- Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
- / ISBN・EAN: 9784594081300
作品紹介・あらすじ
徹底した当事者取材!発達障害“ブーム”の裏で生まれる「グレーゾーン」に迫る
近年、NHKが特集するなど話題になることが多い「大人の発達障害」。
「学生時代は大丈夫だったのに、社会に出たらミスばかりする」
「雑談が苦手で、周りから“空気が読めない人”と言われてしまう」
「衝動的にカッとなったり、一か所にジッとしていられない」
そういった悩みを抱えた人が今、「自分もそうかも?」と専門外来に殺到し、病院によっては数か月待ちという状況すら生まれています。
しかし、発達障害の“傾向”を指摘されながら、正式な“診断”には至らない「グレーゾーン」と呼ばれる人たちが相当数いるのをご存じでしょうか。彼らの多くは「クローズ就労(=会社には隠した状態)」で働き、「家族や友人にもなかなか理解してもらえない」という困難を抱えたまま暮らしています。そして、「自分もそうかも?」と思う人は、かなりの確率でこのグレーゾーンに当てはまる可能性があるのです。
「結局、どんな医者に診てもらったかで発達障害かどうかが決まっちゃう」(当事者談)
今では発達障害に関してさまざまなコンテンツが生まれていますが、グレーゾーン(成人)にフォーカスしたものは、ほぼありませんでした。そこで著者の姫野桂さんは「グレーゾーンを可視化する」という試みを始めます。当事者インタビューや当事者会への参加、精神科医、就労支援団体などへの取材を通じて、グレーゾーンとは何か?なぜこれほどまでに生きづらさを抱えるのか?を解き明かしていきます。
また、本書ではこれまで著者が見聞きした、発達障害の当事者やグレーゾーンの人が実践する「ライフハック」も収録しています。発達障害について知りたい人や、発達障害らしき症状に悩んでいる人にとって、少しでも生活向上のヒントになってくれたらうれしいです。
=============【著者プロフィール】=============
姫野 桂
フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)
特別協力/OMgray(オムグレイ)事務局
軽度の発達障害特性に悩む人の当事者会「ぐれ会!」や「グレーゾーンのための問題解決シェア会」を運営する。同会が立ち上げたイベントにはこれまで400人以上が参加。代表のオム氏は支援機関などに呼ばれて講演活動も行う
感想・レビュー・書評
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うちの小学6年の息子も発達障害の診断を希望してるのだけれど、診察を受けるのに数ヶ月は待たないといけないぐらい希望者が多いそうだ。幸い、診断がなくても支援を始めてもらえる環境があったので助かるけれど、それでも周囲に理解してもらうのは大変である。実は今まで周りから発達障害の疑いを指摘されたことはなく(ママ友に聞いたところ、うちの学校は発達については学校側から指摘することはないという噂)私一人が息子の発達に疑問を持ち、あれこれ調べてヤキモキしている状態だった。なのでこの本に出てくるグレーゾーンの人たちの気持ちはよくわかる。息子が「俺はわがままだ」と落ち込んで不登校気味になってやっと行政に相談。「診断がなくてもこれなら支援できますよ」と言ってもらえてホッとしたのと同時に「もっと早く相談すればよかった」と後悔した。子どもなので社会人よりはいくぶんスムーズに支援に結びついたような気はする。この本でも大人になってから発達障害の診断をもらうために病院をいくつも受診したり、発達障害の傾向があることを隠して苦しんでいたりと読んでいてこちらも苦しくなるような例が載っているが、この人たちのような場合もどこかで救われる機関や支援があればいいなと思う。
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逆に、完全な健常者って、いるのだろうか?
