アルツハイマー病研究、失敗の構造

  • みすず書房
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本棚登録 : 170
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622096290

作品紹介・あらすじ

科学によってアルツハイマー病を克服するためには、まずこの現状を見直さなければならない。インサイダーだけが知る、袋小路に陥ったアルツハイマー病研究分野の今。「私たちはアミロイドのみのルートを通ってアルツハイマー病の治療薬を追い求めてきたために、多くの時間を失った。たぶん10~15年は無駄にしてきただろう」(本文より)。実績ある科学者が、アカデミズム・製薬産業・関係官庁三つ巴の迷走の驚くべき裏事情を明かす。良心的な告発の書であり、アルツハイマー病についての直近数十年間の認識じたいを根本から問い直す一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 空転を繰り返したアルツハイマー研究の歴史を紹介。アミロイドプラークを原因とした研究が進みすぎた結果、他の要因への配慮が行き届かず、毎年莫大な研究費が注ぎ込まれたと本書は批判する。勿論素晴らしい成果も生まれたがそれでもまだ解決には至っていない。

    全て読み終えると何か道筋が見えてくる、という類いの本ではありません。これまでの失敗の歴史を辿る本だからです。アルツハイマー病という病の複雑さや研究者たちの知を集結させてもまだ一向に解決しないという恐ろしさを痛感しました。

  • 12月新着
    東京大学医学図書館の所蔵情報
    https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2003667154

  • アルツハイマー病の原因がアミロイドβ、タウの蓄積にあるとする、セントラルドグマへの告発である。
    確かに、アミロイドβなどの除去には成功したが、認知症の改善にはつながらず、治験段階で開発中止となるケースが何件か出ていると聞いている。
    であれば、本当にこれらが原因なのか、と疑うのが普通だが、アルツハイマー=アミロイドの蓄積と定義されて、それ以外の原因への研究が進んでいないらしい。
    業界の構造にも色々問題がある様だが、アミロイドβがニューロン死滅の原因となる生理学的証明は出来ていないことからすれば、それ以外の原因についても研究を進めるべきである。

  • 面白い。

  • 『アルツハイマー病研究、失敗の構造』
    原題:How Not to Study a Disease: The Story of Alzheimer's (The MIT Press)
    著者:Karl Herrup
    訳者:梶山 あゆみ
    判型:四六変型
    頁数:352頁
    定価:3,520円 (本体:3,200円)
    ISBN:978-4-622-09629-0
    Cコード:C0045
    発行日:2023年8月10日

    インサイダーだけが知る、空転するアルツハイマー病研究の現状。
    「アルツハイマー病研究の歴史は、急いで治療薬を求めるあまりに袋小路に入り込み、道を見失った物語でもある。……アミロイドカスケードというたったひとつの仮説になぜここまでの勢いがついて、当時議論にのぼっていたさまざまな代替モデルをロードローラーのようにことごとく押しつぶすまでになったのか。」(本文より)
    この分野で実績のある研究者が、アカデミズム・製薬産業・研究助成機関三つ巴の迷走の驚くべき裏事状を明らかにする。良心的な告発の書であり、アルツハイマー病についての直近数十年間の認識自体を根本から問い直す、真摯な総括でもある。
    著者はアミロイドやタウタンパク質とアルツハイマー病の関連を全否定するような極端な立場ではない。だが、アミロイドカスケード仮説を主軸にした直線的なメカニズムへの一辺倒が、この分野を機能不全にしていると明かす。たとえばアルツハイマー病の定義自体が、薄弱な根拠をもとに構築され、特にアミロイドプラーク(老人斑)を「原因」とする仮説の破綻を覆い隠し、むしろ依存を強める方向に改変されてきたという、驚愕の事実を詳らかにしている。
    社会的関心の高い科学の一分野における構造的かつ進行形の問題であり、科学論や失敗学の観点からも貴重な報告だ。
    [https://www.msz.co.jp/book/detail/09629/]

    ・英語版。
    [https://mitpress.mit.edu/9780262546010/how-not-to-study-a-disease/]


    【目次】
    日本語版に寄せて

    プロローグ

    I 初めに何があったのか
    第1章 患者と家族、市民にとってのアルツハイマー病の歴史
    第2章 医師にとってのアルツハイマー病の歴史
    第3章 科学者にとってのアルツハイマー病の歴史
    第4章 謎が解けた! アルツハイマー病研究を変えた四つの発見

    II 夢の治療薬はどこへ行った?
    第5章 アルツハイマー病病理モデル構築の試み

    III 両刃の剣
    第6章 国による基礎生物医学への支援
    第7章 製薬・バイオ産業
    第8章 モデルの検証と、その無惨な結果
    第9章 アルツハイマー病とは何だろうか?

    IV では、ここからどうする?
    第10章 老化の生物学から始めよう
    第11章 アルツハイマー病の新しいモデルをつくる
    第12章 研究戦略の多様化を図る
    第13章 関連機関のあり方を見直す
    第14章 終わりに

    謝辞
    原注
    索引

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