- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784635820585
感想・レビュー・書評
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明治も初期と言ってよい(西南戦争終結の翌年!)にイギリス人の女性が一人で東北・北海道を旅したという。同じような旅行記があるということ自体は何となく知っていたが、このような「ハードモード」の紀行文があるとはそもそも知らず、新鮮だった。
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明治11年。東京や横浜はいざ知らず、少し地方にいけば、まだ十分江戸時代が残っていた頃、イギリス人女性がたった一人で日本の奥地(東北・北海道)を旅する。それも47歳という年齢で!
イザベラ・バードは引き馬に乗って、または人力車で、どうしようもないところは徒歩で旅をつづけたけれど、この本ではそれらの道を基本的には鈍行列車で旅をする。
鈍行列車の車窓から見える景色は、まだ、バードが歩いたころの風景が残っている場合が車よりも多いから。
そういう旅もあるんだなあと思った。
平取で彼女が歩いた道を少し歩いたことがある。
自然以外に何もないその道は、けれども全くの手つかずの自然というわけではなく、きれいに手入れされていた。
それよりは、山深い田舎の、線路わきの原生林の方が、よほど当時を偲ばせるかもしれない。
日光を過ぎ、会津からのみちのくを旅しながら、バードは宿の臭さと蚤(のみ)に悩まされ続ける。
それと食事の貧しさにも。
函館で久しぶりに洋食を食べたこともあるのかもしれないが、北海道に入ってからはかなり開放的な気分になったことが記述から伺われる。
梅雨前線と共に北上したため、北海道に梅雨がなかったのも影響したかもしれない。
そしてアイヌの存在。
”(アイヌは)素朴な未開人であるが、正直で、人には優しく、とても丁寧で、自然な優美さがあり、とバードは讃えている。とりわけ低く歌うように語る声の響きに魅了された。それまで出会ったどの和人よりも、バードはアイヌを愛していることが分かる。”
通訳兼ガイドの伊藤は「アイヌに丁寧な態度をとは!人間じゃなく犬にすぎないのに」と言ってもとりあわず、熱心にアイヌ語も勉強してその文化を称賛する。
それは、当時アイヌはへき地に遺されたコーカソイド(白人)と思われていたから。
人種的バイアスがあったのかもしれない。
何しろバードに日本行きを勧めたのは、進化論で有名なダーウィンなのだから。
強者が弱者を駆逐する過程を、バードは見たかったのかもしれない。
単純に紀行文として『日本奥地紀行』を読んだけれど、それだけではない様々な思惑というものがあることをこの本を通じて垣間見ることができた。