「大人の引きこもり」見えない息子と暮らした母親たち

著者 :
  • 扶桑社
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594085681

作品紹介・あらすじ

部屋に引きこもる中年の息子との長い地獄のような日々を経て、ようやくたどり着いた解決の道。8人の母親たちが初めて語った闘いの記録。
「母親にできること、してはいけないことと」を母親たちが振り返る親子の再生物語。
                   *
ケース1「座敷牢のような部屋で10年間引きこもり」
ケース2「窓を開けて大声で怒鳴り散らして両親が家にいられなくなることも」
ケース3「高校生で登校拒否。13年間引きこもりに」
ケース4「アルバイトをしても続かない息子。部屋の壁に穴を開けることも」
ケース5「社交的で成績優秀な子が、まさかの引きこもりに」
ケース6「ゲーム依存症になり、大声を上げ、ご飯を食べなくなる」
ケース7「大学を出て就職後に突然失踪。戻ってきて引きこもった」
ケース8「夜間の仕事からうつ病を発症、7年間の引きこもり生活」

感想・レビュー・書評

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  • 「理解のない周囲の人達の存在」
    「相談する人は慎重に選ぶべき」
    「なんでもない日々の会話をしてくれる人が一番ありがたかった」
    「味方は自分しかいない。信じられるのも自分だけ。頼れる人は、自分で見つけていくこと」

    本書のケース1~ケース8で紹介されている人たちのお話は、あくまでもこうした脱出例もあるという「ヒント」として参考にして読んでいくしかないと思います。
    本書を読んで影響を受けたひきこもり家庭の方たちが、自分たちの場合もそうした方がいいと信じ込んで、皆高額のお金を払い、ひきこもり当事者たちのことを「施設」に入居させて「再生」させようとしてしまったら大変ですので。

    自宅から出て、NPO法人『ひまわりの会』村上友利さん、一般社団法人「若者教育支援センター」広岡政幸氏、『福岡わかもの就労支援プロジェクト』鳥巣正治氏たちの施設を利用してきた人たちの例のお話です。
    一人暮らしをしたり、施設に入所したり。

    広岡政幸氏に関しては、かなり悪い印象を持たざるをえない人達が多いようです。

    寮で共同生活をしながら、規則正しい生活習慣を身につけていき、心身の状態にもよるが、大抵の人は3~6ヶ月で就学または就労への道を歩みだす。職業訓練校に移動して、社会に出るための準備をする。
    その後は、就職先を提供し、スタッフがジョブコーチとして現場に入り、サポートを続けながら自立を応援していく。

    「ひまわりの会」では、センターの近くにマンションを確保し、当事者を住まわせている。

    人によりけりなのでしょうけれども、わたしは高額のお金を払ってわざわざどこかの「施設」に入居していくのは、かなりおかしなことだとしか思えません。

    一人暮らしができるだけの経済力や生活力のあるひきこもりの人達ばかりではないはずです。

    大人のひきこもりだとしても
    ・6ヶ月で家から出す・一人暮らしをさせる
    はかなり乱暴な社会復帰の目標だとしか思えません。

    2引きこもっている人の気持ち”
    「夜中になると考え込むことが多かった。自分の苦しみをどこに訴えたらいいのか。どうして自分だけがこんなにも苦しまなくてはいけないのかと。何の希望もないし。最後の方は、絶望すらなかったです。ただただ、何もない日々を過ごしていました。ときどき、嫌なものがあふれてきて、叫びそうになったり、気が狂いそうになることもありました。そういうときはじっと我慢して、ひたすら時が過ぎるのを待っていました。心の支えは、本を読むことだけでした」
    「自分はそこから次に行くことができなかった。もう少し自分はできるはずだ、と思っていたのにできなかった。早く次にいかないとと思っても、嫌だったことを思い出してしまい、前に踏み出せなかった。そのうちに『焦り』と『不安』で自分でも身動きが取れなくなってしまった」
    『引きこもっている人は、自分を卑下している。クズだと思っている。中には『親が悪い、社会が悪い』という人もいるが、それは、自分を正当化しないと生きていけないから』

    引きこもりから脱することができても、すぐに働き始められるわけではない。引きこもりの期間が長いほど、社会復帰をするまでに時間がかかる。
    このときに、また『待てない』親が多い。

