トラウマ・歴史・物語 持ち主なき出来事

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622071099

作品紹介・あらすじ

"トラウマ"から何を読みとるか。フロイト『モーセと一神教』、デュラス/レネ『ヒロシマ私の恋人』、ド=マン、ラカンらを通して、問題の可能性を開示する衝撃作。

感想・レビュー・書評

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  •  「トラウマ(心的外傷)」の概念を、精神分析、文学、映画を横断しつつ論じ、今日の「トラウマ・ブーム」の嚆矢ともなった著作。読み通してみると、本書の理論的潜在力がこの「ブーム」のなかで充分に汲み取られていないのでは、と思わざるをえない。トラウマ的想起という非随意的な想起を潜り抜けるところから、歴史がどのように語り出されうるのか、またそこから歴史そのものをどのように捉え直せるか、という問題について、非常に繊細な考察が見られるのだ。『夢判断』、「快感原則の彼岸」、『モーセと一神教』といったフロイトの著作を軸に論じた章もさることながら、デュラスとレネの『ヒロシマ・モナムール』のなかに、物語を交わし合う場が開かれる瞬間を見届けていく解釈が興味深い。そしてとくに示唆的だったのは、トラウマ的想起を「目覚め」と捉え、そこに過ぎ去った、死者としての他者への応答の契機を見て取っている点である。この「目覚め」をベンヤミンが歴史の契機として語る「目覚め」と接続し、歴史を語ることを彼がボードレール論で語る「ショックの経験」として再考したい誘惑に駆られる。クライスト、カント、ド・マンを論じた一章の焦点が定まらないのがやや惜しまれる。原書とともに再読したいところ。

  • 烏兎の庭 第三部 書評 8.12.06
    http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto/uto03/bunsho/duras.html

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