情報リテラシーのための図書館――日本の教育制度と図書館の改革

著者 :
  • みすず書房
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本棚登録 : 166
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622086505

作品紹介・あらすじ

図書館情報学において、「情報リテラシー」は情報テクノロジーの発達とともにその習得技術の更新が求められる、生きたテーマである。
これからのネット社会において、氾濫する情報を見極め、事実を知恵へと変えていくには、社会的機能としての図書館の存在・役割がますます重要になるだろう。人々が情報リテラシーを備え、その能力を活用して生活していくためには、ハブとしての図書館が利用者の情報リテラシーを導き、技術を提供する役割を担うことが課題となってきたといえる。
そんな今日、学校教育での情報リテラシー教育もまた切実さをましている。だが、これまで日本の教育現場において、情報リテラシー教育は本腰を入れて取り組まれてこなかった。本書では、日本の教育制度、図書館の歴史を再考し、情報リテラシー教育のために、両者が協力してこれかたどのような改革をしていくべきか、欧米の学校との比較をまじえつつ、その方向を示す。

感想・レビュー・書評

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  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    単に図書館に関する内容なのかと思ったが、図書館よりも情報リテラシーに関する内容となっている。
    情報リテラシーは様々な情報検索システムを活用したり、図書館のリファレンスを活用することで一般的によく言われるセキュリティや個人情報の扱いとは異なるものだと言うことを解説している。
    本書では日本とアメリカ・ヨーロッパで情報リテラシーの意味合いに違いが生じた要因を江戸・明治にまで遡り、歴史的に説明しており、その違いによる問題点を提示している。
    さらには日本の教育業界における変革に関しても説明し、徐々にではあるが変わってきていることが説明されている。

  • これからの図書館は、情報リテラシーを導く機関としての社会的役割を、自覚的に担う必要がある。日本の教育制度と図書館の歴史を再考し、今後の課題を示す。

  • 根本彰著『情報リテラシーのための図書館-日本の教育制度と図書館の改革』(みすず書房)
    2017.12.1第1刷発行

    2022.9.26読了
     情報リテラシーとコンピュータリテラシーを混同している人向けに書かれた本と推察するが、思いつくままに書きだしたのかと疑いたくなるほど、読みにくい。論理展開の整序について工夫すべき点があるのではないかと感じた。

     なお、本書の本旨は、従来の教育課程では情報リテラシーの習得が必ずしも重要視されてこなかったことを指摘し、今後の教育改革においては、情報リテラシー教育の充実と情報リテラシーを推進する装置としての図書館改革を同時に進めていく必要がある、というものである。

     明治期以降、黙読と暗記を中心とした教育課程に収斂していったとあるが、その理由について本書は詳しく述べていない。
     図書館を含めた教育機関が思想善道の一翼を担っていた歴史を考えると、むしろ、この国は市民が批判的思考を持つことを嫌悪しているのかもしれない。近代初期にみられた立身出世の風潮は例外として、立憲君主制というタガが嵌められている以上、批判的思考が育たないのも無理からぬことだろう。集団主義的適応能力が美徳とされる日本において、情報リテラシーは食い合わせが悪いのである。

    【目次】
    はしがき
    第1章 「エウリディケを冥界から連れ出すオルフェウス」
     1 コローの絵のオリジナルを求めて
     2 絵画検索のための情報リテラシー
    第2章 読書大国からネット社会へ
     1 リテラシーと情報リテラシー
     2 読書感想文と自由研究
     3 フロー情報とストック情報
    第3章 情報リテラシー教育の必要性
     1 ネットを使いこなす?
     2 情報リテラシーの過程
     3 日本における情報リテラシーの課題
    第4章 文化史的背景
     1 日本人のリテラシー
     2 武士の学びと庶民の学び
     3 文字社会の形成と民衆読書
     4 文庫と知のネットワーク
    第5章 近代文字社会における図書館
     1 近代における学びの変遷と読書
     2 明治・大正における図書館
     3 昭和期の図書館
    第6章 図書館と図書館員
     1 図書館の昔と今
     2 図書館の基本的な業務
     3 日本の図書館員の資格制度のあり方
     4 アメリカの図書館職
    第7章 図書館と博物館を比較する
     1 専門職の社会学
     2 博物館法と図書館法
     3 資格と養成
    第8章 大学入試改革と学習方法・カリキュラム
     1 近づいている大学入試改革
     2 欧米の学校における学び
     3 情報リテラシーのための図書館
    第9章 情報リテラシーの回路
     1 ふたたび、図書館員のイメージ
     2 リテラシー、情報リテラシー、高次リテラシー
     3 インフラとしてのデジタル情報ネットワーク
     4 情報リテラシー装置を使いこなせたか
    引用/参考文献
    索引

  • ふむ

  • 参考文献として。

  • memo

    ・Wikipedia
    ...誰でも内容構築に参加できるものであり、匿名の作り手によって共同構築されるものだから、使用については慎重さが要求されると付け加えるのが一般的であろう。
    だが、アメリカ的な情報リテラシーの考え方ではこれは優れた教材になる。つくられる過程をきちんと理解して使えばよいということになる。
    ...まず、ウィキペディアのつくられかたを学ばせ、これを全面的に信頼することはできないことを理解させる。探索プロセスとしては用語の選定について、同義語や類義語を試してみて、用語のコントロールができているかどうかをみる。また、利用・評価プロセスとしては別のツールや文献を参照して相互に比較するといったものである。(p56〜57)

    ・「子どもの「思考力」を伸ばすために、親ができること〜パトリック・ハーランさん」朝日新聞digital2016年9月5日
    知識は機器からとりだせるのだから、授業はむしろ既成の知識を基に考え、相互にコミュニケーションする能力をみがくこと(p180〜182)

    ・読書-批判的思考
    読書は著者との対話でありまた自分との対話である。著者と自分のあいだに相互作用の場をつくりだすことが読書の最大の意義であり、この場が自分を無限の方向に発展させる基になる。本を読みながら考える行為の積み重ねが批判的思考を可能にする反省的自己をつくりだす。(p200)

  • 図書館司書資格の取得の過程でよく耳にする「中小レポート」や「志民の図書館」、これらは50年近く前に書かれたものだが、今の図書館にはこの本こそまさに「図書館員のバイブル」と言えるのでは無いだろうか。

  • 電子書籍について、しっくりくる定義。

  • 日本の特に図書館業界において混同されがちなコンピュータリテラシーと情報リテラシーは別物であるという点を強く打ち出しつつ、後者について広く日本の教育制度という視点から様々な例を引いて、その必要性を説く。

  • 自分で今使うべき情報の大枠を把握し、評価しながらそれを活用する能力、情報リテラシー。情報リテラシーの重要性を日本人の学習の歴史や図書館史と絡めて解説した図書。
    既成の知識を確認する教育から、自ら知識を作り出していけるような教育の改革が始まっている今、図書館の重要性は増しているようだ。
    図書館司書の専門性の話も出ている。司書を専門職と述べるのが少し難しい状況……。この時代に図書館が生き残って行くためには枠組み等、考え続けなければいけないねー。

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著者プロフィール

慶應義塾大学文学部教授/東京大学名誉教授

「2019年 『教育改革のための学校図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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