    『外に出ていく自信はなくて、自分なりにそのときできることを努力しているのに、親には伝わらない。心が折れそうになったり、自暴自棄な気持ちになる。またひきこもろうかと真剣に思ったりしたことも。自分なりに努力しているのに』
    「『年齢的に無理だな。どうせ元引きこもりだから。今さら何を努力しても一緒だ』という逃げ道が頭をよぎる。堕ちるのは簡単で、その道は一見魅力的に見える。これから一生、本だけ読んで生活できたらそれでいい。パソコンだけできたらいい。お金は親がなんとか援助してくれるだろう。そんな事を考える。情けない考えだ。自分が嫌になる。友だちが結婚していると聞いたら、落ち込んでしまう。自分は何をやっているんだろうと」

    『現実逃避しているような印象を受けることもある』

    ”『引きこもり親の会」に参加した親の意見”
    『同じ境遇の人達と話すとホッとする』『いくと必ず気持ちが暗くなる。負のエネルギーを浴びて帰るだけだった』『仲の良いグループができても、その中で一人先に進む人がいると、他の人は落ち込んでしまう。すぐに仲が悪くなった』
    『親の会にいくら長く通っても、解決に結びつくことはない。ただ最初の頃にちょっと癒やされたり、安心するためだけの場所と考えたほうがいいのでは』


    ”よい支援団体は『高額過ぎる料金を請求しなくて』『暴力的なサポートをしない』”

    ・居場所を提供してくれる
    ・心療内科や精神科とも提携している
    ・社会復帰するためのトレーニングをしてくれる
    ・本人にあった就職先を探してくれる
    ・就職した後もしばらく継続して見守ってくれる

    “おわりに”でも記されていますが、本書で取り上げたのはあくまでも男性のケースだけで、女性の引きこもりの方も多数存在するという。女性の場合は『家事手伝い』などの名目で表に現れていないことも多いと思われるが、問題の深刻度は男性のケースと変わらないはずだ。

    『まだ戦いの途中です』が、今では『引きこもり状態』を脱出した例の話として『私の経験が役に立つのなら』と取材に協力してくれた母親たちを取材されて本にされました。

  • 大人の引きこもりの例が8例紹介してあり、最後に母親ができることと章立てしてある。結局、親はなんとかしなければと焦るが、空回りで有り、外部の支援機関と連携し、息子からの歩み出しを待つことが大事である。

  • 「大人の引きこもり」見えない息子と暮らした母親たち。臼井 美伸先生の著書。引きこもりは本人と家族の問題にされてしまいがち。本人の根性がない、本人の根気がない、親の過干渉、親の過保護、親の教育が悪い。本人と家族の問題が全くないとは言えないかもしれないけれど誰だって少しのきっかけで引きこもりになってしまうことがある。引きこもり問題は社会全体で解決すべき問題。引きこもり問題について深く考えさせられる良書。

  • 引きこもるきっかけは人それぞれで、その背景や経過、親御さんの心情が限られた文字数の中で丁寧に描かれていました。
    昨今、強引な「引き出し屋」のトラブルがニュースになることも多いですが、この本で具体的に紹介されているセンターはどこも当事者にしっかり寄り添われているところで「こういうところばかりなら良いのに」と思う反面、その熱量・労力が並大抵のことではないことも想像できるのでもどかしい気持ちになりました。

  • 親も子も、葛藤ばかり、それでも上手くいかないことも。
    このエピソードに載らなかった人たちが、この何倍もいるのだろう。
    そう思うと辛い。社会的に、手を差し伸べなければ、と思うが、それを誰がするのか…

    いつ我が身に起こることかもしれない。

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著者プロフィール

1965年長崎県佐世保市出身。津田塾大学英文学科卒業。出版社にて生活情報誌の編集を経験したのち、独立。実用書の編集や執筆を手掛ける傍ら、ライフワークとして、家族関係や女性の生き方についての取材を続けている。2017 年『「大人の引きこもり」を救え!』(扶桑社)に編集協力として関わった。2018 年に福岡市に移住。株式会社ペンギン企画室代表。

「2020年 『「大人の引きこもり」見えない息子と暮らした母親たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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