周りにいる人も、自分自身も、健常者だと思っていたけれど、グレーゾーンかもしれないなと思えた。
障害者だとか健常者だとか関係なく、自分が生きやすいように工夫していくのが大切。 -
「結局、自分のことを知った後に、どう自分が対処するか」(177ページ)
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発達障害グレーゾーンの人とは、「発達障害の当事者が『クロ』で、定型発達(健常者)を『シロ』とした際に、その中間に位置する層のこと」(6ページ)です。
この本には、グレーゾーンとして生きる人の思いや、グレーゾーン限定の茶話会の様子、医師からみた「発達障害」のこと、必要な支援の形、そして世の中を生き抜くために必要なことを、コンパクトに読みやすくまとめられています。
読んでいて思ったのは、グレーゾーンの方に限らず、人々の生きづらさの背景には「世の中の余裕のなさ」があるのだということです。
この本でいわゆる「定型発達(健常者)」とされている仕事ができて日常生活にあまり支障がない人でさえ、毎日がいっぱいいっぱい。
それが今の世の中の現状です。
しかも、それを「標準」とした世界で、できていることが前提の世界なのですから、本当に生きづらい。
この本を読んで思ったのは、「発達障害」と診断されることは、あくまでも「手段」の1つなのだということです。
診断を得て自分の心が落ちつくのであれば、診断されるということも必要でしょう。
でも大事なのは診断されるということよりも、「自分の特性を知る」ことと、「その特性に対してどう対処するか」方法を考えることです。
自分が困った場面を振り返ることで、自分の特性は知ることができます。
工夫のタネを自分で思いつけないなら、先人たちが行っている工夫をまず調べて、自分の状況に合わせていけばいいし、アレンジ方法をあみだすには他の人の力を借りたっていいのです。
それとまた別に、生きづらさを吐き出せる場所があることも大切だなと感じました。
世の中、悩みのない人はいないし、完璧の人もいません。
グレーゾーンさんから見れば、定型発達の方は完璧で悩みのない人に見えるかもしれません。
しかし、その人はその人なりの悩みを抱えています。外からはなかなか見えないだけなのです。
まさに「おしっこちょっぴりもれたろう」(ヨシタケシンスケ・著、絵本)のように誰しもが悩みを抱える世界、それが人間の住む世界です。
まずはできるところから始めればいい。
まずは自分がニガテなことを「特性」という言葉でまとめてみること、そして、自分にもそんな「特性」があるのだから、相手にも「特性」があると認めること。
グレーゾーンさんだけでなく、世の中の誰しもが、そこから出発していくこと。
それは世の中に生きづらさを薄くするタネを蒔くことでもあるんだな、と思いました。 -
発達障害の当事者に関わる機会があり、興味を持って購入。ひとまず興味のあるところを読んだ。
発達障害はグラデーション状のため、多様性がある。そのため、本書が紹介しているとおり、発達障害の傾向がありながら、診断は出ず、日常生活を送っている人がいる。そのような方々の生きづらさが紹介されている。
人の個性を認め合える社会、職場をつくりたいというのと「仕事ができる=有能」みたいな価値観を壊したい。発達障害グレーゾーンの方々をきっかけに生きやすくなる社会を考えたい。まあまずは自分が一番大事なので自分が生きやすくなるように…。 -
発達障害そのものも理解が
進まない中、クロでもシロでもない、曖昧な
位置にいるグレーゾーンの人々の悩みが
具体的に綴られている。
そもそも、正常ってなに?という根本的な
疑問が突きつけられている気がする。 -
ASD,ADHDD,ADHDなどの診断がつかないけど傾向があるというグレーゾーンのグレさんたちのケース紹介や、その人たち向けの支援などについて。登場人物ほとんど当事者。
ま、私も傾向あるだろうな。
こういうのは傾向の度合いが強いか弱いかであって、診断がつくかどうかも線引きをどこにするかなのではないか。
けっこう、受診しても「傾向がある」とのみいわれて様子見されてしまうことも多いみたいだね。
でも、手帳や薬が欲しいだけじゃなく、自分が納得したいから診断が欲しい、という人が多いように感じた。
自分が抱える生きづらさは、なんでなのか知りたい。理由を求めたいのか。診断がつかなくても、傾向があるんだなとわかるだけでも自分の分析がしやすくなるかも。
あとは、当時者会があるから、いろんな人の話を聞けて対策を共有したり、安心したり、するかも。 -
発達障害の傾向はあっても診断がおりないグレーゾーンの人々、「グレさん」たちへのインタビュー集。
自らも発達障害であるフリーライターが著者なので、学者からの目線ではなく、当事者たちに寄り添った生の声が聞けた気がした。
ヒントはあっても答えはない、そんなルポタージュ。-
2022/12/20
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自分はそれまで生育歴などで指摘されたことはなく、"普通"だと思っていて、検査した結果、発達障害の傾向有り(おそらくASD、二次障害有、LDの傾向有)だった。
(この本を読んだ時点では医師に傾向があるとだけ説明されていて)自分はグレーゾーンだと思っていたけど、どうもしっくりこないというか、物足りなかった。もう少し医学的なことや病院・当事者の実情に深く踏み込んだ内容が欲しかった。
当事者・支援者向けに発達障害を扱った本は沢山出ているけど、グレーゾーンを扱ったものは殆どないので、とっかかりには良いと思う。