づつ読んで、三年越しで読了。
カバーをとった表紙のイラストも良かった。
母 は、雪が降る中、一つの火が灯っている感じ。
東北の女 は、一言で言うと、味わい深い。その言葉が適切かどうかはわからないけど、読了後にそう思った。
女中ッ子 は、雪の場面が印象的に使われていた。読後感は良い。