二木先生 (ポプラ文庫 な 17-1)

著者 :
  • ポプラ社
3.77
  • (191)
  • (317)
  • (217)
  • (69)
  • (8)
本棚登録 : 4542
感想 : 296
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591174869

作品紹介・あらすじ

どうしたら普通に見えるんだろう。どうしたら普通に話せるんだろう――。いつもまわりから「変」と言われ続けてきた高校生の田井中は、自分を異星人のように感じていた。友だちが欲しいなんて贅沢なことは言わない。クラスのなかで普通に息さえできたなら。そのためならば、とむかしから好きでもない流行りの歌を覚え、「子供らしくない」と言われれば見よう見まねで「子供らしく」振舞ってもみた。でも、ダメだった。何をやっても浮き上がり、笑われてしまう。そんな田井中にとって唯一の希望は、担任の美術教師・二木の存在だった。生徒から好かれる人気教師の二木だったが、田井中はこの教師の重大な秘密を知っていたのだ。生きづらさに苦しむ田井中は二木に近づき、崖っぷちの「取引」を持ち掛ける――。社会から白眼視される「性質」をもった人間は、どう生きればよいのか。その倫理とは何か。現代の抜き差しならぬテーマと向き合いつつ予想外の結末へと突き抜けていく、驚愕のエンタテインメント。2019年ポプラ社小説新人賞受賞作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • いやー、すっごく面白かった!!!
    これがデビュー作ですか?!と驚いた。
    ………………………………………………

    幼い頃から「変わってる」と、言われつづけ、誰からも馬鹿にされつづけてきた男子高校生・田井中。
    彼は自分をまるで宇宙人のようだと感じていた。
    だが、ある日のこと、学校の人気美術教師・二木の絶対知られたくないであろう秘密を偶然知ってしまう。
    そんな中、田井中も二木に弱みを握られてしまった。
    田井中は、自分を守るため、二木にギリギリの取引を持ちかける。
    ―――かくして、普通じゃないもの同士の、手に汗握る心理戦が始まった!

    …………………………………………………

    終始緊迫した展開でページをめくる手が止まらない。
    大抵の人が覚えがある、この年代特有のスカイツリー並の自意識の高さにヒリヒリしながら読んだ。
    田井中の劣等感の裏返しである自分は特別かもしれない、というかすかな、それでいて切実な期待。
    二木先生への複雑な思いも相まって、すべてが、青い。
    でも、自分も、いまだにそこから這い出していないのかもしれない、と改めて気づかされた。

    ラストの一文も小粋で気に入った。
    覚えておこう、夏木志朋(なつき・しほ)さん。

    注意としては、少し暴力シーンがあります。
    でも、中高生くらいから読んでほしいな。
    もっとヒリヒリするかも。

  •  「生きづらさ」を抱え「普通」になりたい高2の田井中、「秘密」を抱え「普通」に生きている(ように見える)担任で美術教師の二木。この2人の奇妙な関係を描いた作品です。
     田井中と二木、共感するか否かを超越し、マイノリティの人たちの慟哭が伝わってくる内容でした。

     人の深層心理や二面性、また「普通」という重く層の厚いテーマにもかかわらず、著者は若者の内面を深く軽やかに言語化して見せます。
     最後まで一気に読めるのは、おそらくこの人物造形が優れているからでしょう。いやいや、夏木志朋さん。本作がデビュー作品とは恐れ入りました。

     マイノリティの理由は、嗜好や性癖の特性だったり、発達障害だったり様々でしょうが、多数派からはなかなか理解が得られないという現実の厳しさが、実にリアルに残酷に描かれており、考えさせられます。
     私たちは、「ちょっと変」「空気読めない」などと、人を括りで断定・臆測する危険性を自覚し、物事の受け止め方や感じ方の違いを、推測・理解する必要があるでしょうね。

     タイトルが『Bとの邂逅』(ポプラ社小説新人賞応募段階)→『ニキ』(単行本発売段階)→『二木先生』(文庫化段階)と、改題を重ねた本書は、人の生き方の葛藤が見事に表現された秀作でした。

  • 気付いたら読み終わっていました。
    展開という展開もなく、読了後に振り返ると平坦な内容だったな〜と思うのですが、なぜか最後まで没頭できました。

    作中では多くのことについて、詳細が語られないのですが、不思議とモヤモヤが残りません。

    読者に委ねているというと俗な言い方ですが、世の中ってそういうもんだよねっていう気持ちになります。

    自分以外の人が何を考えているかなんて分かるわけないです。

    そんな中でも、生きていくには自分以外の人と交流することは避けられないわけですが、顔を上げて生きていくには、やはり、自分のことを好きになることが本当に大事だと思いました。

    余白の多い小説なので、人によって感じ方がばらつきそうな印象です。

    ---
    褒められるかもしれないという期待と、恥をかくかもしれないという予感がせめぎ合った時、自分はいつも期待のほうを取っている気がする。「AかBか」と聞かれて、一人だけ「B」に手を挙げた時と同じだ。
    ---

  • すごい展開!

