いやはや、面白い本(?)が世の中にはあるものです。 しかも Amazon のカスタマー・レビューを眺めてみると結構多数の人が読んでいるうえに、星の数でいくと平均レーティング(?)が4.1?? まあこの本を購入して読んでみた KiKi が言うのも何ですけど、どうやら「昨今の日本が右化しつつある」という世界の認識はあながち間違っていないのかもしれません ^^;
KiKi は基本的にはこの本に書かれている「アメリカとはこんな国」という記述の大半は正しいと思っています。 それでも、この本には心の底から同調することができません。 何て言うかどこか喧嘩腰(しかもその喧嘩の相手が誰だかよくわからない ^^;)なうえに、煽動的な空気が充満している気がして、それが鼻について仕方ない・・・・。 さらに言えばアメリカをぼろくそに言っている割には著者の論旨の進め方は極めてアメリカ的で、ある意味で善悪を極端に分けて、どこから引用したのかも定かではない「通説」と呼ぶ考え方を提示し、これに対してこれまた極端な皮肉や罵声を浴びせかけてメッタギリにしている感じがします。 これって、KiKi がよく知っていたかつての上司(米系企業で本社から送り込まれてきていたトップマネージメント)の皆々様方の喋り方にそっくりです(苦笑)
アメリカという国は確かに著者が言うように「正義は我にあり」と妄信し、その正義をたてに善悪の二極対立構造を演出したうえで、彼らが「悪」とみなした相手を徹底的に叩き潰す・・・・・みたいな傾向が強いけれど、それはこの本もそっくり一緒だと感じました。
ただ、実はアメリカは綺麗ごとを言う割には血塗られた歴史が多いことも事実だし、それを認めようとせず善人面をしたがる国民性があるのも事実だし、日本人以上にアジテーションに弱い人が多いのも事実だと KiKi も感じています。 同時に KiKi たちが子供の頃、「世界史」の授業で何とかたどり着くことができていた時代までは二流国だったのも事実だし、そこから出てきたモンロー主義という外交政策の隠れ蓑を利用し、さらには第一次大戦での債権国という立場からのし上がってきた成金国家であることも事実だと思います。 彼らが実は日本を怖れていたというのも事実でしょう。 でもだからと言って日本を持ち上げすぎるのもどうかなぁ・・・・・。
戦後日本で蔓延したとされる「自虐史観」にも問題があるけれど、著者が言うほど政治情勢も国際情勢も単純じゃないと KiKi は思うんですよ。 もちろんある種の流れはあったし、その中の大潮流とでも呼ぶべきものは著者はかなり正確に捉えていると感じます。 そこを新書という小振りな書物の中に収めた力技みたいなものには感嘆するけれど、やっぱり彼の論旨の進め方には粗さ、大雑把さ、思い込みの激しさといったものを感じます。
KiKi が一番恐ろしいなと思うのはこのテのかなりお手軽な新書を読んだ人たちが、ここに書かれていることだけをある意味では鵜呑みにして、さらに言えば辟易としていた自虐史観からくる鬱憤を晴らしてもらったような気分になって、「溜飲が下がった」なんぞと仰り、「やっぱり日本人は偉いんだ!」と能天気な自信過剰に陥ることです。 自虐と自信過剰、ベクトルの最大限の振れ幅であっちへ行ったりこっちへ行ったりすることは決して「文明的」「知的」とは言えないと KiKi は考えます。
物事を解決するためには可能な限り問題を単純化して、その直接の原因となる事象を明らかにして、それに手を打つ・・・・・というのは、確かに1つの優秀な解決方法ではあるけれど、歴史だけはそこまで単純なものじゃない。 否、「歴史だけ」というのはちょっと狭すぎる解釈で、育ってきた文化・環境が異なる人間というしょ~もない生き物の心理が絡むものはおしなべてそこまで単純ではないことをもっと肝に据えるべきだと思うのです。 上述のような問題解決の手法が通用するのは目指すべきゴールが同じである場合にのみ有効なのであって、そこに根本的な摩擦の火種がある外交問題となるとそもそもその前提が崩れるのです。 でもその矛盾を巧妙に、綺麗に包みこんで思考停止に陥らせる魔法の言葉が「正義」とか「公平」とか「万人の利益」というような類の美辞麗句であることを忘れてはならないと思うのです。
著者が最後に書かれた以下の言葉には正直なところ目を疑ってしまいました。
「日本は負けたのではない。 負けたフリをしていただけだ。」
この言葉を、そう遠くない未来の歴史書に書けるように、今を生きる我々は振る舞おうではありませんか。
これは冗談か何かでしょうか?? 確かに負け犬根性丸出しというのも国際社会の中ではかなりみっともないし、あっちへもこっちへもへつらうばかりの姿勢は情けないから日本人はもっと己を語る言葉を真剣に探すべきだし、国際社会(特に対白人のケース)の中でも堂々と振る舞える自信を持つべきだとは思うけど、だからと言って「負けたことを認めずに負けたフリをしていた」と言いくるめる・・・・・これじゃあ、どこかの欺瞞だらけの国と一緒でしょう。
KiKi がこの本で最も評価している点を挙げるなら、アメリカという国はハリウッド映画が描くほど、かっこよくも、善意の塊でも、オシャレでもないということを堂々と言ってのけているところ・・・・かな。 アメリカが言っていることを見たり聞いたりするたびに思うことがあるんですよ。 それはね、
「あんたにそれを言われたくはない! だいたいそんな資格があるのか?」
っていうことです。 もちろん日本人は(と言うより KiKi は かもしれない)アメリカからも多くを学んだけれど、学んだ相手はアメリカだけじゃないし、ドイツから学んだこともイギリスから学んだことも、そして忘れちゃいけないのは日本から学んだこともそれに負けず劣らず多いということです。 そういう意味では KiKi は親米でも反米でもない(・・・・と言いつつ、米系企業にはかなり稼がせていただきました 苦笑)けれど、アメリカという国がいかに欺瞞に満ちているかは常々感じていただけに、そこをかなり赤裸々に書いてくれたという点は評価できると思っています。