- Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591178737
作品紹介・あらすじ
【文豪・泉鏡花の少年時代を綴る、明治怪奇ミステリー!】時は明治21年――。古都・金沢で働く人力車夫の義信は、英語を学ぶために訪れた私塾で、寄宿生ながら英語を教える風変わりな美少年・泉鏡太郎(のちの泉鏡花)と出会う。高い受講料に断念しようとする義信に、鏡太郎はあるものを提供することで受講料を免除にすると持ち掛ける。それは”怪異の噂”を持ってくること。義信は鏡太郎とともに明治の金沢で起こる不可解な噂の真相を調べに、様々な場所へと出かけることに。お化けのでる武家屋敷、雨乞い後に必ず死ぬ巫女、金沢城跡に現れる幽霊など……はたして本物の怪異は存在するのか――?おばけ好きな偏屈美少年と人力車夫の青年による、明治怪奇ミステリー開幕!
感想・レビュー・書評
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文豪泉鏡花を探偵役にした小説を読むのは初めて。ちなみに自分が小学生の頃は、鏡花を女性作家だとばかり思っていた。その鏡花が金沢で、受験生でありながら私塾の英語講師をしていた時代のお話である。(ここは事実です)
鏡花は英語を学ぶ車夫の義信に、受講料の代わりとして本物の怪異に会わせてほしいと持ちかける。そして義信が持ち込む怪しい話の真相を一緒に調べはじめる。
本書は五つの話からなっているが、題名が其々「草迷宮」、「高野聖」、「夜叉ケ池」、「天守物語」、「化鳥」となっている。いづれも後の鏡花の作品のモチーフになったかもしれない物語という設定。そこに登場する義信、貸本屋の娘の瀧。不思議な力を持つ謎の美女・山姫。そしてまた彼らも後の作品に登場する人物のモデルになっていたのかも…
最後は、ペンネームの由来に関する話もあり、伏線も回収して綺麗にまとまった印象がある。 -
後に明治の文豪•泉鏡花となる少年•泉鏡太郎を探偵役に配し、人力車夫•義信の案内で様々な怪異に出会っていく顛末を描いたバディ物。5つの章がそれぞれ「草迷宮」「高野聖」「夜叉ケ池」「天守物語」「化鳥」となっており、後の泉鏡花作品を下敷きに作られている。
この作品を単体で読んでも面白いと思います。けれども、やはり上記の作品群を知っていると、面白さは倍増します。
泉鏡花の作品は、今では聞き慣れない古語が多用されていたり、明治以前には当たり前に親しまれていたような日本古来の"湿り気のある"幽玄な物語が展開される事もあって敬遠する人も多いけれど、真っ当な現実生活と怪異に満ちた幽玄な異世界が混濁する世界観を、当時の文壇で発表していた事は、現代の小説やアニメなどにも大きな影響を与えていると思います。
この作品をきっかけにして、読む人が増えるといいですね。
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少年時代の泉鏡花を主人公に、金沢の様々な怪異を解き明かしていく連作短編集です。江戸から明治に移行してしばらくの時期であり、人の認識もより現実的な方向に変わっていく時代です。本作では怪異な現象はあれど、現実的な説明はつくというのが基本スタンスです。
金沢が舞台ですが、くらがり堂シリーズとの直接的なつながりはないようです。ただ「暗がり坂の近くに古道具屋が」という描写はあるので、ゆるいつながりはあるのかも。こちらシリーズ化したら、何かあるかもしれませんね。 -
明治の文豪泉鏡花は少年時代に後の作品のモチーフになる事件や人物に出会っていたかも?というお話。金沢の描写も、当時の雰囲気がよく伝わってきて、キャラクターたちもみんな素敵。作者自身が妖怪についてしっかり研究しているのも分かり、面白かった。モチーフになった鏡花の作品も読み返したくなった。
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みっちりとした文量で読み応えがあります。
話としては「ナマモノ」のジャンルになります。実際に実在した幻想文学の大家「泉鏡花」の幼少期のifの話になります。なので、現実に実存した人物とは違うキャラクターとしての「少年の泉鏡花」と江戸から流れて来た人力車車夫「武良越義信」のコンビで本物の怪異を探す。怪異ミステリーです。
小節の合間には話の内容に合わせて現実の泉鏡花の小説がされていて、これを読んでから読んでみても良いかと思いました。 -
後の文豪・泉鏡花が怪異の謎を解き明かす、金沢を舞台にしたミステリー。金沢の人ならわかる地名や、金沢の人でも知らない人は多そうな(でもこの手の話が好きな人は知っている)場所、怪異話なども盛りだくさんで楽しめました。余談ですが、この方が発行された同人誌に金沢の妖怪事典があるのを今更知って地団駄踏んでます…。
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2024.01,09
さっそく手に入れました。紹介してもらって嬉しいです。読んでみます。
さっそく手に入れました。紹介してもらって嬉しいです。読んでみます。