    ここまで先を読めない展開は無かったかに
    思う。
    途中これは何を読んでいるんだ?と思ってしまうくらい。それでも読み続けたいと思えた。

    人と違うとはなんなのか?
    人と一緒が偉いのか?
    相手を想える人が幸せなのか?

    色々と考えさせられました。

    著者の作品をもっと読んでみたいです。

  • ある日、担任である二木の”秘密”を知った田井中は二木に強請りをかけるが・・・
    どんな展開になっていくのだろうかと読んでいたら、中盤から思ってもいなかった方向へ進みラストは・・・
    「普通」とはなんだろう「~らしく」とはなんだろう…
    一見して“普通っぽい人”は果たして本当に普通なのか、普通の皮を被って何かを必死に隠して生きているのではないか。

    上手く生きていく=本当の自分(一部もしくは全部)を隠して生きる

    田井中は上手く(普通の人間として)生きたいけど、その反面自分は特別だと思いたい狭間で苦しみ、周りの人間と壁を作ってしまう。
    きっと昔の自分も田井中と同じような苦しみをどこかで感じていた気がします。
    いつから上手く生きるようになったのかを考えさせられる一冊でした。
    そしてラストのページ、終わり方に鳥肌が立ちました。

    • もりひろさん
      ほん3さん、こんにちは!!

      50番待ち!!人気作品なんですね!!(^^)
      ラストのページは思わず「おおぉ・・・・!!!」声に出してま...
      ほん3さん、こんにちは!!

      50番待ち!!人気作品なんですね!!(^^)
      ラストのページは思わず「おおぉ・・・・!!!」声に出してました!笑
      ほん3さん、の感想も楽しみにしております(´▽`)
      2022/10/17
  • 装丁に惹かれて購入。

    ちょっと嫌な気分にもなるし
    リアルな現代という感じもする。

    文章は読みやすいけれど中身が重く感じて
    私は読み終わるまで少しかかってしまった。

  • 普通ではない教師と普通ではない生徒の、友情とも師弟関係とも言えない対話を描いた作品。主人公に共感できるかできないか、もっと言えば自分をある程度普通ではないと思っているかどうか、評価はわかれる本だと思う。
    ていうか、「普通」じゃないっていうのはそんなに悪いことなんですかね。

  • 書店で手に取り、何の事前情報もなく読み始めた本書、タイトルから「金八先生」的なハートウォーミングな学園ものを想像していたのだが、全然違った(笑)。かなりヤバい本である。

    タイトルロールの「二木先生」は、主人公の担任で美術教師。すごく人気があるわけではないが、誰とでも適切な距離感で接し、彼のことを悪く言う生徒は一人もいない。しかし、そんか彼には隠された一面があった。逆にコミュニケーションが不得手で、変なやつ認定をされている主人公・田井中は、ひょんなことから二木先生の本当の姿を知ってしまう…。

    ざっと書いてはみたものの、この文章から本書の内容を把握するのは困難だろう。きっと多くの人の想像の斜め上をいく小説である。そして、いかにも現代的でもある。不穏な雰囲気の漂う表紙イラストに引かれて正解だった。

  • 教師と生徒が反目し合いぶつかりながらも最後には…的な青春ものではなく、歪みまくった人たちが心の殴り合いをする物語。ただ、なぜか爽快な後読感。

  • 「ちょっと変」な主人公・田井中は、みんなから馬鹿にされている。ある日、田井中は担任の二木が自分以上に「普通の人」から軽蔑される秘密をかかえていることを知る。【異常】は【個性】なのか。社会の除け者になってしまう人間はどう生きればいいのか。

    「普通でいたい」、でも、「自分はまわりとは違う‶特別な何者”かでありたい」みたいな、自意識。そんな葛藤がリアルに、くりかえし描かれている。

    田井中の子どものころのエピソードは読んでいてきつかった。「ふざけあい」の加減がわからなかったり、夢中になりすぎて体に異常をきたしてしまったり。
    そんな自分を殺そうとして、無理やり流行りの音楽を聴いて自分の好みを封印する姿もつらい。「普通」のふりをしようとしていた幼いころの田井中。

    二木先生もやっぱり「普通の人」の皮をかぶって生きているわけだけど。
    しかし、二木先生は良くない気がする・・・「秘密」をかかえていることに関してではなく、指導の仕方?が。田井中をけしかけるためとはいえ、みんなの前で許可なしに田井中が小説を賞に出そうとしていることを言っちゃうのは流石にダメでしょ・・・(まぁ二木先生は田井中に散々なことをされているけれど)
    ラストも、先生それでいいの?となってしまった。。。

    それでも、面白かったから一気にほぼ1日で読んでしまった。


    「自分にもし、大多数の人とは違う部分があって、それでも生きて行かないといけないとしたら、どうする?カミングアウトという言葉があるけれど、多数派の人のふりをする選択だってあるだろう。いくら世間から許されないような性でも、当人にとっては大事な心の一部なんだ。殺す必要なんてないし、そもそも無理な話だ」

全296件中 1 - 10件を表示

夏木志朋の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×