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本 ・本 (376ページ) / ISBN・EAN: 9784623064595
感想・レビュー・書評
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中世ヨーロッパ史を、通史ではなく、テーマ別に沿って解説されている。
中世1000年(5世紀末~15世紀)の中でも、ヨーロッパ文明を構成する大多数の要素は、1000年前後~14世紀半ばに生み出されている。
テーマ別に、その変遷を知ることができる。
一括りに中世と言っても、1000年。この1000年の歴史を見ると、「気候変動は人口増減に直に影響し、学問(知)は社会や文化の発展に欠かせない」ことは明らか。
中世ヨーロッパは、「12世紀ルネサンス」までは、キリスト教が中心の社会で学問は異端とされ、「知」の発展のない、閉ざされた「暗黒の中世」だった。
識字率も低く、王侯貴族さえ文字が読めなかった。
そこにイスラム世界からの、古代ギリシア学問の流入により、さまざまな学問が発展し、ヨーロッパ中に大学が設立された。学問の発展(知の復興)は、その後の西洋社会の発展へと繋がった。
現代の世界情勢を見て、これは遠い中世だけの話ではないと感じる。
環境問題、戦争、米国の留学生締め出しのような
'反知性主義’ともとれる社会情勢。
「閉ざされた社会に発展なし」
学問の締め出し、閉塞的な社会がもたらすもの。
今こそ、中世ヨーロッパの歴史から学ぶ意義がある。"知は力なり"を信じ、自分ができることを。
【12世紀ルネサンス】
忘れ去られていた古代ギリシア学問が、イスラムやビザンツ世界からラテン語に訳され、中世ヨーロッパへ逆輸入された。学問の発展や西洋文明社会の発展に繋がった。
テーマ
①キリスト教世界の成立
②統治の方法
③農業生産と交易
④人々の生活
⑤文化と芸術詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
序論
本書では、ヨーロッパ文明、特に中世ヨーロッパ文明の重要性とその相対化の動きについて論じられています。中世ヨーロッパの歴史を理解することは、現代の日本社会をより良く理解するためにも不可欠であると強調されています。
ヨーロッパ文明の相対化
- ヨーロッパ文明を他地域との相互関係から捉え直す動きが活発である。
- しかし、過度の相対化は一面的な世界史の理解につながる恐れがある。
- ヨーロッパ文明の影響を過小評価すると、世界史を理解する上での本質的な要素を見失う可能性がある。
中世ヨーロッパ文明の基礎
- 中世ヨーロッパ文明は、現代の西洋社会の基盤を形成している。
- 本書の著者は、過去の研究から得た知見をもとに、生活や環境に関するテーマが十分に議論されていないと指摘しています。
参考文献
- 複数の著作が引用され、特に中世ヨーロッパの歴史や文化に関する重要な研究が挙げられています。
- 甚野尚志・堀越宏一編『中世ヨーロッパを生きる』
- ヨーロッパ中世史研究会編『西洋中世史科染』
- C・ドーソン著『ヨーロッパの形成』
- R.W・サザーン著『中世の形成』
教会と死者の埋葬
- 教会の敷地内に死者を埋葬する慣習が成立し、教会の権威が高まった。
- 教会は、死者の魂に対する祈りの効力を強調する存在となり、その周辺に居住が発展した。
小教区の再編成
- 人口増加に伴い、小教区の規模に不均衡が生じ、新たな小教区の設立が試みられた。
- 特に都市部では、教会の新設や小教区の再編が進行し、信徒数が増えたことが記録されています。
法と文書の発展
- 11世紀以降、ヨーロッパ全域で法文書の標準化が始まり、ローマ法の復興が重要な役割を果たした。
- 公証人制度が設立され、私的法行為の文書化が進行。公証人は、民間での法的行為を認証する役割を担った。
農業の実態
- 西欧の農業は、特に三圃制度の導入によって発展し、耕作方法が改善された。
- フランク時代の農業活動が中世の農業の基盤として重要視されている。
結論
本書は、中世ヨーロッパ文明の多様な側面を探求しており、歴史的背景や社会的変遷が現代に与える影響について考察しています。特に、農業、教会、法制度の発展が文明形成において果たした役割が強調されています。これらの要素を通じて、読者は中世ヨーロッパの複雑な社会構造とその影響を理解することができるでしょう。 -
非常に読み応えのある一冊だった。通史的な内容ではなく、宗教・軍事・農業・文化芸術など様々なテーマを掘り下げることで、中世ヨーロッパ社会の実像を浮かび上がらせる内容になっている。
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[評価]
★★★★☆ 星4つ
[感想]
多くの著者が15のテーマに沿った内容を書いているので興味があるテーマだけを読むだけでも十分に面白かった。自分が特に面白かったと感じた内容は「貴族制度と封建制」、「都市という環境」の2つで前者に日本の武士と共通点が存在していることに驚き、新たな知識を楽しく読むことができた。後者は日本史では余り登場しない都市による自治制度に関してで、日本で都市が生まれなかった理由は壁の有無にあるのではないかと感じた。壁による内外の区分けが内側での自立心のようなものを芽生えさせたことを考えれば、逆説的に日本には壁がないから都市の自治権が生まれなかったのではないだろうか。
まあ、堺のような場所は存在するし、広い意味で考えれば自治権はないものの京都や福岡、さらには比叡山のような場所も年に当たるのかもしれないな。 -
中世ヨーロッパ文明を15のテーマで読み解く本。
宗教・統治だけでなく、都市や農村、衣食住、
美術や音楽についても書かれています。
歴史を辿るだけではわからない中世の生活を知るには、
良い内容です。
また、どのテーマでもキリスト教が関わっています。
いかにヨーロッパ全体に広がっていったかもわかります。
それぞれのテーマ毎に執筆者がおり、
参考文献は紹介文付き、面白いコラム、
巻末には人名と事項の索引・・・入門書としても良いです。 -
ゼミの本、1章と13章以外は流し読み
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宗教・政治・農業・交易・衣食住・文化・芸術など、中世ヨーロッパを構成する諸要素をひもとき、多彩なトピックから当時の社会を読み解きます。現代ヨーロッパ文明の起源をたどれる、新たな中世史テキストです。
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「歴史のなかで中世ヨーロッパ文明は、どのような要素でこうせいされたのか」これを15のテーマから論じている一冊です。そのテーマには歴史的な出来事はもちろんのこと、当時の人々や生活など興味深いものまで設定されています。様々な視点から中世ヨーロッパ文明の構成要素をを考えることのできる本です。
(匿名希望 教育学部 社会)
著者プロフィール
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