- Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
- / ISBN・EAN: 9784594087128
作品紹介・あらすじ
『三人の名探偵のための事件』『死の扉』の
英国黄金期本格の巨匠、待望の第6長篇登場。
「動機なき芸術殺人」の謎に名探偵ビーフが挑む!
森で発見された死体と、1年前の殺人計画手記。
錯綜する証拠から導かれる意想外の真相とは?
ケント州の「死者の森」で、頭部を銃で撃
たれた死体が発見される。地元警察が自殺
として処理するつもりだと考えた被害者の
妹は、警察を退職して私立探偵を始めたビ
ーフに事件の再調査を依頼する。一方、そ
の一年前、ウェリントン・チックルは一冊
の日誌を書き始めた。「私は殺人を実行する
決心をした。……そして、ここが肝要な点
なのだが、――私には動機がないのだ」
『野獣死すべし』ばりの構成の妙とフェア
プレイの精神で読者を魅了する、英国本格
の精華がここに登場!(解説・三門優佑)
感想・レビュー・書評
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レオ・ブルースのこちらはビーフ巡査部長もの。どちらかというとぼくはユーモラスなこっちの方が好みだ。なんと本作では田舎刑事だったビーフが退職して私立探偵となっていた。ワトスン役のタウンゼントがもう記録係を辞めるつもりでいながら、結局は悪態をつきながらも行動をともにするところからおかしい。奇妙な殺人者の手記が最初に明かされて、それに沿った事件が起こる。倒叙ものと思わせておいて、この著者のことだからそれでおしまいなわけはない。一転して二転しかけてあれれという結末が用意されている。最後のビーフの説明には思わずニヤリ。なるほどね、そうきたか。
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シリーズもののようだがこれが初読。20年経っての翻訳ということでオーソドックスなスタイル。探偵と探偵小説作家のコンビもよくあるパターンで手堅く手軽く読めた。但し探偵が魅力にかける。「わし」という一人称も好みの分かれるところかも。
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森の中で銃で撃たれた死体が発見され、ビーフは被害者の妹から依頼をうけて調査を始める。現地に赴いたビーフとタウンゼントはまず近隣の住民の話をきくことに‥
面白いのは、冒頭で読者にだけ提示されるチックル氏の手記。着々と殺人の準備をする様子が詳細に描かれ、まさにその通りの死体が発見される。手記の中では完璧な計画とチックル氏は思い込んでいるが、ビーフの聞き込みで実際には周囲に怪しさを振りまいていたのも笑えた。地味だが一捻りあるレオ・ブルースらしい楽しい作品。 -
ビーフ巡査部長は名探偵である。
たとえ彼がビーフ、Beef、"牛肉"などという珍妙な姓であっても、既に退職していて、今は実はビーフ"元"巡査部長であっても、彼は巡査部長と呼ばれ、そのように扱われる。
ウィリアム・ビーフ巡査部長は、優秀な私立探偵なのだ。
ビーフ巡査部長の活躍は、彼の友人タウンゼントによって記録され、出版されている。
本の人気は素晴らしく上々――とはいえない。
売上ははかばかしくなく、探偵の名声は無いも同然、探偵と記録者は、その理由が相手にあるのだと言い合っているところから、話は始まる。
『「わしに必要なのは、わしのことを真面目に受け止めてくれる人間だ」と彼は言った。
「君がたびたび読者を笑わせていたら、わしのことをいくら名探偵に見せようとしても無駄だ」
「ぼくは見たとおりのことを書いている」ぼくは言った。
「へっ、文学的良心というやつか?」ビーフは笑った。「わしに言えるのは、そいつは金にならんと言うことだ」 』 (13~14頁)
皮肉と文句の丁々発止の末、「ぼくは君の記録者を辞める!」と本気で告げたタウンゼントだったが、タイミングの妙といおうか、探偵の軽妙なる計らいといおうか、ともかく、彼は引き続きビーフ巡査部長の事件を記録することとなった。
舞台は1947年、戦争が終わって間もないイギリス、ケント州である。
バーンフォードという名の、ある手記によれば『古びた赤煉瓦の家々や、四角い教会塔のある愉しい村』(23頁)で、事件はおこった。
冒頭こそイギリス的な笑いを呼び起すものだったが、このあと挟まれる文章が、その趣を変える。
犯人の手記である。
これがなんとも気持ちが悪い。
冷酷で、感情というものに欠ける、陰にこもって粘着質の、しかし一見そうとはわかりにくい、薄ら寒い文章である。
そしてこの手記の存在が、思考をややこしくするのだ。
読者の思考や推理は、自然とこの手記に導かれる。引きずられてしまう。
しかしその行き先がわからない。正しいのか、誤っているのか・・・・・・?
練達のミステリー読者なら、手記を知った上で愉しく推理し、読むこともできるだろう。
けれども、私はこの手記の存在に混乱され通しだった。
さて、あなたはどうだろう?
著者レオ・ブルース(1963~1979)はケント州生まれ、つまりこの『ビーフ巡査部長のための事件』は、著者の故郷が舞台である。
今日の日本ではあまり知名度の高くない作家だが、彼と彼の作風、さらにこの作品については、巻末にとっくり説かれている。
これも大いに読みどころだ。
その上、扶桑社では『レオ・ブルース短編全集』(ただの短編集ではない、短編全集!)を刊行予定だという。
翻訳者、解説者、出版社の熱意に圧倒された私は、レオ・ブルースを、イギリス本格ミステリーの代表として、読まねばならない作家だと認識した。
いくぶん玄人好みで、正直にいえば、気軽に手をのばしにくいと感じるのだが、いずれ出る短編全集はもちろん、シリーズやほか作品の数々を、これから読みにかかろう。
そのうち練達のミステリー読者に、私もなれるかもしれない。 -
殺人事件と疑われる事件発生を巡る冒頭を経て、第二章以降しばらく、「私は殺人を実行する決心をした」という人物の手記が続く。動機なき"殺人のための殺人"を敢行するため、殺人を実行するための舞台や方法について検討が進む。
捜査活動が進んでいくが、果たして殺人の犯人は誰なのか?手記の計画通りに犯罪は実行されたのか?
解決それ自体は格別、そういう終わり方なのというところがやや不満が残った。せっかく殺人を目論む者の手記という魅力的な方法を用いているのだから、そこをもう少し活かして欲しかった。 -
2021/02/07読了
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あ、そういうことねって感じ。