ヤマケイ文庫 考える粘菌 生物の知の根源を探る

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  • 山と渓谷社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784635049825

作品紹介・あらすじ

単細胞の粘菌を通して、生物の“知性”の根源に迫る!生物が知的であるとは、どういうことでしょうか?単細胞生物の粘菌は、脳も神経系もないにも関わらず、迷路の最短経路を探し出したり、人間社会の交通網にそっくりのネットワークを作り上げてしまいます。「遭遇する状況がどんなにややこしくて困難であっても、未来に向かって生き抜いていけそうな行動がとれる」知性をこんなふうに捉えてみると、単細胞の粘菌でさえも、その場のややこしさに応じた知的と思えるような行動をとるのです。このようなすぐれた行動が、単細胞の粘菌からどのように生み出されるのでしょうか? 私たち多細胞生物にもつながる「知的なるものの原型」を粘菌に探ります。

感想・レビュー・書評

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  • 粘菌は単細胞(細胞がひとつだけで構成される生物)だ。人間の細胞数はおよそ60兆個。人は算数的な世界で物事を判断しがちだということを了解してもなお、この圧倒的な差は粘菌のできることにそれほど多く期待しないだろうことは想像に難くない。しかし、粘菌は、これも人間的な理屈の結果でしかないだろうが、光走性(光を知ってその方向へ進む)ことができるだけでなく、強すぎる光源を避けることができ、餌に向かって進む場合、学習能力を発揮してショートカットする<能力>を持つ。同時に2箇所に餌がある場合、自分の体を広げる限度内にある場合は双方に向かい、加えて無駄がないようにと太いパイプ(バイパス)を残して他の部分には広がらないようにすることもできる。それを原始的な知性(原生知能)の考えることは可能だが、スイッチのようなものがあってそれをオンオフしているだけとも言える。しかし生物である以上、生きつづけ、子孫を残すというルールを逸脱することはないのだから、生命の存続については、意志の有無は別にして、何らかの遺伝子的な命令(本能?)を内在している(あるいは外界からの指令?)のだと言える。興味深いのは、この細胞を1個ではなく2個、あるいは16個持つ<近似的な>原生動物においても、基本的な仕掛けは単細胞生物と変わることがないということだ。2個、あるいは16個で協調作業が行われるからだ。当たり前の話だが、協調できないのであれば共存はできない。しかし「協調する細胞と反発する細胞があり、協調側が勝利する」ケースがあるのかもしれないし、この場合においても、たとえば16個の細胞を持つ生物において2個だけでも協調すれば、他の14個が反発しても協調できるのかもしれない。それはともかく、1個が2個、16個になっても同じような<機能(生き方)>を保持できるのであれば、60兆個もまたその延長にあるのかもしれない。生命と思考、単独と協調について示唆を得ることができた。

  • 生きものの知性を探る旅 多様性 原生生物の巧みな行動 単細胞の情報処理:細胞のモノとココロ 情報処理 意図的行動  粘菌とは:ライフサイクル モデル生物  迷路を解く:短い経路選択 適応ネットワークモデル  危険度最小化:ライフセーバー問題とスネルの法則 巡回行商人問題 両立・バランス能力:シュタイナー経路 連結保障性 多目的最適性 時間記憶:周期性の想起 共振 多重周期性 位相同期モデル  迷い、選択、個性:逡巡行動のからくり 粘菌・ヒトの知性:考えずに考える インテリジェンス≒神様が人間だけに付与

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著者プロフィール

中垣俊之 中垣俊之(なかがきとしゆき)北海道大学電子科学研究所 教授。1963年愛知県生まれ。北海道大学薬学部卒、名古屋大学人間情報学研究科博士課程修了(学術博士)。2008年、2010年、イグノーベル賞、2010年爆笑問題の日本の教養「爆ノーベル賞」、2010年函館市長賞。

「2015年 『かしこい単細胞 粘菌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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