コリアン・シネマ――北朝鮮・韓国・トランスナショナル

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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622086642

作品紹介・あらすじ

植民地時代に誕生し、南北分断、朝鮮戦争を経て今日まで制作されてきた北朝鮮・韓国の映画「コリアン・シネマ」を反共/反帝国のイデオロギー、ジェンダー、階級、民族意識の観点から分析。民話「春香伝」を翻案した南北5作品や『血の海』『南部軍』といった歴史映画の代表作を比較分析、さらには最新のトランスナショナル・シネマの展開を洞察し、現代を生きるコリアンの文化的テクストとして映画が果たす役割を考察する。

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  • 『コリアン・シネマ ――北朝鮮・韓国・トランスナショナル』
    原題:CONTEMPORARY KOREAN CINEMA: Identity, Culture, Politics (マンチェスター大学出版, 2000)
    著者:Hyangjin Lee /李香鎮[イ・ヒャンジン] アジア映画の研究。
    訳者:武田珂代子[たけだ・かよこ] 翻訳通訳学。

    【メモ】 
    ・原著は、2000年に英語で発表された、韓国映画研究。
    ・第II部は別の本に収録済みの論考や、書き下ろしをまとめたもの。

    【版元】
    四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/456頁
    定価 6,480円(本体6,000円)
    ISBN 978-4-622-08664-2 C1074
    2018年2月15日発行

     日本植民統治期に誕生し、解放後の南北分断、朝鮮戦争を経て今日まで制作されてきた北朝鮮・韓国の「コリアン・シネマ」。その製作と受容はいまや一国内に留まらず、在外コリアンによる監督や外国との合作、資本やキャストの海外調達、国際映画祭への出品にみられるように、複合的な地域性と多様性をもつ人びとを巻き込みながら、排他的な意味での「境界」を拒否するトランスナショナルな発展を遂げている。

     コリアンにとって、映画は文化的テクストとしてどのような役割を果たしてきたのだろうか? 本書ではジェンダー、イデオロギー、階級の観点から映画における歴史と文化の表象を分析し、コリアンの民族意識と文化的アイデンティティを探る。
     第 I 部では、コリアン・シネマの歴史を各時代の政治状況に照らしつつ俯瞰した上で、朝鮮民話「春香伝」翻案映画5作品や歴史映画の代表作『血の海』『南部軍』、労働者階級の日常を描く『初めて行く道』『追われし者の挽歌』等を分析する。そこから浮き彫りになるのは、イデオロギーの上では相反しつつも、文化的同質性を強く確信し重んじる彼らの姿である。
    第 II 部では、グローバルシネマとしてのコリアン・シネマに焦点を当て、『下女』や『オールド・ボーイ』、旧日本軍性奴隷制を扱った『ナヌムの家』『鬼郷』といった作品が社会批評や歴史的記憶の継承において果たす役割を考察する。
     映画の一場面の詳細な分析から比較文化的考察まで、縦横無尽に論じた刺激的な書。
    https://www.msz.co.jp/book/detail/08667.html

    個人的なメモは【 】に入れた。


    【目次】 
    日本語版によせて(二〇一七年十月 イ・ヒャンジン) [i-x]
    目次 [xi-xiv]
    図版一覧 [xv-xvii]
    凡例 [xviii]

      第 I 部 コリアン・シネマ 
    まえがき 003
    はじめに 004
      註 021

    第1章 民族的アイデンティティの創造――コリアン・シネマの歴史 025
    第1節 日本植民地期における朝鮮映画 026
      朝鮮における活動写真の始まり
      朝鮮映画の登場
      植民地時代の朝鮮映画の製作、配給、受容
      植民地時代の映画政策
      代表的な監督と作品
      民族主義映画とナ・ウンギュ
      「傾向派映画」とKAPE
    第2節 北朝鮮映画の進展 044
      北朝鮮の映画政策と主体的映画芸術論
      北朝鮮映画の社会的、政治的特徴
        「平和構築」の時代 1945.8-1950.6 /「偉大なる 民族解放」の時代 1950.6-1953.7 /「戦後復興と社会主義基盤の構築に向けた闘争」の時代 1953-1958 /「社会主義の全面的構築に向けた闘争」の時代 1959-1966 /「社会主義勝利の前進に向けた闘争」の時代 1967-現在
      北朝鮮映画の製作、配給、受容
      北朝鮮映画の主なジャンル
        階級闘争の革命的伝統に関する映画/朝鮮戦争と統一に関する映画/社会主義経済の発展に関する映画
    第3節 韓国映画の進展 063
      韓国映画の社会的、政治的特徴
        民族分断への固執と韓国映画 1945-1959 /韓国映画に対する政府の介入と反共政策 1960-1979 /民主化と韓国映画 1980-2000
      韓国映画の製作、配給、受容
      韓国映画の主なジャンル
        メロドラマ/社会批評映画
      註 086

    第2章 ジェンダーと「春香伝」映画 093
    第1節 「春香伝」の起源 096
    第2節 朝鮮映画史における「春香伝」の意義 099
    第3節 韓国映画における春香像 104
      従順で自己犠牲的な妻(シン・サンオク監督)
      若々しい十代の主人公(パク・テウォン監督)
      妖艶な芸妓(ハン・サンフン監督)
    第4節 北朝鮮映画における春香像 116
      模範的労働者(ユ・ウォンジュン/ユン・リョンギュ監督)
      階級意識をもつ高潔な妻(シン・サンオク監督)
    第5節 春香とコリアン社会の家父長主義的ジェンダー関係 125
    第6節 「春香伝」における階級と伝統的家族観 130
      註 138

