ほとほと 歳時記ものがたり (毎日文庫)

著者 :
  • 毎日新聞出版
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本棚登録 : 85
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620210438

作品紹介・あらすじ

人生の「四季」を描いた髙樹文学の最高傑作! 日本人の感性が凝縮された季語を縦糸、忘れえぬ人との邂逅を横糸に、幻想的に紡がれた24の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 俳句や短歌を詠むように、短編を詠む髙樹さん。
    切なかったり、愛しかったり、ゾッそしたり、でも神秘的で上品なそれぞれの季語の物語。
    良き日本、四季、季語。そんな風流なものに思いを馳せてしまう読後感だ。

  • 「ほとほと」書評 美しく哀れな世界作る人の情|好書好日(2019.3.9)
    https://book.asahi.com/article/12193193

    高樹のぶ子 『ほとほと』文庫化 | 毎日新聞(有料記事)
    https://mainichi.jp/articles/20220305/ddp/014/040/018000c

    ほとほと 歳時記ものがたり【毎日文庫】 | 毎日新聞出版
    https://mainichibooks.com/books/essay/post-544.html

  • 好き。大事。
    珠玉という帯の言葉に偽りはない。
    日本の四季をしっかりと確実な日本語で表現し、物語は感情を揺さぶり、切なさに身もだえしたくなる。
    何だかんだで一話目の「ほとほと」が好き。
    本のタイトルがこれでまさかと思ったけど、そのまさかだった。
    解説で「紫陽花」は大爆笑って書かれてたけど、それは承服しがたい。人生百戦錬磨にはそうなのかもしれないけど、わたしはあー、泣きたくなるよね、これは、と、同情を越えて自分も悲しくなった。

    どの物語も生と死が隣り合わせで、ちょっと不安定なときに読むと辛くなってしまうところもあるけれど、死者との対話に日本的な情緒を感じさせる物語集だった。

  • あとがきに代えた「季節の力」にこの本の意図が書かれている。
    ”人間は季節に支配される弱者であり敗者である”
    同じように行動しているつもりでも季節に包まれその意味は変わってしまう。ほんとうにそうだ。
    (”季節の移ろいを暮らしに取り入れる”というような上から目線よりよほど腹落ちする。自分は”地球にやさしい”という言葉が嫌いだがそれを同じ感覚かもしれない)

    24の短編に通底しているのは死者や人ならざる者との交感、美しい表現の中に、時に下世話だったり時にメタな著者視点が出てきたり、意外な結末であっさり話を打ち切ってきたり、なかなか食えない面白さがあった。

    表題作の「ほとほと」のひさ代の暮らしは自分の超理想だ。

    P10 カンカンでもコツコツでもなく手を打ち当てて、ほとほとなる戸は、たぶん雪で湿っているのだろう。密やかな、おおやけにしたくない負い目も、その音に込められている気がする。

    P10 どうぞここでゆっくりなさってください。そしてときどき、昨夜のように、私の前にお出ましください。二人でたのしく、ほとほといたしましょう。

    P49 自立とは、自分の欲望を手放さないことでもある。結衣子は最後まで自立した女として死ぬ覚悟ができていた。(エイプリルフール)

    P177 この世に地獄があるなら、その地獄が自分を受け入れてくれるかも知れない。それでもいい、自分を待ってくれている場所があれば、このまま歩いて辿り着きたいと思った。

    P185 とことん苦しめば、怨念はおのずから力を為すものだ。わかるかね?とことん苦しみ憎み、呪い、悲しむ。それが力になる。いいかな。中途半端はよくない。苦しみも孤独も怨みも、命のギリギリまで突き詰めるのだ。そうすれば、呪いは祈りになり、憎しみは優しさを生み、怨霊は神になれる。(夜の梅)

    P227 水を呼び寄せ雨を忍ぶ、ぼってりと必死な日本的紫陽花ほど季節を感じさせるものはないだろう。(紫陽花)

    P274 モニワ羽虫は施設に入ることになりそうだという事実を、自分の運命とは思えなかったし、本心ではこのままこの草地の茅萱の中で、ウシオイ虫と一緒に死んでしまいたかったのだ。けれどウシオイ虫は運命を受け入れた。だから自分も受け入れなくてはならない運命があるのかもしれない。
    虫たちの沸き上がる鳴き声が、一瞬静まった。(虫時雨)

    P315 人間は季節に支配される弱者、ある意味では敗者です。塗り替えられ、消し去られ、何かを染め付けられる。そして生き返る。季節は抵抗できない相手なのです。それを肯定するしかありません。このような人間の物語は、今生のみで終始するものでもありません。境もなく、今生とあの世を行き来してしまいます。これもまた季節の力が働いていると思えます。いったん終わっても、蘇るのが四季。(季節の力)

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著者プロフィール

作家
1946年山口県生まれ。80年「その細き道」で作家デビュー。84年「光抱く友よ」で芥川賞、94年『蔦燃』で島清恋愛文学賞、95年『水脈』で女流文学賞、99年『透光の樹』で谷崎潤一郎賞、2006年『HOKKAI』で芸術選奨、10年「トモスイ」で川端康成文学賞。『小説伊勢物語 業平』で20年泉鏡花文学賞、21年毎日芸術賞。著作は多数。17年、日本芸術院会員、18年、文化功労者。

「2023年 『小町はどんな女(ひと)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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