本読みの獣道 (大人の本棚)

著者 :
  • みすず書房
3.60
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本棚登録 : 38
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622085041

作品紹介・あらすじ

子鹿のバンビはどこへ行ったのか。『君たちはどう生きるか』をどう生きるのか…。『コタンの口笛』『飛ぶ教室』『若草物語』ほか1950年代児童書の再読から戦後精神の原点を問う「いつか来た道とおりゃんせ」、近代文学を手がかりに失われゆく世相・文化をあざやかに捉えたエッセ・クリティック「一切合切みな煙」、日々の糧にしてネット社会とは一切無縁の超アナログ読書術「ふるほん行脚」。小津研究で知られる映画・文化史家が縦横に分け入り綴った読書の「けものみち」。

感想・レビュー・書評

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  • 大人の本棚シリーズの2冊目。
    著者は小津安二郎の研究家として有名で、一冊読んだことがあるだけ。
    文化史家としての側面は本書で初めて知った。
    超人的な読書量で、子どもの頃読んだ本を再読していく。
    ちょうど本読みが獣道に分け入るように。
    これがかなり面白く、岩波少年文庫やハウス名作劇場を見て育った人は相当楽しめるかと。

    ⒈ いつか来た道 とおりゃんせ  50年代児童が読んだ本
     「アンデルセンのこと、なぞ」
     『小公子』『小公女』をめぐる女性たち
     『三太物語』に読む「戦争と平和」
     ロビンソンと末裔たち  漂流綺譚三代記
     銀のスケートはわが蘭学事始
     『若草物語』をこんな風に読んでみた
     みんながハイジを愛したので
     『飛ぶ教室』から先生がいなくなる
     コタンで口笛が響く前に
     「事実は奇なり」と申しまして
     子鹿のバンビはどこへ行ったのか
     『君たちはどう生きるか』をどう生きるか

    それぞれの章ごとに違う筆致で、読み応えがある。
    生まれて初めて読んだ大人の本は村上元三の「佐々木小次郎」で、小学3年の時だったというお方だ。年代ははるかに離れているが、巧みな話にたちまち惹き込まれた。
    ただ過去を懐かしむのではなく、そこに置き忘れたものを引き出す。
    良いものも悪いものも。「批評なき懐古を禁じ手とする」という姿勢だ。

    2章はエッセイ2編。私は特にここが好きだ。
    3章は古本屋行脚。古本屋の店頭に置いてある100円均一から数冊買うという買い方。
    千円以上だと棚に戻し、決して稀覯本のコレクターなどではない。
    驚くのは、その全ての本に感想を記していること。
    ところが、驚異的な読書量を特に誇るでもなく、むしろ恥じ入っているかのようだ。

    文章を書いて暮らしの糧にするのは、いかがわしきアウトサイダーのすること。
    決して堅気ではないという社会通念がまだ生きていた時代だ。
    愚かで正直で弱くて、それらを抱え込んで作品に昇華させていた。
    現代のように、作家や芸人が文化人の顔をして一言居士の真似をしたり、大衆の前で講演会を開いたりなどは、想像もできないことだったのだ。
    著者の言葉の端々に、控えめな潔さを感じるのはそのせいかもしれない。

    「若草物語」はタイトルが名作であると言い、「ハイジ」の原題は「ハイジの修行と遍歴の時代」という珍妙なものだったこと。
    世界的な人気で、作者亡きあとは別人が続編2作を書いた。
    おじいさんの謎の前半生も、4作目のラストで明かされるらしい。
    最後の「君たちはどう生きるか」の読みが実に真っ当で胸を打たれた。
    たぶんここの数行が、本書の白眉だろう。

    聞いたこともないような書名だらけなのに、語りに魅了されてたちまち読んでしまった。
    折に触れ読み返したい。
    2011年の暮れに泉下の人となられた著者。
    今さらこんな読者が現れたことに苦笑しているかもしれない。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      nejidonさん
      目次を見て唸っています。此の本も読みたいリスト行き、、、
      nejidonさん
      目次を見て唸っています。此の本も読みたいリスト行き、、、
      2021/03/19
    • nejidonさん
      猫丸さん♪
      長くなってしまうので泣く泣く省いた部分です。
      一章だけでも相当オモシロイのですよ。
      獣道に入る愉しさはもちろん、気骨のある...
      猫丸さん♪
      長くなってしまうので泣く泣く省いた部分です。
      一章だけでも相当オモシロイのですよ。
      獣道に入る愉しさはもちろん、気骨のある方だったのが随所に現れています。
      猫丸さんはきっとお好きだと思いますよ(^_-)
      2021/03/19
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      nejidonさん
      「コタンの口笛」を読み返したくなっている。
      先日、MUJI BOOKSの文庫本「人と物」3 小津安二郎を購入して、積読...
      nejidonさん
      「コタンの口笛」を読み返したくなっている。
      先日、MUJI BOOKSの文庫本「人と物」3 小津安二郎を購入して、積読本の仲間入りをさせたところです。
      https://www.muji.com/jp/mujibooks/archive_hitotomono.html
      2021/04/07
  • 覚え書:「今週の本棚:若島正・評 『本読みの獣道』=田中眞澄・著」、『毎日新聞』2013年06月16日(日)付。 - ujikenorio’s blog
    https://ujikenorio.hatenablog.com/entry/20130621/p3

    田中眞澄『本読みの獣道』 | トピックス : みすず書房
    https://www.msz.co.jp/topics/archives/08504.html

    本読みの獣道 | みすず書房
    https://www.msz.co.jp/book/detail/08504/

  • ふむ

  • (縲取悽縺ョ髮題ェ後??201401縲擾シ壼ケウ螻ア蜻ィ蜷峨?縲檎ァ√?繝吶せ繝?縲?

  • やはり古本巡りをしているところが一番楽しく読めました。

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著者プロフィール

1946年、北海道に生まれる。慶應義塾大学文学研究科修士課程修了(国文学専攻)。映画・文化史家。著書『小津安二郎のほうへ——モダニズム映画史論』(みすず書房 2002)『小津安二郎周游』(文藝春秋 2003/岩波現代文庫 2013)『小津安二郎と戦争』(みすず書房 2005)『ふるほん行脚』(みすず書房 2008)『本読みの獣道』(みすず書房 2013)、編著『小津安二郎・全発言 1933-1945』(泰流社 1987)『小津安二郎戦後語録集成 昭和21(1946)年—昭和38(1963)年』(フィルムアート社 1989)『全日記 小津安二郎』(フィルムアート社 1993)『小津安二郎「東京物語」ほか』(みすず書房 2001)ほか。2011年12月死去。

「2020年 『小津安二郎「東京物語」ほか【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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