エドガー・アラン・ポーの復讐

著者 :
  • 未来社
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784624610388

作品紹介・あらすじ

アメリカで初めて、原稿料のみで生計を立てた作家エドガー・アラン・ポー。
売文で生計を立てるためには「売れる」文章をつくらなければならない。しかし「売れる」ために書く文章は自分が本当に書きたかったものなのだろうか……。
アメリカ批評界の近年の潮流でもある「読者目線からの批評」をスタンスとしつつ、ポーが作品に書き散らかした売文家のジレンマと怨念を「天邪鬼」、「復讐」をキーワードに迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 19世紀、アメリカで最初に専業作家となったポオの、
    食べていくために売れる作品を――
    しかし、本当に書きたいものは……
    というジレンマに焦点を絞ったポオ論。
    複数の雑誌等に掲載されたエッセイを
    加筆・修正して纏めた本。

    ■売文家の才気と慚愧
     ゴシック小説でない、
     アイロニーに満ちた作品に描出された
     「スノッブ」とは何だったか。
     作家:芸術家⇔売文家:ビジネスマン
     その間を揺れ動いたポオの苦悩と諧謔。

    ■「アッシャー家」脱出から回帰へ
     D.H.ロレンスによる「アッシャー家の崩壊」読解と、
     それに反駁するマボットの意見。
     ともあれ、ポオ自身は
     19世紀に隆盛した
     俗受けするゴシック小説に類する作品を
     意識的に書き、売らんがための姿勢を自嘲していた。

    ■「群集の人」が犯す罪とは何か
     物語の語り手が
     取り憑かれたように他者を追いかけるのは、
     読者獲得を目論む作家の姿勢の暗喩か。
     群集の歓心を買うため
     「書くことによる犯罪」に手を染めて……。

    ■黒猫と天邪鬼
     完全犯罪を成し遂げる前に自ら秘密を暴露してしまう
     天邪鬼=ひねくれ根性は、
     没落した上流階級のルサンチマンに起因するのでは。
     妻と黒猫を殺した男の根底に横たわっていたのは
     女性差別と黒人差別に違いないが、
     多少なりとも自己を投影したかのような
     キャラクターに鉄槌が下される結末を用意した
     ポオの内には、自罰願望があったのか。

    ■「盗まれた手紙」の剰余
     割り切れない話の「余ってしまう」部分、とは。
     名探偵デュパンと大臣の二重性の謎。
     「盗まれた手紙」はポオが自己を二分し、
     大臣に託した側面に他面(デュパン)が
     復讐する物語であり、
     大臣が表徴するのは
     推理小説という売れ筋ジャンルを発明した
     ポオ自身の明敏さだったのではないか。

    ■「メロンタ・タウタ」の政治思想
     未来から届いた手紙を開陳する「メロンタ・タウタ」
     に潜む裏の意味。
     ポオは19世紀中葉アメリカの政治状況に対する蟠りを
     小説に仮託した。

    ■ポー最後の復讐
     ポオは最晩年、
     自己を投影したキャラクターに
     復讐の身振りをさせることで、
     スノビズム、
     あるいは当時の知識人たちの文壇支配に対する
     怒りや憎しみをぶつけようと、
     作品に精一杯のアイロニーを込めた。

    ■付論――ポーとドライサー
     ポオと、そのフォロワーとも呼ぶべき
     セオドア・ドライサーの宇宙論。
     文学‐科学‐SF。

  • アラン・ポー熱再燃のため手に取りました。
    読んでいない作品割りかしあったなー。
    スノッブ、ボヘミアン、ビジネス思考がキーワードかな。

  • もとが学術論文であるためか、少し難しめ。専門外な自分にとっては、これを読んでいる自分自身がスノッブなのではと思ってしまう。
    細かい感想や戯言はEvernoteにまとめてあります。
    https://www.evernote.com/shard/s205/sh/5a744c66-ff52-43b2-a558-651bbbcd054c/b75bd8a72cec42e0116b1a83000f9be3

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著者プロフィール

東京都立大学名誉教授。1944年、北海道生まれ。北海道大学文学部卒業。東京大学大学院人文科学研究科博士課程満期退学。國學院大學、一橋大学、東京都立大学、東洋大学で専任講師、助教授、教授を歴任。フルブライト・プログラム、米国学術団体評議会(ACLS)からフェローシップを得てペンシルヴェニア大学、コロンビア大学で客員研究員。日米友好基金アメリカ研究図書賞受賞(1988年)。
おもな著訳書に『セオドア・ドライサー論――アメリカと悲劇』(南雲堂、1987年)、『エドガー・アラン・ポーの復讐』(未來社、2004年)、ドライサー『シスター・キャリー』(岩波書店、1997年)、キース・ニューリン編『セオドア・ドライサー事典』(雄松堂出版、2007年)、I・A・リチャーズ『レトリックの哲学』(未來社、2021年)など。

「2022年 『ドライサーを読み返せ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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