- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620318561
作品紹介・あらすじ
なぜ貧困は拡大してゆくのか?なぜ労働の尊厳は奪われたのか?なぜ人間らしい生活が蹂躙されているのか?10年にわたって貧困の現場を伝えてきた新聞記者が、丹念な取材と緻密な分析、そしてこみ上げる思いによって書き上げた入魂のルポルタージュ。
感想・レビュー・書評
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一貫して労働問題の取材をつづけてきた『毎日新聞』社会部記者が、近年の取材をふまえて書き下ろしたルポルタージュ。
「派遣社員」、「名ばかり店長」、外国人労働者などの過酷な労働現場、定時制高校生たちの厳しい就職事情、「過労うつ」や過労死の現実、生活保護申請を閉め出す自治体の「水際作戦」の実態……。さまざまな角度から、日本の「貧困の現場」が浮き彫りにされていく。
働いて、自分でお金を稼いで生活する――たったそれだけの普通のことが、格差社会の底辺においてはこれほど困難になってしまっているのかと、改めて驚かされる。
本書は昨年8月に刊行されたものだから、昨秋来の世界金融危機を受けて、「貧困の現場」の状況はここに描かれたよりもさらに過酷になっているに違いない。
序文が「貧困の現場から、悲しみと怒りを込めて」と題されている。その言葉どおり、著者は本書のあちこちで涙を流し、行政の冷たさや大企業経営者の無慈悲に怒りの声を上げる。
《恥ずかしい話だが、大集会の取材メモを見返すと、金城さんの話の途中からメモが涙でにじんで何を書いているのか判読できない。》
……というふうに、著者はすぐに取材相手に感情移入して涙を流す。ずいぶん涙もろいジャーナリストだなあ、と苦笑してしまうが、この「熱さ」は貴重だし、好ましい。大新聞の記者にもこういう人がいるのか、と驚いた。
徹して弱者の側に立つ著者の情熱と「共感力」が全編に脈打つ、力作ルポルタージュ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本では貧困は自己責任論と一緒に語られて来た。しかし、少なくとも本書で事例としてあげられる中学生や高校生に「自己責任」はない。
社会から排除された状態として貧困があり、貧困は社会が強制するものだという「社会的排除」という認識がなかったし、今もない。いつでも貧困が個人の問題として語られてしまう。
しかし本書を読むと、現在貧困の状態にないとしたら、それは幸運の賜物で、いつでも誰でもがたちまち貧困に陥ってしまう、まるで綱渡りをしているかのような状況にあることがわかるだろう。そして、一度貧困の状態になってしまったらそこから脱出するすべは少なく、むしろ再生産されていってしまう。
同じ地域に、国に、貧困の状態にある人がいる。まず、そうじゃない状態にする、どうしてそれだけのことが僕らはできないんだろう。何故なんだろう・・・・・。いま僕は、ものすごく居心地が悪い。 -
読みやすかった。
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<内容>
日本における貧困問題を参与観察によって、明らかにした作品。国際競争力の強化という名の下に、底辺への競争が進んだ結果全ての労働者が過酷な状況におかれ、労働から疎外された人間は生死の境界を生きている。
<感想>
こんな日本に誰がした…いや、もとからこんな社会なのかもしれない。個人一人一人が代替可能な商品として捨てられる日が来るなんて昔の人は思わなかっただろう。 -
格差社会が叫ばれる中で、この本はいつわが身に降りかかってもおかしくないと思いました。筆者さんが貧困社会への怒りを持ってこの本を書いていることが伝わってきます。その分ひとりよがりに聞こえなくもない部分もありますが、ここに書かれている事例は一つの真実なのだと思います。
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派遣労働・生活保護の現場で、貧困が生産・再生産されている姿を映し出した良著。
うちの会社も「来月から熟練派遣工がクリーニング期間に入りますので生産性落ちます」なんていう会話がスラスラ流れる怖ろしい会社なのですが、こっちはこっちとして国内工場子会社を集約してその過程で(子会社の)正社員も半分切ってという事態がその前にあるわけなので、じゃぁそこで何か解があるのかというと売上/利益を伸ばすしかないわけだったりします。
個人的には10年前のプチバブルのときにメイテックが儲かっていたり非正社員の方が収入がよかった時代を知っている訳なので、同世代の非正規にはあまり同情心はなかったりはするのですが、いまの若年層の実情にはいたく憤りを覚えます。
しっかり調べた訳ではないので私論といっても感想レベルですが
・生活保護の医療費は自己負担(1割)にすべき
・水際はやめて、支給レベルを下げる(医療費廃止等)
・子育て/教育支援はしっかりやり貧困の再生産を防止する
あたりが落とし所というか妥当なとこじゃないかなと。 -
フォトリ68。
自己責任という言葉の一人歩き、本当に悲しい。日本人ボランティアが海外で拘束された時、この言葉を使った首相は、かつてハイジャック事件で「人命は地球より重い」と言った首相のお子さんだった。時代、社会の変化でひとくくりにして良いものやら。
この先何十年か、マイノリティとなる日本の若い人が幸せになってくれると嬉しい。 -
言いたいことはわかるんだが、著者の思い入れが強過ぎて気持ち悪い。これだと共感は得られないだろうな。
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今までの非正規雇用に対する見方を180度変えてくれる本でした。
労働は人の幸せや生きる権利を奪う場所ではないはずなのに、それを強いられている人がなんて多いこと。人が人にする態度か?と思う描写もたくさんあった。貧困は貧困を呼ぶのか?傍目には豊かな国はちっとも豊かじゃなかった。世の中のうまい口車に騙されてはいけません。