- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784595316036
感想・レビュー・書評
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・イデアにはいくつかの特徴がある。(1)美しいものは多数あるが、美しさは一つしかない。同じ名称で呼ばれる複数の事物に対して、それらに共通の性質を備えた単一のイデアが想定される。(2)個々の美しい事物は、時の経過と共に変化して美しさを失う(花は萎み、草は枯れる)。また隣にもっと美しい大輪の花束が出現すれば、一輪の花の小さな輝きは失われる。そもそも粗野な無骨者にはその美しさが分からない。これに対して美のイデアは、時間の推移、観点の取り方、他との比較、見る人の主観や趣味などによって、美しくあったりなかったりすることがない。恒常的に「美しい」のである。また(3)個々の美しい事物は見たり聞いたりできる感覚の対象であるが、美そのものを直に見ることはできない。それは感覚とは独立の<思考の働き>によってだけ把握される対象である。そしてさらに(4)個々の美しい事物が「美しい」と呼ばれるのは、美のイデアを根拠・原因にしている。眼前の薔薇の美しさは、色合いや形のよさや素材など、その薔薇がもっている諸性質に起因するのではない。美のイデアとの何らかの(分有、臨在、共有などと称される)関係をもつことによって説明されるのである。
・石は何万回上方に放り投げても、上昇するようにはなるまい。人間のうちに様々な徳が生じてくるのは、単なる自然本性の所産でもなければ、無理やり自然を捻じ曲げてなされるのでもなく、本来備わっている素質が訓育と反復を重ねて開花する過程なのである。そこで、また悪辣な行為の累積や不健全な習慣が悪徳を形成するのであり、「字が下手な人」のように、いったん形成されてしまった悪徳は容易に解消されない。行為の発端は自由であっても、いったん形成された悪性に関してはもはや自由な選択の余地はない。悪人の悔悛や矯正の可能性に関して、アリストテレスは冷淡である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ちょっと知識を仕入れたいなぁという方の味方、放送大学教材シリーズ。
本書は現代日本に生きる私たちにとっては時間的にも空間的にも遠い世界にある西洋古代・中世哲学の概説書となっており、専門学術的な議論等は一切なく純粋に"教材"として気軽に哲学世界への旅を楽しむことができます。
西洋古代・中世哲学に興味があり概観したい方には魅力的な一冊となっています。