    第3章 民族意識と映画における歴史の表象 141
    第1節 北朝鮮映画における反帝国主義 146
      『崔鶴信【チェ・ハクシン】の一家』
      『血の海』
      『月尾島【ウォルミド】』
    第2節 韓国映画における反共主義 162
      『誤発弾』
      『旗なき旗手』
      『南部軍』
    第3節 家族意識と民族意識 185
      註 194

    第4章 現代コリアにおける階級と文化的アイデンティティ 197
    第1節 北朝鮮映画にみる階級闘争 204
      『初めて行く道』
      『旅団長のかつての上官』
      『トラジの花』
    第2節 韓国映画にみる階級のダイナミクス 225
      『風吹く良き日』
      『九老アリラン』
      『追われし者の挽歌』
    第3節 階級の存在と文化的伝統 246
      註 251

    結論 255
      註 261


      第 II 部 トランスナショナル・シネマ 

    『春香伝』――ニュー・コリアン・シネマで古い伝統を「売りこむ」 265
      1 世界の観客へ向けた新たな民族的アイデンティティの創造 270
      2 音声から映像へ――カンヌとソウルにおける『春香伝』 275
      3 新たな挑戦としての古い伝統 284
      註・参考文献 286

    アジアン・ノワールにおける無法者の影――広島、香港、ソウル 289
      1 社会批評としてのギャング・ノワール 291
      2 無法者、ヒーロー、暴力団――暴力の三つの顔 294
       『仁義なき戦い』における孤独な無法者/『男たちの挽歌』におけるヒーロー/『オールド・ボーイ』における組暴
      3 社会の流人――ポストコロニアルの歴史と儒教的伝統 310
      註 313

    一九六〇年代韓国ホラー映画における家族、死、そして怨魂(ウォンホン) 317
      1 詩的正義――『下女』と『魔の階段』 320
      2 吸血猫と貞淑な妓生――『殺人魔』と『月下の共同墓地』 325
      3 結論 334
      参考文献 335

    『ナヌムの家』から『鬼郷』まで――映画を通した旧日本軍性奴隷制の記憶継承 337
      1 記憶の継承手段としての映画 337
      2 参加型ドキュメンタリーにおける記憶の継承 340
      3 記憶の継承における相互参照――共著者性と集団的主観性 345
      4 『鬼郷』におけるドラマ化と記憶の継承 350
      5 記憶継承に対する包括的概念の創生 354
      参考文献・インタビュー 354

    グローバルシネマとしての韓国映画と北朝鮮映画―― 二〇〇〇年から現在まで 357
      1 「ナショナル」から「トランスナショナル」へ 360
      2 現代韓国映画の大衆作家主義――ポン・ジュノとパク・チャヌク 365
      3 現代北朝鮮映画の人民性 374
      4 国家主義映画の現在と未来 381
      註 386

    訳者あとがき(二〇一七年十月 武田珂代子) [387-389]
    フィルモグラフィ [10-38]
    作品索引 [5-9]
    人名索引 [1-4]

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    社会

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    日本植民統治期に誕生し、解放後の南北分断、朝鮮戦争を経て今日まで制作されてきた北朝鮮・韓国の「コリアン・シネマ」。その製作と受容はいまや一国内に留まらず、在外コリアンによる監督や外国との合作、資本やキャストの海外調達、国際映画祭への出品にみられるように、複合的な地域性と多様性をもつ人びとを巻き込みながら、排他的な意味での「境界」を拒否するトランスナショナルな発展を遂げている。

    コリアンにとって、映画は文化的テクストとしてどのような役割を果たしてきたのだろうか? 本書ではジェンダー、イデオロギー、階級の観点から映画における歴史と文化の表象を分析し、コリアンの民族意識と文化的アイデンティティを探る。
    第 I 部では、コリアン・シネマの歴史を各時代の政治状況に照らしつつ俯瞰した上で、朝鮮民話「春香伝」翻案映画5作品や歴史映画の代表作『血の海』『南部軍』、労働者階級の日常を描く『初めて行く道』『追われし者の挽歌』等を分析する。そこから浮き彫りになるのは、イデオロギーの上では相反しつつも、文化的同質性を強く確信し重んじる彼らの姿である。
    第 II 部では、グローバルシネマとしてのコリアン・シネマに焦点を当て、『下女』や『オールド・ボーイ』、旧日本軍性奴隷制を扱った『ナヌムの家』『鬼郷』といった作品が社会批評や歴史的記憶の継承において果たす役割を考察する。

    映画の一場面の詳細な分析から比較文化的考察まで、縦横無尽に論じた刺激的な書。
    https://www.msz.co.jp/book/detail/08664.html

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著者プロフィール

韓国・釜山生まれ。専門は韓国、北朝鮮、日本を中心とするアジア映画研究。英国シェフィールド大学東アジア学部教授、立教大学、東京大学、同志社大学客員研究員(2005-2007年)を経て、2008年より立教大学異文化コミュニケーション学部教授。2014年ハーバード大学東アジア言語・文明学部キム・クー客員教授。韓国・延世大学で社会学修士号、リーズ大学コミュニケーション学部で博士号を取得。

「2018年 『コリアン・シネマ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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