文明とは何か:文明の交流と環境 (小林道憲〈生命の哲学〉コレクション)
- ミネルヴァ書房 (2017年4月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784623077335
作品紹介・あらすじ
世界史形成に遊牧民や交易民や海洋民が果たした役割を大きく評価して、人類の文明史を文明交流中心に描き、世界史を、陸にも海にも張り巡らされたネットワークの発展史としてとらえる試み。また、日本文明を、これらのネットワークの結節点として眺め、その世界史的位置を確かめる。中心文明や周辺文明中心に記述されてきた今までの世界史を反転し、文明と文明の間〈あいだ〉に注目して、それらを結ぶ役割を果たす〈媒体文明〉という新しい概念を提出。文明を、相互作用から自己形成する複雑系の一つとして理解し、環境論とともに、人類史の本質に迫る。
感想・レビュー・書評
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『文明の交流史観』(2006年、ミネルヴァ書房)を加筆訂正したもののほか、8変の論考を収録しています。
梅棹忠夫の「文明の生態史観」は、日本と西欧がユーラシア大陸の両端に位置しているという事実にもとづいて、両者の生態学的な条件が近しいことから、日本の近代化を自生的なものとしてとらえる見方を提出しました。これに対して著者は、あらゆる文明は他の文明との相互的な影響関係のなかで生まれ、発展していくという立場を打ち出し、現実の世界史のなかにその具体例をさぐろうとしています。こうした観点から、ユーラシア大陸における草原の道やシルクロードを通じての東西文明の交流をはじめ、地中海、インド洋、東アジア、大西洋、太平洋における文明相互の交流が、それぞれの文明の展開にどのような影響をあたえたのかということが論じられています。
実証的な歴史学の立場からは、いくつかの議論には疑問符が付されることになるかと思いますが、著者の壮大な文明交流史観の構想そのものは興味深く感じました。ただし、文明の交流のなかには他の文明についての「表象」がもつ文化的な役割も含まれているはずだと思うのですが、その点についての議論が欠けていたことはすこしもの足りなく感じてしまいました。詳細をみるコメント0件をすべて表示