- Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622071488
作品紹介・あらすじ
戦場とは?軍隊とは?小津の「戦争体験」とは何だったのか。新資料を発掘しつつ解き明かされる人間ドキュメント。-「小津安二郎陣中日誌」全文収録。
感想・レビュー・書評
-
東2法経図・6F開架:778/Ta84//K
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【選書者コメント】「軍人小津安二郎」が本書の売り文句であるが、「写真家小津安二郎」が発見できる小津の多才さに着目する良著。
[請求記号]7700:1341 -
戦争から還ってきてからも、戦争とあんまり関係のないような映画を撮っていた人の従軍記というのは、
記録の信頼性というものを考える上で重要だと思います。
嘘をつく必要がないだけではなく、
「なんでも映画のネタにしてやる」と思って書いているから、
普通目が届かないようなところまで観察して書かれているのです。
しかも「政治なんかとあんまりかかわりたくない」と思っている人だから、
イデオロギーのバイアスがかかっていなくて、ぽろっととんでもないことを書いたりするのです。
愛国者の奮闘紀にも、「ひどい体験をした」という書き物も、それぞれ個々の作品としては心を打ちますし、
記録としての重要性はもちろんあります。
ですが、そういう記録には、「俺たちがどんなに一生懸命だったか」「どんなに悲惨な目にあったか」を強調しようとするきらいがあって、
「実際に経験している人は誰でも知っているのだけれど、いちいち書こうとしないディテール」が見落とされていたりするのです。
そういったディテールは、「殺し合いの中でさえもネタを拾おうとする」観察者の精神がなければ、
歴史の上で「なかったこと」にすらされてしまうのではないかと思うのです。
私の戦争に対する考えに大きな影響を与えてくれたのは、今思い返してみると、
大文字で語られる公式見解ではなく、そういった
「細かい、何気ないディテール」に隠されていたヒントだったと思うのです。